緑の家(下) (岩波文庫)

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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279625

作品紹介・あらすじ

"緑の家"を建てる盲目のハープ弾き、スラム街の不良たち、インディオを手下に従えて他部族の略奪を繰り返す日本人…。ペルー沿岸部の砂の町とアマゾン奥地の密林を舞台に、様々な人間たちの姿と現実を浮かび上がらせる、バルガス=リョサの代表作。

感想・レビュー・書評

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  • ペルー沿岸の砂の町とアマゾン奥地の密林を舞台に、様々な人間たちの姿と現実を浮かび上がらせる、物語の壮大な交響楽。


    ずっと気になっていた「緑の家」ようやく読むことができた。
    5つのストーリーが組み合わされ展開してゆく。登場人物が多く入り組んでいるのでメモは必須。読んでいくうちに、徐々につながりが見えてくる。
    厳しい現実。表面的な偽善や同情は吹き飛ぶような世界だ。

    最後のセバーリョス医師とガルシーア神父の会話が、長い物語の終わりに、なんだか、しみじみとして。よかった。

    訳者解説も、本書が書かれた背景まで詳しく親切。ありがたい。

    • 淳水堂さん
      nanaoさんこんにちは!
      私も『緑の家』好きです。
      バルガス=リョサの小説は、現実は厳しいし、時系列入り混じっていますが、ラストは案外...
      nanaoさんこんにちは!
      私も『緑の家』好きです。
      バルガス=リョサの小説は、現実は厳しいし、時系列入り混じっていますが、ラストは案外スッキリして読み終えることができますよね。
      2023/11/12
    • nanaoさん
      淳水堂さん、コメントありがとうございます。
      拙い感想でお恥ずかしいですが、いいねもうれしいです。
      そうですね、ゴチャゴチャしているようで、最...
      淳水堂さん、コメントありがとうございます。
      拙い感想でお恥ずかしいですが、いいねもうれしいです。
      そうですね、ゴチャゴチャしているようで、最後は見事な収束という印象です。バルガス=リョサを読むのは、まだ2作目なので、他の作品も読んでみたいです。レビュー、参考にさせてください。

      2023/11/12
  • 下巻も本当に面白くて、あっという間に読んでしまった。本の中でも小説好きなら、すこぶる魅力的な物語ではないだろうか。

    段々と登場人物同士が繋がっていく様子は、読み手を引きずり込む力に溢れていて、複雑に入り組んだ構成、人物関係に頭がついていけるのか心配しつつも中断を許さない、物語を読む醍醐味を味わわせてくれる、傑作だと思う。

    たまたま「継母礼賛」と「緑の家」書かれた時期にだいぶ隔たりのある2作を読んだが、アプローチの方法は違っていても、人物の内面を掘り下げるのではなく、行動から心情を読み取らせる書き方が共通していた。未読作品がたくさんあるので、これから読むのが楽しみ。

  • いくつかの話が徐々により合わさって、一枚の大きな絵が見えてくる。それが面白くて、どんどん頁を繰ってしまった。密林から砂漠まで、大地にはりつくようにして生きる人たちのありさま、何かが成し遂げられては跡形もなく崩れ去っていく様子が現実感を持って目の前に現れる。時間も距離もスケールが大きかった。

    ラリータとボニファシア。彼女たちがあのような心持ちで生きてこられたことに安堵したけれど、それは語り手・読み手の都合の良い願望、あるいは南米のマチスモの不誠実でしかないような気も。「俺は男だぞ」という言葉の空疎は強く感じた。

  • あまりの豊饒さに圧倒されるばかりでまともなレビューは書けそうにない。
    ペルー北部のアマゾン川流域と沿岸地帯を舞台に、場所も時間も激しく往来しながら五つのストーリーが繰り広げられる。それはまるで豪華な織物かタペストリーの製作過程を見ているかのよう。無数の色の糸のきらめきに目はくらむばかりで、飛び交う杼や針の動きは速すぎて残像しか捉えられない。混乱する頭で必死に読み進めていくと、最後の最後に織り上げられた布の上にあでやかな模様が浮かび上がる。
    仕掛けられた多数の伏線が最後に一本の糸に収斂する技巧的小説はいくらもあるが、一望を拒否する空間的広がりと細部の緻密さを併せ持つこの作品世界はバルガス=リョサ独特のものかもしれない。
    ラテンアメリカ文学の良き読者ではない自分にとっては、強い覚悟で一気に行かなければとても読了できない手ごわさではあった。しかし、砂の中のピウラの町と娼館〈緑の家〉、旧世界そのままの修道院と尼僧たち、またアマゾン源流の密林と、物語が発する空気は濃密かつ強烈で、なんとしても読み進めねばならないと思わせる何かがあった。そして結末に辿り着いた時のこの脳みそを直接つかんで揺さぶられるような衝撃と、押し寄せてくる充足感。読書の愉しみここに極まれり、であった。

