新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003310229

感想・レビュー・書評

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  • 再読。福澤諭吉といえば今や一万円札の代名詞。『学問のススメ』を書いた人だというのは一般的に知られているだろうけど、それ以外のことはあまり知られていない気がする。というか、自分も二十数年前に幕末オタクの延長でこの本を読むまでずっと知らずにいた。天保5年、豊前中津藩(今の大分県中津市)の下級武士の次男として大阪(父親の勤務地)で生まれる。ちなみに幕末の有名人で天保5年生まれといえば新選組の近藤勇。坂本龍馬と土方歳三は一つ下の天保6年生まれ。

    本書は明治30年64才のときの口述筆記。もとが口述なので口語文でとても読み易い。子供の頃からお酒が好きだったというのはちょっと驚き。芝居など遊行には興味なく、長じてからも女遊びの類は全くしなかったそうですが、お酒だけは幼少時から大好きでどうもこうもやめられないと(笑)意外な一面。逆に神も仏も子供の頃から一切信じないというのはいかにも現実的で、らしい。それでお稲荷さんなどのご神体を盗んで別の石にすり替えたり、他人が願掛けした内容を盗んできて読んで笑ったりなど、ちょっと罰当たりな悪戯も多々。

    次男の気楽さで19才で長崎へ遊学。藩のエライ人とそりが合わず国に帰らされそうになるが反抗して大阪へ。そこで蘭学者・緒方洪庵の適塾へ入塾。この適塾時代のエピソードも男子校の男子寮みたいなノリで面白い。もちろん勉強も一生懸命しているのだけれど、たとえば諭吉が禁酒を決心して我慢していると、まわりの仲間はなんとか挫折させようと誘惑してくる。あげく、禁酒してるなら代わりに煙草くらい吸えばと勧められまんまと乗ってしまった諭吉、嫌っていた煙草に嵌ってしまい愛煙者に、さらに禁酒も破れて酒は飲むわ煙草は吸うわで余計にダメ人間に。

    そうこうしているうちに藩命で蘭学塾を開くために江戸へ。安政7年(万延元年)、幕府の軍艦・咸臨丸のアメリカ渡航に同乗して、初のアメリカ旅行体験。有名な、可愛いアメリカの女の子(※写真館の娘だったらしい)と一緒に写ってる写真はこのときのもの。帰りにハワイでカメハメハ大王にも会うが野蛮人扱いで悪口しか書いてない(苦笑)半年弱で帰国したら井伊直弼が暗殺されて年号も変わってる・・・。

    しかしその能力を買われた諭吉は幕府の外国方(翻訳局)で採用され幕府お雇いの身に。文久2年には再びヨーロッパへ渡航。約1年後帰国したら、攘夷熱がさらに悪化して西洋帰りの洋学者というだけで攘夷浪人に命を狙われる日々。長州も薩摩も勝手に外国と戦争おっぱじめちゃうし、でも苦情は幕府に持ち込まれるしで、その諸々を翻訳しなくちゃいけない諭吉も大わらわ。そういえば渡欧先で外科手術の見学中に血をみて失神しちゃうエピソードは可愛かった。可愛いなどというと不遜だけれど、諭吉は血が苦手で解剖実験なども逃げ回っていたらしい。もし平気だったら当時蘭学を勉強するのはやはり医者が多かったろうから医者になってたかもね。

    慶応3年、軍艦ストーンウォール号の受け取りでまた半年ばかり渡米、戻ってきて明ければ慶応4年はもう明治元年。この頃に蘭学塾の名前が正式に慶応義塾となる。維新政府からは当然、政府で働かないかとお誘いがしつこくくるが、立身出世に興味がなく権威が大嫌いな諭吉は悉く断り塾に専念。この辺は本当に当時の人としては貴重な潔さ。

    そもそも中津藩は地味な藩ではあるが、幕末時期どこの藩も開明派と保守派で殺し合うようなことをしていた時期に、諭吉に藩内で出世したいという野心があればお殿様に取り入り改革を進めるなどということも不可能ではなかったわけで、そういうことに一切興味がなくただただ自分の勉強だけが大事という諭吉かっこいい。そもそも開国派の諭吉は攘夷浪人が大嫌い、では開国をすすめた幕府の肩を持つかというと門閥主義が大嫌いな上に幕府は実際には攘夷派、つまり勤王攘夷か佐幕攘夷かの違いだけで世の中ほぼ攘夷の時代、どちらの味方でも敵でもない。開国して勉強さしてくれればそれでいいというスタンス。

