ハンガリー民話集 (岩波文庫)

制作 : ジュラ オルトゥタイ  リンダ デーグ  アーグネシュ コヴァーチ  Linda D´egh  ´Agnes Kov´acs  Gyula Ortutay  徳永 康元  石本 礼子  岩崎 悦子  粂 栄美子 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 68
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277614

作品紹介・あらすじ

ハンガリー民話は東洋と西洋の両文化が微妙に触れあい複合する境界に生まれた。その優れた語り手であり聴き手である農民層の意識を反映し、虐げられた者の社会的な渇望、正義と復讐の願望が色彩豊かなことばでドラマチックに表現されている。ハンガリーの代表的民俗学者オルトゥタイ編の『ハンガリー民話』から43篇を原典訳。

感想・レビュー・書評

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  • ひとことにハンガリーと言っても歴史を振り返るとあの辺は国境がちょいちょい変動するし、民俗的にも色々入り混じっていて結構広い範囲からの収集らしい。トランシルヴァニアを含むというのでドラキュラネタとかあるかなとちょっと期待しましたが、ありませんでした(しょんぼり)ただ殺されてバラバラに切り刻まれても何らかの方法で当然のように復活し、当人は「あーよく眠った」くらいの認識しかないというパターンは結構あって、ある意味ゾンビや吸血鬼に近いノリかもしれない。

    基本的には世界の民話に共通の、三人姉妹や三人兄弟、いずれも末っ子最強説のものや、99人が失敗して殺され100人目で成功するパターンのものもありつつ、たとえばイタリアの民話を読んだときにやたらと両手を切り両目をえぐるみたいな表現が多くて残酷でありつつも一種様式化されていたのに対し、ハンガリーは殺害の場合、噛み砕くとかバラバラに引き裂くとか力まかせ系が多く(加害者が女性でも)、感情にかませてワー!っとやっちゃう民族なのかなと思いました(※当社比)

    竜の頭も24とか数が多くて、日本ならせいぜいヤマタノオロチ(8)中国だって九尾の狐くらいなのに、24多いよ!そのうえその竜が馬に乗ってるとかどういうこと!?みたいな。あと定番の表現として「アヒル(もしくはガチョウ、ニワトリ、七面鳥などとにかく鳥)の足の上で高速回転しているお城」というのが出てくるのですが、これもどういう状態なのかちょっと想像できない・・・。ハンガリー人の脳内っていったい・・・。そして男性登場人物に名前がある場合はだいたいヤーノシュ。これは日本でいわゆる太郎、ロシアならイワン的な、ハンガリーでは定番の名前なのかしら?

    以下面白かったものをいくつか。

    24の頭を持つ竜が太陽と月と星を隠してしまい、それを鍛冶屋の三人兄弟の末っ子ラドカーンが取り戻しに行く「ラドカーン」は天体解放民話。奇妙なのは当たり前のようにラドカーンが魔法を使ってグリフィンに変身したりするところ。他の民話でも、例えば何らかの良いことをして魔法の力を借りれるという状況になるならまだしも、普通の人が突然、当たり前のように魔法を使ったり呪いをかけたりする設定のものが結構あって、伝承の過程で省略されてるのかもしれないけれど、ハンガリー人基本全員魔法使えるのかと(誤解)

    「地獄のかま焚き」は、切り株で昼寝してるうちに海に流されて森に辿りついた男が、森番にこき使われるのだけど(実は地獄で森番は悪魔)、馬や馬車が口を聞き、実は元は人間だったと言って主人公の逃亡を手助けしてくれる。馬はともかく馬車の部品まで元人間というのが、銀河鉄道999の終着駅みたいだと思った(笑)さらに無事帰還した男はどんなものとでも話せる能力を授かり(動物だけでなく無機物とも!)女性の下着に質問してその女性の男性遍歴を聞き出すという荒業を使う。これはすごい(笑)

    「森の葉かげで生まれた子ども」は、母親が巨人とデキてしまい息子が邪魔になって殺そうとするという、現代日本でもありがちなシンママが連れ子を新しい男と一緒になって虐待みたいな話で民話としては斬新なような恐ろしいような。もちろん息子が逆襲するわけですが。