  • リョサと他のラテンアメリカ作家を分けるもの、それは魔術よりも現実に重きを置く彼の生真面目なリアリスト性にある。解説によれば本作はリョサの実体験がかなり反映されている様であり、彼の想像力はリアリズムをどの様な技法で描くのかに注がれている。断片化された5つの物語を読み進めながら紐解く行為は本作が描いた、密林における混沌がやがて都会化された社会に変容していくプロセスにどこか似ており、物語が進むにつれて輪郭が明確になっていく人物像は密林と都会の狭間で自己を確立させていく南米の近代化そのものの様に思えてしまうのだ。

  • エピローグまで来てやっと、複雑に入り組んだ物語の全貌が見えた。地域によって山岳部や砂漠や密林〜というふうにガラッと変わる風土、土着とカトリックが混じった独特の文化、いい加減だけど、情があってさっぱりした国民性とか、確かにペルーだなーと思いながら読めた。やっぱり女性が強い。もう一度読みたいけれど、再読はいつになるやら。 木村先生の解説は、私がペルーで受講した講義と被る内容があったり、リョサのバイオグラフィーが子細に書かれていて、大変貴重でためになる内容でした。

  •  5つの物語を細かく刻んでシャッフルして再配列した感じなので、とにかく読みにくい。その上、途中で場面が何の予告もなく切り替わるので、読者はかなり注意して読まないといけない。訳者解説にもあるように、この小説には読者に注意を促す「罠」が多く仕掛けられている。女性が複数登場するが、別の名前で登場することも多く、解説を読んで、実はあの人とあの人は同一人物だったのかということも分かった。そんなわけでかなり難しい小説なのだが、パズルを解くような面白さがあった。ただしこんなパズルを解かなくても、それぞれの物語が十分面白いのでぼーっと読んでみて密林の雰囲気を楽しむという読み方もあり。

  • 緑の家 アマゾンの象徴が再構築され、人間関係も然りのエンド。絶対言えるのは、私のモットー「寝そべって、概略を掴み、細部の技巧を味わう」読み方ではからきし歯が立たない。下巻でA4サイズの紙に流れと人名、地名、小物を書き、色別にした。新旧緑の家・流れ者ドンアンセルモ・ラチュンガグループ。リトゥーマ・ボニファシア・修道院上層部。レアテギ・フシーア・ニエベス・ラリータのゴム集団。それに絡む不良男ども。アマゾンの熱気そのものの如く、人が湧き、熱情で殴り、女を凌辱し、かっぱらう。そこに論理倫理は霞む。緑の家に流れるハーブの音色・・過去が甦り神父が弄されて。。今この時間に過去が濁流として流れ込む文体、地の文と会話の一体化に参った。慣れてくると、一般的な≪ゆったり作品」が読めなくなったりして・・。随処に溢れるペルー独特の地名、酒、食事、蛇の種等が煌めきを加える。男と女が性を交わし、子を孕み、又次なるまぐわいに興ずる。男もパッションだが女も逞しい(体つきもそうなるみたい)7年前の旅 3週間足らず14日間リマから太陽神殿へ歩いた。メンバーは5人。食事は3食とも現地のコックが作る。キヌア尽くしで、えも言えぬ美味さだった

  • 初リョサ!
    5つぐらいの小説の原稿をばらまいて急いでかき集めてそのまま一冊の本として入稿したような物語。
    時制が前後するは、地の文と会話文が入り乱れるは、ひとつの段落が長いは、と読むのが厄介…なんだけど意外とわかりやすいのは、、描写自体がシンプルで、淡々と描かれているから。映画を観ているような感じ。

    川を下る病気の日本人と老人の思い出話、インディオの少女をさらう修道院、娼館「緑の家」の主である男の半生、やんちゃな番長(!)、
    熱気と匂い、そしてハーブの音を感じる文章で、おなかいっぱい。

    読み解く面白さを感じさせられる読書体験でした。

  •  断片的な場面が積み重なって、5人くらいの主要な登場人物の人生絵巻が編み上がっていく構成になっていた。読み終わってみると、ものすごく重厚な「物語」を喰らった感覚が残る。私の乏しい知識からは、フォークナーの『アブサロム、アブサロム!』を読んだときの印象が近いと感じた。
     登場人物達は、南米の暑さの中でそれぞれに強烈な感情をもっていて、男達はそれに引っ張り回されるように生きているし、女達はそれを抑え込んで男に振り回されるように生きている。そんな人物ばかりで物語の中の熱量はすごいのに、なんだか皆が寂しい人のように思った。情動レベルの感情と、理性を含む気持ちとが、本人の中で分離してしまっているような人間が多い(盗賊のフシーアだけは情動が全てだったように見えたが)。
     とても複雑な構成で「技巧の為の技巧」になりそうなところだが、この小説は内容としても強い物語がある。大傑作。

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