仙境異聞・勝五郎再生記聞 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (2000年1月14日発売)
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  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003304631

作品紹介・あらすじ

文政三年、浅草観音堂の前にふいに現れた少年寅吉。幼い頃山人(天狗)に連れ去られ、そのもとで生活・修行していたという。この「異界からの帰還者」に江戸の町は沸いた。知識人らの質問に応えて寅吉のもたらす異界情報を記録した本書は、江戸後期社会の多層的な異界関心の集大成である。生れ変り体験の記録『勝五郎再生記聞』を併収。

仙境異聞・勝五郎再生記聞 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 平田篤胤は江戸時代の国学者、神道家。安永5年(1776年)生まれで亡くなったのが天保14年(1843年)だから、幕末よりはちょっと前。しかしのちの幕末の志士たちの尊王思想に影響を与えたので幕末関連の本を読んでいるとたまに名前が登場する。

    本書の出版は文政5年(1822年)。その2年前、天狗にさらわれて戻ってきた寅吉という少年の噂を友人から聞いた篤胤が彼に会いにいくところから始まる一種のルポルタージュともいえる。寅吉少年は当時15才。本人いわく7才のときに初めて天狗(山からきた修験者、山人、仙人のようなもの?)に連れ去られ、その後何度も、家と山(現世と幽界)を行き来し、さらわれて戻ってきたというよりは天狗に弟子入り、師匠に色々教わりながら、用事のないときはたまに実家に帰ってきているような状態。

    よくある天狗にさらわれた子供の話だと数年行方不明である日ひょっこり戻ってくるみたいなイメージだけど、寅吉は何度も行き来して弟子入りしちゃってるところが珍しいかも。寅吉の存在は近隣でも噂になり、様々な人々が会いにやってくる。寅吉は見た目も日頃の行動も15才よりかなり幼いが、神仙界の話には通じており、篤胤も詳しく話を聞いて感心する。寅吉が嘘をついているとは露ほども疑っていない様子。

    読み進めているうちに思うのは、どうも平田篤胤という人は一種のオカルティストで、現代でいうなら「ムー」の愛読者みたいな(こら)ところがあり、寅吉少年はさしずめ、ユリゲラー・・・っていうとあれだけど、あの世と交信できる霊能力者的な。解説によると篤胤に寅吉のことを紹介した屋代弘賢、山崎美成らは、あの滝沢馬琴が主催していた兔園会(奇談サークルみたいなもの)のメンバーで、この手の話の好きな人たちのコミュニティが当時からあったのでしょう。そういう人たちは寅吉の話を信じるけれど、あれは篤胤が操ってる偽者だと批判する人も勿論いる。

    確かに、若干胡散臭いなと思うのは、あまりにも寅吉少年の発言が神道に都合の良い内容でありすぎる点。仏教の僧侶のことはクソミソ。もし篤胤がキリスト教信者なら寅吉は「イエスの再来」「救世主」とか呼ばれそうだ。ただ「天子さま(※天皇)」を敬うのはわかるけれど、徳川将軍家のことも敬っており、なぜなら天狗たちは日本の平和を願っていて、それを維持するために頑張っている将軍は偉いということらしい。つまり尊王佐幕。なるほど幕末の水戸藩あたりでいかにも流行りそうな思想だ。

    寅吉との一問一答インタビューで面白かったのは、「女嶋」という女性しかいない島の話(※師匠と空飛んで行った)「女嶋は日本より海上四百里ばかり東方に有り」「さて女ばかりの国故に、男を欲しがり、もし漂着する男あれば皆々打寄りて食ふよしなり」・・・ちょっと待って、食べちゃうの!?男が欲しいってのは食料としてなの!?(驚愕)じゃあどうやって子孫を増やすのかというと、「懐妊するには、笹葉を束ねたるを各々手に持ちて西の方に向かひ拝し、女同士互ひに夫婦の如く抱き逢ひて妊む由なり」だそうです。無茶言うなー。

    あと妖怪「豆つま」とか、西遊記より面白いという『白老人』の物語とか、鼻毛抜かないほうが長生きできるとか、どこまで真に受けていいかわからないながら、とりあえず寅吉の話面白い。

    しかし反面、師匠と一緒に飛行して宇宙まで言って地球は丸いし極楽とか地獄とかないと断言していたり、妙に現実的というか科学的な意見などもあり、不思議な感じがする。たとえば「病には薬を用ふるほど宜しき事はなきに、加持咒禁などを先とするは愚かなる事なり。良き医者にかかり薬を飲むことを第一にして、其の薬の験ある様にと神々に祈るべき事なり」という常識的な意見とか、ただの突拍子もないファンタジーばかりではないところが逆にリアリティがある気がする。

    その他、寅吉が説明のために描いてみせたイラストも豊富で、あと象形文字みたいな変な字とか、すべて篤胤もしくは寅吉の捏造というにはあまりにも設定が詳細で、あっさり嘘と切り捨てられないものがある。とりあえず、信じたほうが面白いことは確か。

    併録されている「勝五郎再生記聞」のほうは、前世の記憶がある子供の話。勝五郎少年は前世で親だった者の名前を覚えており、自分は6歳で死んで、その後さまよっていたら謎の老人に連れられて今の両親のところに来たと。実際にその親という人の村へ問い合わせてみると実在していて子供を亡くしたことも事実で、そこに勝五郎をつれていくと案内されずとも親の家を覚えていたとか。この手の話を蒐集するのが大好きだった篤胤はやっぱり現代なら「ムー」編集長とかになる人だ・・・。

  • だまされたと思って、平田先生と一緒に寅吉くんにだまされ(?)てみよう!
    おもしろいよ!

  • 平田先生の好奇心はすごい!

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    文政三年、浅草観音堂の前にふいに現れた少年寅吉。幼い頃山人(天狗)に連れ去られ、そのもとで生活・修行していたという。この「異界からの帰還者」に江戸の町は沸いた。知識人らの質問に応えて寅吉のもたらす異界情報を記録した本書は、江戸後期社会の多層的な異界関心の集大成である。生れ変り体験の記録『勝五郎再生記聞』を併収。

  • 寅吉は篤胤宅で神のようにあがめられていたわけではなく、篤胤の門人からヤンチャな子供を相手にするようにからかわれています。
    寅吉は門人にだまされて、睾丸は光るものだと信じ込み、暗闇の中で確かめようとします。

  • 神隠しに遭い、仙人のもとで生活していた少年・寅吉が江戸に帰ってきた。国学者・平田篤胤はこの少年を自宅に住まわせ、学者仲間たちと共に異界の様子を探っていく……。めちゃめちゃファンタジックな内容なのに、どうやらノンフィクションらしいという不思議な本。寅吉のもたらす異界の情報は、神やまじないの事から異国の様子、科学的な見解までさまざまで、オモシロすぎです。天真爛漫な寅吉と篤胤やその弟子たちとのやりとり、平凡でドジっ子な寅吉の兄の実は弟想いなトコなんかも楽しいです。

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