マイケル・K (岩波文庫)

制作 : くぼた のぞみ 
  • 岩波書店
4.13
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本棚登録 : 78
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003280317

作品紹介・あらすじ

土のように優しくなりさえすればいい-内戦の続く南アフリカ、マイケルは手押し車に病気の母親を乗せて、騒乱のケープタウンから内陸の農場をめざす。ひそかに大地を耕し、カボチャを育てて隠れ住み、収容されたキャンプからも逃亡。国家の運命に翻弄されながら、どこまでも自由に生きようとする個人のすがたを描く、ノーベル賞作家の代表傑作。

感想・レビュー・書評

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  •  これがクッツェー初読みで、南アフリカの作家ってチュツオーラみたいな感じかね、と思ったら全く違った。正統派の端正な文学。
     主人公のマイケルは、いろんなものから支配を受ける。耐えられなくなると、何もかも放り出して原野に逃げていく。第三者視点で見ると、もっと上手くやれるだろう・他に逃げ方があるだろうと思う。しかし、彼に愚行を犯す権利はないのか。一方的に冷静な正しさを押し付けることは、まるで西洋国家が植民地に対して押し付けた様々な政治制度を想起させる。支配する側は自分にとって都合の良い秩序を押し付けているだけなのかも。そんなことを思った。

  • 図書館で。
    都市部で戦闘が起ころうがどこかで食料を作り、供給する人が居なくてはおかしい、というマイケルの考え方は非常に正しい。正しいけれども戦時下においてはきっと正しいと思われないんだろうな…

    彼は色々と悲惨な目に合うけれどもその時々に彼を何とか助けようとする人にも出会う。ただ、彼にとっては彼を捕まえた人も助けようとする人も実は同じようなものなのかもしれない、なんて考えてしまいました。でもだったら山の中で野垂れ死にできるかと言えば町に戻ってくる辺り、人間ってのは業が深い生き物だなぁなんて思いました。

  • まったく個人的な考えだけれど、本作のマイケル・Kが最後に辿りついたところは、すごく仏教的。
    即身仏になる一歩手前といったところ。
    けれどもあえて本作に別のタイトルを付けるとすれば、「不死身」だろう。

  • 本書が書かれた80年代の南アといえば、アパルトヘイト政策に対する非難による国際的な孤立と内戦という、国民にとっては大変厳しい時代だったのだろうと想像する。本書にも随所に戦争が色濃く表現されているけれども、主人公が直接戦争に関わっているという訳ではない。主人公は兵士でなく通常の市民だが、そこに描かれているのは主人公の闘いであり、主人公が求めているのはごく普通の自由なのだ。しかしどうしても自由を得ることができない主人公は衰弱していく。それでも、死ぬ自由さえ得ることができないのだ。このような主人公の姿が気高く、美しく感じられるのは何故なのだろうか。

  • アパルトヘイト下の南アフリカが舞台だが、近未来ディストピア小説のような印象で読んだ。検閲が厳しいため抽象化して書いたそうで、主人公が「カラード」であることも、後書きで指摘されないとわからない。
    マイケル・Kは、檻に入れると死んでしまう野生動物のようだ。「大地の子」でありひたすら自由を求め、周囲の戦争、暴力、権威、保護さえも拒否する。それもあからさまな抵抗ではなく受動的な拒否で、自由という条件の下でないとものを食べられずにやせ細る。自らの手で育てたカボチャを食べるシーンの美味しそうなこと。
    死んだ母の影だけを背負う孤独なマイケルが一途に自由に生きられる場所を探す様は一種の聖人のように見える。というのも、キャンプに囚われ入院したマイケルに興味を持つ医師の語りに、読者のマイケルに対する想いが上書きされるのだ。この構造が小説としての広がりと深みをもたらしている。

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