    「靴をはきつぶす王女たち」はグリム童話の「おどる12人のお姫さま」と同じく、夜中こっそり抜け出すお姫様たちを尾行して突き止めた男が結婚できるというパターンの話だけど、こちらのお姫様たちは結構性悪(苦笑)「天までとどく木」は「ジャックと豆の木」的な。

    「怪物王女」は、なんの因果もないのに呪いで怪物にされた王女様が夜な夜な監視役の兵士を惨殺し、100人目がついに呪いを解く話。パターンとしてはありがちだけど、美女と野獣ならぬ、女性のほうが怪物というのが珍しい気がする。しかも結構残虐だし。「ブルゴーは悪魔」は、ちょっと青髭的な。三姉妹上から順番に嫁にもらうも次々殺してゆき末っ子だけ逆襲パターン。

    個人的なお気に入りは「花髪の男」お風呂の水が減っていくので犯人を捕まえようと水の代わりにお酒を入れておくと、酔っぱらった妖精が捕まり、逃がしてくれた王子に恩返しをする・・・というのは西洋というかケルト系の民話にもありそうだけど、髪の毛がぜんぶお花の妖精王って、やっぱビジュアル的に夢があって良いですよね。

    「二人の金髪の若者」は転生系で、二人の金髪の王子様が赤ん坊のうちに殺されて埋められて、そこから梨の木が生え、その梨を食べた山羊、山羊が死んでその内臓を食べた魚、など、どんどん変転して17年後に17才の人間の姿になって、殺した相手に復讐するパターン。

    三部構成にしてあったけどおもに一部のものが好きでした。二部にやたらと出てくるマーチャーシュというのはハンガリーに実在した中世の賢王で国民に人気があったらしい。

    あとは聞きなれない名前の食べ物がちょいちょい出てくるのだけど、なんだか美味しそうで食べてみたかった。パーリンカ(果実酒?)というものをやたらとみんな飲んでいて、お弁当にはポガーチャという固いパンを持たされ、パラチンタというクレープみたいなものもとても美味しそうだった。

    ※収録
    Ⅰ 底なしの泉/靴をはきつぶす王女たち/怪物王女/ブルゴーは悪魔/森の葉かげで生まれた子ども/ラドカーン/伯爵と従僕のヤーノシュ/死の婚約者/ベチャーロシュ/小馬/ナジ・ヤーノシュの物語/天までとどく木/地獄のかま焚き/花髪の男/明けの明星/グリフィン/力持ちのヤーノシュ/二人の金髪の若者/夢見る若者
    Ⅱ マーチャーシュが王になる/老人は人生をどのように分けたか/マーチャーシュ王と星占い/マーチャーシュ王と若者/マーチャーシュ王はどんな贈り物をしたか/金を払わないと葬式をしてくれない坊さんとマーチャーシュ王/アラニュ・ジャーダ/美男ヤーノシュ/燭台猫のマターン
    Ⅲ 井戸掘り/セーケイのかみさんと悪魔/ものぐさな嫁/勘定は誰が払う?/親父より利巧な息子/呪われた修道士/ふざけ小僧/ジプシーの弁護士/王さまになったジプシー/靴屋/犬と狼の会話/狼と少女/九羽の雌鳥と一羽の雄鶏/ミソサザイと熊/黄色い鳥
    オルトゥタイ・ジュラ「ハンガリーの民話」

  • 独特の言い回しといい、今まで読んできたスカンジナビアやゲルマン、ケルト系の民話とは全く異なる内容。
    その独特さを楽しめる方なら、読んでいて面白いかもしれないだろうが……。

  • イギリス・アイルランドの民話が一番好き。ハンガリーは雑多な感じ…と思ったら、各地に出稼ぎやらなんやらで散らばったハンガリー人たちが国に戻って語り合った賜物だったのね。そりゃミックスな感じなわけです。読んだからには直に風土に触れてみなければね!

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