- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003310014
作品紹介・あらすじ
卓越した政治手腕をもって崩壊直前の徳川幕府に重きをなし、維新後は海軍卿、枢密顧問官として明治新政府に参与した勝海舟が、その50年に及ぶ政治生活をふりかえって語る幕末明治の体験談。歴史的証言として貴重なことはもちろん、筆録者巌本の筆は海舟の語り口を巧みにうつし、魅力あふれる人柄をいきいきと伝える。読みやすい新訂版。
感想・レビュー・書評
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2018大河ドラマ西郷どん合わせで薩摩藩もの再読キャンペーンを去年から一人で開催していたのだけれど、思ってたほど薩摩関係の本は読んでなかったみたいで、西南戦争に従軍した経歴のある明治政府側の人の自伝などを中心に読み直していたのだけれどそれもすぐネタがつき、それならいっそ勝海舟、というわけで海舟座談ひさびさの再読。
筆録者の巌本善治は女子教育に力を入れていた教育家。彼が発行していた『女学雑誌』誌で連載した勝海舟の明治28年~亡くなる32年までの聞き書きをまとめたのがこの海舟座談。附録として勝さんの親しい人物の談話も収録されています。
座談は年代が逆(明治32年から遡るかたち)で収録されてるのがちょっと混乱するけれど、幕末明治の人物についての回想エピソードも多く、勝自身の話口調ににじみでるご本人の気質のみならず親しく接した人物評などはとても興味深い。
いちばんに西郷さんのことをとても高く評価しており、とにかくべた褒め。いわゆる維新三傑(西郷・大久保・木戸)のことは基本的に評価高く、それ以外はやや小物扱い。龍馬さんのことも褒めてあったけれど、海軍関係でかなり仲良しだったイメージのわりにほんの少ししか語られていなかった。まあ亡くなった時期が早かったせいかもしれないけれど。島津斉彬のことは頻繁に「エライ人だった」と褒めている。
「木戸、大久保、西郷は、さすが、チャーンとしていたよ。どうしてどうして、こンなものではない。それだから、いったのだ。今の奴らは、みンな、その尻馬に乗ったのだもの。(P58)」
「西郷のことは凡人にはわからないよ、こっちは西郷をよく知っているよ、あれは私学校の壮士と情死したのだよ。(P238)」
「近頃では[渡辺]華山(これはなかなかの人物だった)[西郷]南州 [大久保]甲東 [佐久間]象山(学者で、事業はできない) [木戸]孝允 [横井]小楠 [頼]山陽 [島津]斉彬 まだ二人ほどあるつもりだ。(P219)」
「後藤(象次郎)は大名の塩辛にしたようなものだと言ってやるのサ。少しも尻のつかぬ男だ。土佐では、坂本竜馬と岩崎弥太郎の二人だった。(P199)」
上野の西郷さんの銅像を奥さんが似てないと言ったのは有名な話ですが、勝海舟も本書では「どうも出来がよくない。下手のようだナ。」と。「西郷というと、キツ相な貌をしておったように画かぬと人が信じないから、ああ画くがネ、極く優しい顔だったよ。アハハなどと笑ってネ、温和しい人だったよ。(P231)」
慶喜のことは相当嫌いだったみたいで、天璋院と和宮のことは好き、天璋院も慶喜のことは嫌っていたそうで。
「維新の時だって、そう言ったのサ、「あなたの徳で、善い家来を持ったなどと思いなさるな」ッて。第一、御先祖様が、非常な方であるし、御先代様がお若かったが、大層善いお方で、よほど望みを属されていなすった。それがああいう事におなりなすった。私は、それで、コウいう御奉公をするのであります。あなたに奉公するのじゃアありませんッテ。(P115)」
つまり自分が徳川家に尽くしたのは家康が偉かったのと、家茂のことは好きだったからだと慶喜本人に言っちゃってる(笑)
他に当時の人物としては福沢諭吉や新島襄、あと意外なところで田中正造の名前なども出てきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かなり以前に「氷川清話」は読んだことがあるのですが、久しぶりの勝海舟関連の本です。
