千一夜物語 3(完訳) (岩波文庫 赤 780-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003278031

感想・レビュー・書評

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  • 3巻はオマル・アル・ネマーン王とその子供たちにまつわる長編になっている(4巻まで続く)しかし長編なのに一夜あたりの分量が少なく、話が細切れなのがちょっと気になった。成立年代や過程に何か事情があったのかしら? 物語中の登場人物が語る物語も今回は教訓風のつまらないものが多く、私が王様だったらここらでシェヘラザードを殺しちゃってたかも(こら)

    さてオマル・アル・ネマーン王は大変色好みの王様で、アッラーの定めている正妻4人までの他に360人の妾を囲っており、つまり日替わり(!)そんな王には自慢の勇敢な王子シャールカーンがいるが、キリスト教国に戦に出た彼は敵国の王女アブリザと恋に落ち連れ帰るも、なんとこれを父王が横取り!その手口たるや、靡かないアブリザに薬を盛り眠っているあいだに一発やっちゃえという卑劣さ!なんたるゲス!!アブリザは妊娠出産後、侍女と逃亡するも奴隷に裏切られ斬殺される。これを知ったアブリザの父ハルドビオス王はオマル・アル・ネマーン王への周到な復讐計画を練る(当然)

    一方、シャールカーンとは腹違いの双子でまだ14才のダウールマカーンとノーズハトゥの双子は父王に内緒で巡礼に出かけるが、旅の途中で弟ダウールマカーンが病気になったせいで離ればなれに。姉ノーズハトゥは奴隷に売られるもなんの因果か腹違いの兄と知らずシャールカーンに気にいられ婚礼出産。弟のほうもさんざんな目にあいつつ親切な風呂焚きのおかげでなんとか帰国の途へ。姉ノーズハトゥ、兄シャールカーンとも無事再会するが、彼らを待っていたのは父王の暗殺の知らせ。

    アブリザを殺された恨みにその父王は「災厄(わざわい)の母」と呼ばれる陰険な老婆の策で、5人の美女を女好きのオマル・アル・ネマーン王に贈り陥れたわけですが、まあ正直これに関しては自業自得なので同情の余地なし。さらにこの老婆は策を弄し、シャールカーンたち兄弟を陥れようとし・・・。

    キリスト教国との戦争なので、とにかく相手は悪者、敵の勇者の姿はとにかく醜く描写、災厄の母の醜さ描写も相当なもの(とても引用できないレベル)そしてキリスト信者は「大教主の糞の香」とやらを、ありがたがって焚いたり、顔に刷り込んだりしているとされており、かなり偏見に満ちた描かれ方。極端だけれどこれはこれで歴史として興味深い。

    終盤、大臣がダウールマカーンに話す「アズィーズとアズィーザと美わしき王冠太子の物語」が面白い(これもなかなか長編で4巻に持越し)話中でさらに「王冠」という名の麗しい王子が出会ったアズィーズという美男子の語る過去話が入れ子になるのだけど、彼にはかつてアズィーザという従姉で許婚の献身的な女性がいたにも関わらず、他の女の様々な誘惑に負けて放蕩三昧、結果、アベサダ化した女性に全部ちょんぎられてしまう(!)

    ところでアズィーズが食べるごちそうがとても美味しそうだったので思わず書き出しておく。アラビア料理食べたい!
    ・上等な薬味で味をつけた雛鳥の丸焼
    ・オレンジの匂いをつけ、砕いた南京豆と肉桂を振りかけたマハッラビヤ
    ・水に浸けて柔らかにしてから蒸留し、ほのかに薔薇の匂いをつけた乾し葡萄
    ・手際よく薄皮を作って、限りなく物思わせる菱形に切ったバクラワ
    ・たっぷりと詰め物をして今にもはち切れそうな、濃いシロップをかけたカタイエフ

    ※収録
    第44-129夜 オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語(三つの門についての言葉)
    オマル・アル・ネマーン王崩御の物語ならびにそれに先立つ至言(第一の乙女の言葉/第二の乙女の言葉/第三の乙女の言葉/第四の乙女の言葉/第五の乙女の言葉/老女の言葉/僧院の物語)
    アズィーズとアズィーザと美わしき王冠太子の物語(美男アズィーズの物語)
    ※主要登場人物関係図

  • 原書名:LE LIVRE DES MILLE NUITS ET UNE NUIT

    オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき2人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語
    オマル・アル・ネマーン王崩御の物語ならびにそれに先立つ至言
    アズィーズとアズィーザと美わしい王冠太子の物語

    編者:ジョゼフ=シャルル・マルドリュス(Mardrus, Joseph-Charles, 1868-1949、エジプト・カイロ、東洋学者)
    訳者:豊島与志雄(1890-1955、朝倉市、小説家)、渡辺一夫(1901-1975、東京、フランス文学者)、佐藤正彰(1905-1975、東京、フランス文学者)、岡部正孝(1912-、フランス文学者)

  • オマル・アル・ネマーン王も側近もしょうもねえ(失礼。
    なびかない女性(しかも息子が思いを寄せていることを悟っているのにもかかわらず)をどうしようと大臣に持ちかけたら、眠らせて事に及べばいいじゃなーいじゃねえ!っていう。
    なかなかに突っ込み所が多かったです。
    自業自得になるのは勿論だけど、周囲の被害もだいぶ大きいのはどうなのよねぇ…。

  • 2008/01/26

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著者プロフィール

とよしま・よしお
1890(明治23年)~1955(昭和30年)。
日本の小説家、翻訳家、仏文学者。
久米正雄、菊池寛、芥川龍之介らとともに
第三次「新思潮」の同人として世に出る。
代表作に、
短編小説集『生あらば』(1917年)、
中編小説『野ざらし』(1923年)、
随筆集『書かれざる作品』(1933年)、
長編小説『白い朝』(1938年)、
短編小説集『山吹の花』(1954年)など。
当時ベストセラーになった『レ・ミゼラブル』の翻訳で知られる。
太宰治の葬儀の際には、葬儀委員長を務めた。

「2018年 『丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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