完訳 千一夜物語〈9〉 (岩波文庫)

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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003278093

感想・レビュー・書評

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  • 9巻でやっと「アラジンと魔法のランプの物語」・・・なのだけど、こちらはいわゆるディズニー等でおなじみのストーリーとは全然別物。貧しい仕立て屋の息子として生まれたアラジンは子供の頃から悪童で、全く働かず遊びほうけて仕事を覚えようともしない。そんなアラジンを心配するあまり父親は病気になり死んでしまうが、それでも改心しないアラジンは、15才になっても外で遊びほうけ食事のときしか家に帰らず、母は糸を紡ぎ貧しい暮らしを支えてくれていた。

    そんなある日、死んだ父の弟を名乗る男がアラジンの前に現れ、アラジンに金銭や豪華な服を与え甘やかし騙して連れ出すが、実はこの男は悪い魔術師。アラジンを使って洞窟の地下にある魔法のランプを取ってこさせ、用済みになったら殺そうと計画していたが、アラジンに反抗されたため彼を地下に閉じ込め怒って立ち去る。魔術師に事前に貰っていた指輪のおかげで(こすると鬼神が出てきて願いをかなえてくれる)危地を脱出したアラジンは改心しランプと宝物を持って母の元へ戻る。偶然ランプを磨こうとした母により、ランプの魔神(ジンニ―)が現れて願いを叶えてくれることを知る。

    せっかく魔神がいても豪華な食事を用意してもらう程度だったアラジンだが、あるとき王女バドルール・ブドゥール姫の入浴を盗み見てあまりの美しさに目がくらみ、王女に結婚を申し込むことにする。自分の息子を王女と結婚させたい大臣の妨害に合いつつも、なんとか王女と結婚にこぎつけるアラジン。そして魔神の出してくれた宮殿で豪奢な暮らしを送るが、ランプをアラジンに横取りされた例の魔術師の復讐により、ランプのみならず妻と宮殿も奪われてしまう。最終的には魔術師をやっつけ宮殿も妻も取り戻すが、なぜか妻との間に子供ができず、倒した魔術師の弟の嫌がらせに合うという蛇足な話が付け足されている。

    一見波乱万丈だけれど、結局アラジンはランプという無敵ツール、ランプの精という何でも叶えてくれるドラえもん的な存在に依存しているだけの、のび太くん的な側面があり、王女はアラジンがイケメンで大金持ちだから喜んで結婚してくれたけれど、元の婚約者から魔神を使って王女を奪い取るアラジンのやり方は正直そこそこのゲスな気もするし、なんだろうね、チートっていうか、それはちょっとズルイよなあみたいな、釈然としない気持ちがちょっと残るので微妙。

    「眼を覚ました永眠の男の物語」は、千一夜の話の中で最も多く登場するおなじみ教主ハールーン・アル・ラシードとアブール・ハサンの出会い編。お話としてはとても面白いのだけど、やっていることは性質の悪いドッキリでしかないので、ユーモアセンスとしてはこれまた微妙な気持ちに。

    「ジアン・アル・マワシフの恋」美青年アニスが迷い込んだ庭で出逢って互いに恋に落ちた美女ジアン・アル・マワシフ、しかし彼女には既にユダヤ人の夫が。嫉妬深い夫のため愛するアニスと引き離されたジアンはさらに夫からDVを受けるが、それを訴え出ることで見事離婚に成功。そしてアニスの元へ戻る帰路でキリスト教の修道院に立ち寄ると僧院長が彼女を口説こうと画策。しかし僧たちは美女ジアンを前にすると「腹の指が象の鼻のように持ち上がって」しまい、それを侍女たちにからかわれて退散。ジアンは無事アニスの元に戻り結ばれる・・・というハッピーエンドではあるんだけど、そもそも発端が不倫な上に、ユダヤ教の夫、キリスト教の僧たちをひたすら下劣で愚かな罰されるべき人間として描いており、アッラー万歳な話になっているので素直に喜べない側面もあり。

    「若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語」も同様。フランク王女は人名ではなくフランク人(=ヨーロッパ人)の王女の意で彼女の名前はマリアム姫。回教徒の海賊に攫われて奴隷として売られるも美青年ヌールと恋に落ち幸せに暮らしていたが、父王は当然娘を血眼で探しており、にっくき回教徒から姫を奪還、しかし姫はすでにヌールという愛する夫があり回教徒になっているので母国から何度も脱走、最終的に父王の軍隊と自ら馬上に剣をとって戦い勝利。姫のこの勇ましさはとっても素敵だったけど、結局キリスト教徒をやっつることが目的になってるのが微妙な気持ちに。そもそも回教徒が姫を誘拐したのは悪くないのかっていう。どの宗教の肩を持つ気もないけれど、特定の宗教の正しさを押し付けるために物語が利用されること自体が個人的に好きではない。

    というわけで、この巻はちょっとイマイチだったのだけど、ラストで突然、シャハラザードが妊娠を思わせる発言をしていてビックリ。ていうか20夜ほど体調不良で休暇もらったらしいんだけど、よく殺されなかったなあ(苦笑)


    第622-653夜:眼を覚ました永眠の男の物語
    第653-666夜:ジアン・アル・マワシフの恋
    第666-671夜:無精な若者の物語
    第671-714夜:若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語
    第714-720夜:寛仁大度とは何、世に処する道はいかにと論じ合うこと(サラディンとその大臣の物語/比翼塚/ヒンドの離婚)
    第720-731夜:処女の鏡の驚くべき物語
    第731-774夜:アラジンと魔法のランプの物語

  • アラジンと魔法のランプ登場

  • "第622夜から774夜まで。
    有名なアラジンと魔法のランプの話。アラジンのやんちゃぶりとランプの精のブチ切れ具合が楽しい。
    他は眼を覚ました永眠の男、ザイン・アル・マワシフ、無精な若者、ヌールとフランク王女、小話など。"

  • 若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語、すっげえ!おっと、失礼。
    守られるヒーローと守り抜くヒロインの原型がこちらに(笑。
    お馴染みのアラジンと魔法のランプもこの巻に。
    やっぱり記憶にある子供向けのストーリーよりはシュール。

  • 9 (622-774)
    眼を覚ました永眠の男の物語
    ザイン・アル・マワシフの恋
    無精な若者の物語
    若者ヌールと勇ましいフランク王女の物語
    寛仁大度とは何、世に処する道はいかにと論じ合うこと
    サラディンとその大臣の物語
    比翼塚
    ヒンドの離婚
    処女の鏡の驚くべき物語
    アラジンと魔法のランプの物語

  • アラジンと魔法のランプの話は結構洗練されてたと思う。でも、最後の悪の魔法使いを倒した後の話は蛇足だと思う。なぜ入れたんだろう? ランプの設定の謎解きをしたかったならもっとうまいやり方があったはず

  • 2008/02/01

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著者プロフィール

1890(明治23)年、福岡県朝倉郡福田村(現・朝倉市)に生まれる。1915年、東京帝国大学卒業後、明治大学、法政大学などで教授を務めた。また、1921年ごろから子供のための短編を書いて赤い鳥社などから出版社、100以上のおとぎ話を残した。有名な学者、フランス文学の翻訳者としても知られ、訳書に「レ・ミゼラブル」「ジャン・クリストフ」などがある。1955(昭和30)年、永眠。

「2018年 『豊島与志雄短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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