    幕末の有名人では、実は奥さん同志が遠縁だったという榎本武揚の助命にこっそり裏工作していたエピソードなどは意外だった。長州の大村益次郎、薩摩の寺島宗則などは長崎、適塾時代からの洋学仲間、ただ大村益次郎は長州が攘夷でやかましくなってからは別人のようになっていてショックだったらしい。明治14年の政変では大隈重信の黒幕と誤解されたが潔白を主張。政治的野心のなかったところが福澤諭吉の最大の魅力だと個人的には思う。

    • ノブさん
      お読みになったことあるかもしれませんが、司馬遼太郎の「花神」で大村益次郎の洋学仲間として福澤諭吉も登場します。これがちょっと感じ悪いイヤな奴...
      お読みになったことあるかもしれませんが、司馬遼太郎の「花神」で大村益次郎の洋学仲間として福澤諭吉も登場します。これがちょっと感じ悪いイヤな奴として描写されていて、ひょっとして司馬遼太郎は福澤が嫌いだったのかなあ、と。笑。
      あくまで想像ですが。
      福翁自伝は未読なので、これを機に挑戦してみます。
      2018/04/12
    • yamaitsuさん
      ノブさん、こんにちは(^o^)
      司馬遼太郎の「花神」随分昔にですが読みました!福澤諭吉も登場していたのですね、もうあまりよく覚えていなかっ...
      ノブさん、こんにちは(^o^)
      司馬遼太郎の「花神」随分昔にですが読みました!福澤諭吉も登場していたのですね、もうあまりよく覚えていなかったです(^_^;)

      司馬さんはちょっと変人で極端なキャラクターのほうが好きな気がするので(大村益次郎はもちろん)要領が良く無難に生き延びた福澤諭吉のようなタイプはあまり好きではないかもしれませんね。
      2018/04/13
  • 時代の雰囲気が伝わってきて、とても面白い本です。読んでいて福沢さんが話しているように引き込まれます。陽だまりの木の中の元ネタとか結構確認できるので、手塚ファンにも楽しめると思う。
    思いの外幸運も重なって慶應大学は大きな学校になる事ができたんだなと感じる。

  • 本書で興味をもった点は3点。

    ①目的なしの勉強
    ここでは目的を持たずして勉強したことこそ仕合せであったと述べている。何々を成し遂げたいが故に勉強に励んでしまうと却って身構えてしまい修学することができないとのことで、身軽な状態で学ぶからこそ結果が出たとこの時は述べているようだ。

    ②一国の独立は国民の独立心から
    別の本で「国を支えて、国に頼らず」という言葉を福沢伝に付け加えていたが、まさにそのことを福沢自信が述べている。こういった心持を持っていたからこそ、教育者という身分であり続け、政治社会に足を突っ込まなかったようである。

    ③海臨丸での米国航海から
    米国渡航、欧州渡航についての感想を述べており、自分自身はこの点がとても興味深く読めた。当時の日本人がアメリカでのもてなしや風情に驚いている姿が見て取れが、これが後々の英語教育を推し進める源流になったのかと思うと、その経験たるや想像を超えたものなのだろうと。

  • *推薦者 (国教) N.W
    *推薦文 「一万円札」の福沢諭吉が生きた江戸末期から明治は西洋列強の動きを顧慮せずには何事も立ち行かない時代でした。福沢の生き方と日本の動向がこの伝記には反映しています。同様に,現代日本の課題「グローバル化対応」・「グローバル人材」・「国際コミュニケーション」能力の実践をここに読み取ることができると考えます。
    *所蔵情報 http://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00091444&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 私がフランクリン手帳に忍ばせている“人生の100のリスト”の32番目には、

    「学校(大学)を作る」

    という夢が書いてあります。

    学生が1万人もいるようなマンモス大学とまでいかなくても、自分の信念や行き方が自分の死後も教育理念という形で後世に受け継がれ、それによって国家や人類の永続的な発展に寄与できれば、こんなにすばらしいことはないと思うからです。

    しかし、我ながら途方も無さ過ぎる夢なので、実現のためにまず何をやればいいかすら想像がつきません。

    そこで、現在の有名大学を作った人達は、何を思い、どのように学校を育てていったのかを知りたいと思ったのが、この本を読むきっかけとなりました。

    慶應大学の一般教養課程では、この本を使った授業も行われていると聞いたことがあります。

    残念ながら慶應義塾が成長する過程についての記述は少なかったのですが、福沢が日本の文明開化を推進しようとしたわけ、そしてその手段として彼がライフワークに選んだ学校運営・翻訳業においてどのような工夫をしたのかが描かれています。

