完訳 千一夜物語〈4〉 (岩波文庫)

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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003278048

感想・レビュー・書評

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  • 3巻から続く王冠太子とアズィーズの話は大団円、これ自体は面白かったけれど、この話をこのタイミングでなぜ大臣から語らせたのかにあまり必然性がないのはちょっと謎。そしてダウールマカーンの話に戻るわけですが、あっさり病死して子供の代の話になる。ダウールマカーンの息子カンマカーンと、シャールカーン&ノーズハトゥの娘が夫婦となり、さらに故アブリザ姫が産み残し侍女の珊瑚が育てた王子ルームザーンも帰国、協力して父祖の敵である「災厄の母」を成敗する。悪人は殺され、善人は報われてめでたしめでたし。

    興味深かったのは王冠太子とアズィーズの話の中に、女性よりも美男子を好きな長老が登場したこと。男同士ゆえ気軽に浴場に誘われて美青年二人にチヤホヤされてムフフな様子など詳細だったので何かの伏線かと思ったら本筋となんの関係もなかったという(苦笑)

    あと浴場(ハンマーム)という公衆浴場がとにかく千一夜全体を通してしょっちゅう出てくるのも注目。登場人物たちはここぞという身支度のためには必ずお風呂に入っているので、思うにアラビアの人々は日本人、古代ローマ人に次いで風呂好きの人種と見た!

    さて長編のあとは箸休め的にイソップ風な動物シリーズ「鳥獣佳話」なぜかこの章ではやたらと語り手シャハラザードと王様の会話が途中で挿入されていたりもして、ちょっと全体から浮いている。これも成立過程で誰かが後から挿入したとか理由がありそうだけど謎。

    次いで「美しきシャムスエンナハールとアリ・ベン・ベッカルの物語」は悲恋もの。これまでにも千一夜の登場人物たちは何かにつけ気絶しがち(ショックを受けたときだけでなく、あまりにも嬉しかったり興奮したりするとバッタリ気を失う)だったのだけど、この話ではとくにそれが顕著で、密会中というのに男女揃って気絶、逃げなきゃいけなくても気絶、再会できたら嬉しさのあまりに気絶、両想いなのにちょっと会えないとすぐ病気になってあげく死んでしまったりするのでツッコミどころは満載。まあ「死ぬほど好き」を比喩ではなく体現しているということか。

    素敵なのは気絶するとだいたい薔薇やジャスミンの香りをつけた水など香水系で気つけしてくれること。あと薔薇のシロップとか薔薇のシャーベットとかも飲ませてくれる。薔薇に限らないけど、気候が基本的に暑いのか、しょっちゅう飲物としていろんな花や果物のシャーベットが出てくるのがいつもとても美味しそう。

    「カマラルザマーンとあらゆる月のうち最も美わしい月、ブドゥール姫との物語」は、女鬼人(イフリータ)マイムーナと鬼神(イフリート)ダハナシュが、それぞれ自分のみつけた美青年カマラルザマーン王子or美少女ブドゥール姫が世界一美しいと競争しあい、では二人を並べて比べてみようと眠る二人を同じベッドに。目覚めた二人は恋に落ちるが、無責任な鬼人たちはコトが終わるとさっさと二人をそれぞれのベッドに戻してしまうので、目覚めた二人はパニック!

    類似の逸話が1巻の「大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンとハサン・バドレディンの物語」にもあったけれど、こちらでは王子と姫が再会するまでに大変な紆余曲折を経ることに。さらに再会してからも再度離れ離れになったり波乱万丈。

    興味深いのはこの話の中に異装と同性愛のエピソードが多数ちりばめられていた点。カマラルザマーンは女装して姫に会いにいくし、ブドゥール姫は再会後カマラルザマーンが行方不明になったことで、男装してカマラルザマーンになりすますだけでなく、なんとなりゆきで妻まで娶ってしまう。この妻ハイヤート・アルヌフースも可愛らしい美少女で、なんと二人は百合関係に。そしてカマラルザマーンが戻ってきたとき男装のブドゥール姫は男として彼に言い寄り、迫られたカマラルザマーンは渋々覚悟を決めるも、実は姫でした!で大団円。

    ※収録
    第130-145夜:オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子シャールカーンとダウールマカーンとの物語(続き)
    アズィーズトアズィーザと美わしき王冠太子の物語(続き)(ドニヤ姫と王冠太子の物語)/ダウールマカーン王の崩御/ダウールマカーンの王子、若きカンマカーンの冒険
    第146-151夜:鳥獣佳話
    鵞鳥と孔雀の夫婦の話/羊飼いと乙女の挿話/亀と漁師鳥の話/狼と狐の話/小鼠と鼬の話/烏と麝香猫の話/烏と狐の話
    第152-169夜:美しきシャムスエンナハールとアリ・ベン・ベッカルの物語
    第170-236夜:カマラルザマーンとあらゆる月のうち最も美わしい月、ブドゥール姫との物語

  • "第130夜から236夜まで。
    オマル・アル・ネマーン王の息子達の苦労話の続きと鳥獣佳話、シャムスエンナハールとアリ・ベン・ベッカルの話、カラマルザマーンとブドゥール姫の話。
    最後の話は鬼神の意地の張り合いから発展する前に読んだような内容。このあたりから夜のカウントちょっとずつ抜けている。"

  • 恋物語もなかなか一筋縄ではいかず。
    あとジンニーが関わるとこんがらがるパターン(笑。
    元に戻さなくてもいいのよそこは…。

  • 4 (130-236)
    ドニヤ姫と王冠太子の物語
    ダウールマカーン王の崩御
    ダウールマカーンの王子、若きカンマカーンの冒険
    鳥獣佳話
    鵞鳥と孔雀の夫婦の話
    羊飼いと乙女の挿話
    亀と漁師鳥の話
    狼と狐の話
    小鼠と鼬の話
    鳥と麝香猫
    鳥と狐の話
    美しきシャムスエンナハールとアリ・ベン・ベッカルの物語
    カマラルザマーンとあらゆる月のうち最も美わしい月、ブドゥール姫との物語

  • 2008/01/29

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著者プロフィール

1890(明治23)年、福岡県朝倉郡福田村(現・朝倉市)に生まれる。1915年、東京帝国大学卒業後、明治大学、法政大学などで教授を務めた。また、1921年ごろから子供のための短編を書いて赤い鳥社などから出版社、100以上のおとぎ話を残した。有名な学者、フランス文学の翻訳者としても知られ、訳書に「レ・ミゼラブル」「ジャン・クリストフ」などがある。1955(昭和30)年、永眠。

「2018年 『豊島与志雄短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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