アレフ (岩波文庫)

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279281

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    けど読了に少々時間がかかった。
    訳が硬くて読みにくい。だが、これはこれで良さもあるので、他の訳と読み比べたりしてみたいとも思った。

    好きだったのは「不死の人」「神学者たち」「もう一つの死」「ドイツ鎮魂歌」「神の書跡」「アレフ」。
    (ファンタジーとは区別して)幻想文学は文学に向いていないというか。言葉にするのが難しく、またこれだけいろんな手段があるなかで言葉を選ぶ必要性がないというか。だからこそ言葉を選ぶことに意味があるというか。難儀になるのがわかっていながら、あえて言葉を表現の手段として選ぶ。ある意味、言葉への挑戦とでも受け取るべきか。そういった意味で、文学のなかで最も重要なジャンルであると考える。

  • 木村榮一訳の『エル・アレフ』の後の『アレフ』。鼓直の訳文のほうが硬くて好み。想像でしかないが、こちらのほうがボルヘスらしいような気がする。ただ、おそらく原文のとおりに言葉を選んでいるためにわかりづらい箇所がなくはないので、よりかみ砕いた訳の『エル・アレフ』を参照しながら読むとよいかもしれない。

    訳違いとはいえ、再読してみてようやくおもしろポイントがわかったような気がする話があり、三回目もきっと楽しく(寝落ちしながら)読むだろう。今回よかったのは「神学者たち」「もう一つの死」「神の書跡」「アレフ」。「アレフ」は"アレフ"自体より、お互い嫌いなのに、同じコミュニティにいるから付き合いを切れない男二人の、なんとかして相手を踏みつけようとする足掻きがしょうもなくて可笑しかった。「神学者たち」のアウレリアヌスも、ヨハネスをやっつけたくて仕方ないのにあの最後の段落っていう。愛と憎しみは背中合わせ。

  • 翻訳の違いで以前に二度読んでおり、これが三度目のアレフ、あるいは不死の人。
    翻訳とは肉を切らせて骨を断つようなものだ、と別な本のレビューで目にしたが、これを読むと納得できるところがある。鼓さんの訳は土岐さん・篠田さん・木村さんなど他のボルヘス訳者達と比べておそらく最もわかりにくい。食べ物で言うと石でも食わされているかのようなゴリゴリした口当たりと呑み込みにくさがある(アレフはおそらくそもそもがボルヘスの中では口語的な文体だからまだましだが、伝奇集などは読みにくさの最たるものだった)。しかし何故か、なにか核心的はところはしっかり頭に残るのだから不思議だ。文を作り、それを読むということの神秘が隠されているように思う。

    蛇足だが、明朝体の中にゴシック太字の強調を入れられるのも癖になる。仕事で自分が作る書類でも真似してみたりして。

  • 《目次》
    ・ 不死の人
    ・ 死人
    ・ 神学者たち
    ・ 戦士と囚われの女の物語
    ・ タデオ・イシドロ・クルスの生涯(一八二九-一八七四)
    ・ エンマ・ツンツ
    ・ アステリオーンの家
    ・ もう一つの死
    ・ ドイツ鎮魂曲
    ・ アヴェロエスの探求
    ・ ザーヒル
    ・ 神の書跡
    ・ アベンハカン・エル・ボハリー、おのが迷宮に死す。
    ・ 二人の王と二つの迷宮
    ・ 待ち受け
    ・ 門口の男
    ・ アレフ

    ・ エピローグ
    ・ 解説(内田兆史)

  • 『伝奇集』とはまた違った意味で、異次元で、独創的で、幻惑される作品集である。最高の文学作品のひとつであると思う。

    特に最初の「不死の人」、最後の「アレフ」は印象として圧倒的だ。他の作品も捨ててはおけないが。

    めまいがするすごさだ。

  • 読了。流し読み。重厚なボルヘスを流し読みなので、当初から再読予定のつもりで。10回程度ならば、どうせ読めば読むほど面白いのだろうと、初めから最高の評価を与えているだけに、まずは、と。あまりにも素晴らしかった伝奇集に比べて、評価はやや落ちる気がする。理由は、ボルヘスの主題とも呼べる数少ないモチーフ、迷宮、鏡、回帰などが、形容的に現れる頻度が多く感じられたことによる。伝奇集の、時間をモチーフにした巨大な小説についての小説のなかで、時間という単語が一度も現れないことこそが時間をモチーフにしている何よりの証拠であるという台詞がある。迷宮について語るのに、まるで迷宮のようだと書くのは馬鹿馬鹿しい。ところで、全編を通してイスラム色が非常に強く感じられた。この印象は伝奇集にない。稚拙な感想だが、二人の王と二つの迷宮は、2ページの小説だが、衝撃的だった(劇的なものは、飽きやすい)、対比は整然としていた。改めて読むと眠気で看過していたものが多く見つかるだろう。ひとまず。

  • 好:「神学者たち」「神の書跡」「門戸の男」

  • 久しぶりにボルヘス。
    なんやかんや言ってラテンアメリカ文学ではプイグと並んで好きな作家。読んでいると幸せな気分になる。何だか『無限』とかそういうものを感じる。

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