勝海舟といえば、江戸末期、咸臨丸での渡米、帰国後は軍艦奉行に就任、その後、中核の幕臣として西郷隆盛と会談のうえ江戸城無血開城を実現。明治維新後は、参議・海軍卿・枢密顧問官を歴任し伯爵に叙せられた傑物です。
本書は、晩年、明治28年(1895年)から32年(1899年)にかけて海舟自身が語った体験談を巌本善治氏が筆録したもので、その口調まで写した興味深い著作です。
そこに記されているストレートな政治・社会・人物批評ともいうべき内容は、その視座の高さ・本質を一言で突く鋭さ等、とても刺激に富んでいます。 -
新書文庫
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昔から書店にはあったけれど、よく考えたら読んだことがない。そんな一冊。古本屋で購入。読んだらまた感想書きます。
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(「BOOK」データベースより)
卓越した政治手腕をもって崩壊直前の徳川幕府に重きをなし、維新後は海軍卿、枢密顧問官として明治新政府に参与した勝海舟が、その50年に及ぶ政治生活をふりかえって語る幕末明治の体験談。歴史的証言として貴重なことはもちろん、筆録者巌本の筆は海舟の語り口を巧みにうつし、魅力あふれる人柄をいきいきと伝える。読みやすい新訂版。 -
勝海舟については、西郷隆盛との談判で江戸を無血開城した立役者ということと、咸臨丸の艦長として大平洋を横断したことくらいしか知らなかった。その勝海舟の座談を記録した本があるということで、何が書かれているかと興味を持った。
内容は、晩年の勝海舟の語りを記録したものだが、速記録のようなものではなく、長年の尊崇者が後から記録に起こしたもののようで、どれだけ正確かは分からないが、そこで勝海舟が話しているかのように生々しいのは、その語り口をよく知っている記録者の手に成るものだからだろう。
幕末の話も出てくるが、維新後の話、特に記録が行われた時期に進行中、つまり明治30年代のことも多い。維新後も色々な役回りをこなし、徳川宗家の面倒をよくみたらしい。驚くのは、経済観念がしっかりしているというか、自分や様々な関係者のため、土地を使って収益を確保し、使える金を用意することに結構な労力を割いていること。没落した武士とは発想や行動がだいぶ異なるようだ。
勝海舟の言葉を聞きたかったので、本書の後半に掲載されている、関係者による勝海舟の回想は読むのを省略。 -
世の中の動きや大局、物事の本質を掴む洞察力、それらに対してどうするべきかを組み立てる構想力、緻密な計算など驚くほど優秀な頭脳を持ち、その実現のための実行力、人との交渉力、そうしたことを可能にする胆力 などの精神力も合わせ持った、まさに時代が必要とした人物という印象を受ける。ほんとうにこんな人が実在したのかとさえ思えてくる。
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維新元勲の一人、勝海舟の晩年の話が記録されている。
口語体での記述なので、勝の人柄もわかる。
勝ならではの処世訓はわりと参考になる。
同時に日本社会での身の処し方とは勝ほどの人であれ、このような気遣いをせねばならぬのかと落胆した。
色々と反論はあるだろうが、それが本音である。
「世の中が逆さまになる」というのが変革期の特徴らしい。
身の処し方を考えねば。 -
自分の刀を抜けないように、鞘と柄を縛ったまま過ごしていたというのがすごいですね。
少し意地の悪いところがあり、将軍を偉い人だとは露ほども思っていません。
幕臣の要なのに、慶喜に向かって露骨に馬鹿にしています。
慶喜の前の将軍が好きだったようです。
とても気骨のある人物ですね。
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死ぬまで学を辞めない勝先生に脱帽。
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勝海舟好きなんですよね〜。