- 岩波書店 (2011年6月16日発売)
本棚登録 : 544人
感想 : 37件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784003279250
みんなの感想まとめ
詩の本質やその存在意義について深く考察されており、詩はただの言葉ではなく、人生や現実を映し出す魔術的な体験であることが伝わってきます。著者は、詩が持つ豊かな暗示や隠喩を通じて、私たちが日常的に感じる感...
感想・レビュー・書評
-
この本は、ボルヘスがハーバード大学ノートン詩学講義(1967年~1968年)でおこなった講義内容を編集したものです。イタロ・カルヴィーノ(というか彼はノートン講義の寸前で急逝してしまい、講義のためのメモが未完成ながら本となっています)やウンベルト・エーコのノートン文学講義もとても面白くて好きですが、ボルヘスの講義は大変わかりやすくて素晴らしい!
「私の信ずるところでは、生は詩から成り立っています。詩はことさら風変りな何者かではない。詩はそこらの街角で待ち伏せています。いつ何時われわれの目の前にあらわれるやも知れないのです」
すぐれた詩人はみな同じようなことを言うのに驚いてしまいます。詩は作るものではなく発見するものだと。なんだか最近になって、やっと詩というものをことさら難しく考える必要はないのかもしれないな~なんて思えるようになりました。ふと目にする季節の移ろいや空のにおい、風や光の彩に揺れる木々や草花をとらえる目はきっと誰にでもあります。とりわけ子どもは詩人に近いかも。先日、枝一杯に膨らんだみごとな桜並木を眺めていた5、6歳の男の子、「ママ、雪のようだね~」と言いながら、そこら中を子犬のように飛び跳ねていました。詩を書かない詩人はまわりにたくさんいるのかもしれません。
そういえばホメロスやダンテやアリオストといった多くの古典作家の作品は叙事詩で、たしかに詩でありながら物語でもあります。長い時と空間を超えて、いまだに美と叡智と感銘を与えてくれることが不思議でなりません。しかも言語の壁があっても、翻訳であっても、みずみずしく生き生きしていて、凝った文体や美文かどうかといったこととはさほど関係なく楽しめるのも摩訶不思議。それどころか、そういう作品は翻訳されてもなんだかとにかく美しいのですよね。う~ん……私がアバウトすぎるのかもしれませんが(汗)。
「書物は物理的なモノで溢れた世界における、やはり物理的なモノです。生命なき記号の集合体なのです。ところがそこへまともな読み手が現れる。すると言葉たち――言葉たち自体は単なる記号ですから、むしろそれら言葉の陰に潜んでいた詩――は息を吹き返してわれわれは世界のよみがえりに立ち会うことになるのです」
この本では、ボルヘスの言葉ひとつひとつが示唆に富み、目から鱗が落ちるようです。とても易しい言葉で詩や文学の楽しさを語っていますので、『七つの夜』とともにお薦めしたい一冊です♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
詩論として、しごく面白い。
詩という謎
隠喩
物語り
言葉の調べと翻訳
思考と詩
詩人の信条
目次だけでもワクワクしませんか。 -
ボルヘスは決して多くのことを述べているわけではないが、示唆に富んだ事柄ばかりを述べるため、豊富に世界が拡大していく。
・生は詩から成る。
・リンゴと口の接触が必要。
・詩は一回限りの経験。
・書物は美の契機。
・詩とは何かを心得ているために定義できない。
・隠喩……人間は断定よりも暗示を信じる。
・数えられるパターンから無限に近い変奏。
・未来においては状況や歴史や詩人の名前や生涯よりも、美そのものに関心が向けられるかもしれない。
・日常的な言葉から、魔術的な源泉を、詩人は呼び出す。
・ストーリーは信じられないがキャラクター(存在そのもの)は信じられる。ドン・キホーテ。ホームズ。
・人間の一生は、自分が何者であるかを悟る一瞬につづめられる。→イエスにキスをするユダ。→裏切り者。
・言葉は共有する記憶を表す記号。→読み手に想像させようと努める。→一種の共同作業。 -
