薬草まじない (岩波文庫)

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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003280126

感想・レビュー・書評

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  • 『やし酒飲み』が大好きだったので楽しみにしてたチュツオーラの岩波文庫新刊。すでに免疫があるせいか、やし酒~ほどの新鮮な面白さは感じられませんでしたが、終盤の展開が予想外で面白かったです。

    主人公は、結婚して5年経っても妊娠しない妻のために<さい果ての町>にいる<女薬草まじない師>のもとへ、妊娠するための薬を貰うための旅に出ます。同伴するのは第一の<心>と第二の<心>と、自身の<記憶力>、そして<第二の守護神>という目には見えない内在する声のようなもの(ほぼ脳内ポイズンベリー状態)。旅の道中はある意味ワンパターンで、なんというか、RPG的。旅に出る→敵と遭遇→戦って倒す→戦利品ゲット→食べ物を調達→満腹して眠る→旅立つ→敵と遭遇→戦って倒す→→戦利品ゲット・・・の繰り返し。

    ゆえにちょっと決定的な盛り上がりに欠ける平坦な印象も受けるのだけれど、登場する敵は<ジャングルのアブノーマルな蹲踞の姿勢の男><頭の取りはずしのきく凶暴な野生の男><乳房の長い母>など相変わらず独特。そして主人公の前世は<生まれながらにして死んでいる赤ん坊族>というもので、これも独特の死生観が感じられて興味深い。

    しかし<女薬草まじない師>は、その名前からイメージする胡散臭い魔女っぽい雰囲気とはかけ離れていて、<全知全能の聖母さま>と呼ばれ、彼女に願い事をかなえてもらうために人々は毎日集まって礼拝させられたりして、なんかちょっとヨーロッパ的というかキリスト教的なのが微妙に違和感。

    そんなこんなで色々ありつつ妻が妊娠するためのスープを調合してもらった主人公は帰路につくのだけれど、「あなたはこのスープを絶対食べてはいけませんよ」と聖母さまに忠告された時点でハイ前振り、ダチョウ倶楽部かというくらい忠実に、空腹に耐えかねた主人公はスープを食べてしまう。ここからの展開が個人的には断然面白かった。つまり奥さんだけでなく、主人公まで妊娠してしまいます(笑)

    最後はとりあえず大団円のハッピーエンド。基本的には素朴かつ奇想天外で、楽しく読めました。

  • やし酒飲みを読んだら、次におすすめしたいのがこちら。チュツオーラの晩年の作品で、こちらのほうが物語の構成がしっかりしていて、主人公の内面もよく描かれている。主人公は、石女である妻のために、薬草まじない師のもとへ薬を調合してもらいに行く。行きしに多くの精霊や悪鬼、野生の人間に出会う。第一の〈心〉、第二の〈心〉、〈記憶力〉、〈第二の最高神〉に導かれ、ジュジュやまさかりを駆使して道を塞ぐものを撃退し、無事にたどり着くのだが、最後の最後でまじない師との約束を破ってしまう。昔話のような展開。

  • 妻との間に子供が生まれない狩人が、子宝を授けてくれるという〈さい果ての町〉に住む〈女薬草まじない師〉のもと目指して旅に出る。ジャングルでは町の人間に敵対する野生の人間や、〈アブノーマルな蹲踞の姿勢の男〉〈頭の取りはずしのきく凶暴な野生の男〉などといった怪物的な存在が主人公に害をなそうとしたり、日陰で休むとそれが罠だったりする。何が危険で何が安全かはなってみないとわからないし、危険は案外簡単に切り抜けられたりして、かなり行き当たりばったりで何でもあり。時間の感覚も独特で、一日の行動が分刻みで報告されるかと思えば、特段説明のないままにジャングルを数年間もさまよっていたことが明らかになったりする。主人公は現世(?)では町の人間だが、前世(?)が〈生まれながらにして死んでいる赤ん坊〉族であるのもアイデンティティとなっており、また、旅の間、自分の体の器官の一部らしい「第一の心」「第二の心」や「記憶力」「第二の最高神」から助言を受けたり助力を受けたりして、行動や思考は一個人のものとして統合されてはいない。つまり社会関係が複雑なので、それを円滑に調整するための儀式や礼儀作法は厳格に存在し、主人公はそこのところは卒なくこなしているようである。一言で言えば、きついルールの範囲内で緩さの限りを尽くすような話である。なお、〈さい果ての町〉に住む〈女薬草まじない師〉は 異教の大祭司かと思わせながら実は〈聖母〉と呼ばれたり〈全能なる神〉を信仰していたり、主人公も川の神への人身御供を廃止するなど、キリスト教と伝統的な宗教との影響関係が読み取れるようであるのも興味深い。

  • 不妊の治療法を求め狩人が冒険をして帰還する話。
    道中は個性的な面々に出会うもののなかなか起伏が乏しく(28歳の日本人にとっては)エンターテインメント性は薄く感じた。
    物語の細部に博学的、あるいは人類学的興味を持って眺めることが読中の主な楽しみだったのは正直なところ。
    巻末の解説にて言及されていた部分のほか自分が興味を引かれた部分は時間に関するところ。
    戦闘などに要した時間を120分といったように分表示でされることがしばしばあり、巻末の解説がいっていたように必ずしもヨルバ文化のみに基づいているわけではないようだ。
    一方でひとつの戦いから次のものまで平気で一年くらいたっていたりする。
    全体としては正直そこまで楽しめなかったが、アフリカ文学は引き続き読んでいこう。

  • 『やし酒飲み』で知られるアフリカの作家、チュツオーラの長編小説。
    子供が出来ない妻のため、妊娠する薬を貰うべく旅立った主人公が道中で迎える様々な危機……という、寓話的な成り立ち。途中で立ちはだかる敵(?)の造形もユニークで、『やし酒飲み』に比べるとエンタテイメント性が高い仕上がりになっている。但し道中記とも言える冒険小説パートは、純粋なエンタテイメントとしてはやや盛り上がりに欠けるきらいがあり、主人公が旅から帰還してからの終盤が破天荒で更に面白い。
    何処の寓話でもそうだが、禁じられたことを行った者にはそれなりの報いがあるものだw
    小説だけを読んでいると『めでたしめでたし』で終わるストーリーだが、解説を読むとそれがまた違う一面を見せて来るところも面白い。

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