「フィクションの本質をめぐる議論を分かりやすい言葉で展開する」
と言うPRを信じて読んでみます。。。 -
読んでよかった。そして、再読すると思う。
詩というものが何か、について明確な答えは示されていない。それでもボルヘスが抱く詩への想いを、直線的というか曲線的?何と言えば良いのか、、好きに筆を運んでいるように見えたけど、最後の最後に上から見たら何かの形に見えるみたいな。
小学校低学年から詩については習うわけだけど、理解できない、どう読んだらいいかわからなくてこの歳まで来てしまった。
暗喩などのテクニック的な話もあり、いやいや意味なんてないんだよ/わからなくてもいいんだよという話もあり。
もっと気軽に、楽しんで、でも深く入り込んで詩を読んでみようと思った。
私のような消費者でなく、創作者が読んだ方が気づきが多いんだろうなと思うなど。 -
ボルヘスの思うところの、「詩」へ関わり方が簡潔に5回の講義で話されている。
最後の章は本当に感動した。
結局は、言葉というものは読む人や書く人それぞれの生き方に沿っていくものなんだなと。
インドの人たちの歴史への捉え方も面白かった。
言葉や時の流れ、過去と未来、現代といった空気のような存在で考えもしなかった事について、この本を読む前と後ではガラッとひっくり返された気分です。驚きの講義。 -
記録
-
隠喩にこそ言語の本質があるとでもいうように、その働きを矯めつ眇めつし見極めようとする。また物語の機能の根源には歴史性があるという風に、古典に幾度となく立ち返る。
謎を提示する、と本人の言うとおり、議論は明晰ではあるけれどクリアカットな結論に落とし込むためになされてはおらず、一読して理解した気にはなれなかった。
紹介される英語の詩がどれも素人目にも美しい -
記録
-
重い。そして深い。
-
-
訳:鼓直、原書名:THIS CRAFT OF VERSE(Borges,Jorge Luis)
-
2011-7-6
-
詩という形式が伝えてくれる美について、6回の講義に分けて語られている。
「隠喩」、「物語ること」、「翻訳」など、それぞれの回にテーマが設けられているが、全体を通じて、
・詩は、それ単体が内包している論理によって何かを伝えようとするものではなく、言葉と人が触れあったときに立ちあがってくるもの
・詩は、自己の意識によって創作するものではなく、また分析したり解釈したりするものではなく、そこに立ち現われてくる美を「汲みとる」もの
といったことであると感じた。
さらに、さまざまな詩が引用されており、講義がボルヘス氏自身がそれらに対してどのようなことを感じ取ったかを語りながら進められていくため、それらの点が非常に豊かに伝わってきた。 -
ボルヘスによる詩に関する話。詩に対して共感できることがここにはある。詩のよさ本来の姿といってもいいと思う。ボルヘスが先導役ならきっと詩を書こうと思う人は増えると思うな。そんな気がした。
-
物言い:明示<暗示
定義できないものに関しての認識 -
詩について、情熱あふれる豊かな語り口の講義。自分に英語の素養があったらもっと楽しめたかも。
-
『7つの夜』もそうだったのだけど、ボルヘスの講演録は読んでいてものすごく心地良い。それは彼の書物に対する愛情、文化に対する敬意を言葉の端々から感じることができ、博覧強記なその知性が軽やかなステップを踏んで読み手を魅力するからだ。一言で表すならば、それは信愛なる美しさ。物語について、詩についての講演録である本作ではそんなボルヘスの美学が満遍なく語られながら、書物を超えた「言葉」が持つ美しさへとアクセスする。ボルヘスが盲目となりながらも書物へ、そして美しさへの敬意を失わなかった理由に触れることのできる一冊。
-
詩と美と実感と情熱。おもしろかった。
-
ボルヘスにとっては言語自体が、その意味の多重性が、翻訳されるごとにその作品の置かれる位置づけが迷宮を構築していくのだなぁ。
-
2012/4/23購入
この本が好きな人におすすめの本
著者プロフィール
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの作品