    そんな福沢の生き様から、やはり人間が偉業を成し遂げる原動力は、大志なのだと再認識しました。

    福沢自身の口述を速記したものがベースになっているので、文章が非常に生き生きとしているのが特徴です。

  • 晩年の福沢諭吉が自分の人生を振り返って語ったことを文章にしたもの。ずっと積読本になっていたのを山から引っ張り出してきた。古文のような読みにくいものだと思っていたけれど、意外なほど読みやすい。

    慶應義塾を創った以外に何をした人か今ひとつ分かってなかったけれど、緒方洪庵の適塾にいて、オランダ語をマスターした後、横浜でオランダ語は通用しない、世界は英語だと知り、今度は苦労して英語をマスターする。咸臨丸に乗ってアメリカに行く。政治には関わらず、塾を通した教育の人だった。

    若い頃の恥ずかしい話なども惜しげもなく披露してくれており、何というか気持ちのいい読書ができた。時代の雰囲気もよく伝わってきた。

  • スイスイ読めて面白いし納得できる。

    とにかく酒を飲みに飲んで、いろいろ言い訳かましながら煙草も吸い始め、
    神社にいたずらしても特に不幸がないやら、偽りの遊女の手紙を仲間に送りつけたり、何せ派手にやってますわ。
    現代の慶應生に通じるものが大いにある。

    その上で勉強熱心なのが凄い。
    それだけ酒を飲んでるけど、塾ではめちゃくちゃ勉強してる。蘭訳が通じないとなるとすぐ英語勉強して、翻訳を生業にしている。必要と思ったらすぐに本気で勉強してる、そこのメリハリの凄まじさが読み取れる。そして必要な勉強(所謂実学)を選んでしている。だからといい、金儲けのためや出世のためではなく、実直に勉強できる環境だったのがよかったと書いてて、その辺は大いに参考になる。上野戦争の時に慶應義塾だけは授業をしていたのは有名な話だが、その精神の根っこが辿れるので面白い。

    あとは処世術じゃないけど、自分に正直なところが素晴らしい。嫌な仕事は断る。政治参加も断る。その辺りの軸がありつつ物事を取捨選択してる生き方は凄いし、羨ましくもある。

    そういう意味でも、面白い物語ってだけでなく、参考書チックな部分があって非常に読み応えあり。

  • 福沢諭吉晩年の回想録。

    この人の活動の熱源は下級武士に生まれた故の門閥、封建制度が原因の差別体験に他ならない(差別という言い方はあれだが、身分が全てで、身分が上の者からは能力に関係なく蔑まれる社会)。

    自由というものの大切さを改めて感じるとともに、現代社会も「上級国民」なる言葉が巷間で取り沙汰されるように、長年の封建制度は真には抜けきっていないのかとも感じてしまう(当時に比べると遥かに能力によって色々な地位につけるが、親の社会経済的地位が子の能力に及ぼす影響力は最近ますます強まっているように感じる)。

    その他、原体験の強さのなせる業か、意固地ともいえるほどの独立心の旺盛さはなかなか常人がまねできないもの。
    慶應義塾の創始者だが、現在の慶應大にどの程度、福翁の独立心が引き継がれているのやら。

    その他、若い頃は結構無茶をしているなぁ、と感じた(橋の上から、屋形船に皿を投げた話など)。
    酒好きの程度も、聞いたことがないレベル(酒を飲んでも学問ができるのが羨ましいが)。

  • 全く堅苦しい本ではなく、読みながらクスクス笑える。福沢諭吉の人生を追いながら彼の処世術や教訓を学べる。

    一見無鉄砲でだらしのないようだが、確たる信念を持ち、絶えず好奇心を持つ勤勉な姿勢を生涯にわたって崩していない。このメリハリこそが当時としては名誉ある洋行メンバーとして選ばれ、数々の名著を残した所以だろう。

  • 福沢諭吉先生の自伝。若い頃はまあ血気盛んな、どこにでもいるような若者でも在り、意外といたずらっ子だったのだなーとびっくりした…明治維新のという激動の時代の中でも、かなりマイペースで、しかししっかりとした信念を持って慶應義塾を建てられたことを知った。実は学問のすすめをまだ読んでいないので、なる早で読んでみたいと思う。福沢先生の意外な一面がたくさん描かれていてとても面白い!

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著者プロフィール

1935~1901年。豊前中津藩(現・大分県中津市)下級藩士の次男として生れる。19歳の時、長崎に蘭学修行におもむく。その後、大阪で適塾(蘭方医、緒方洪庵の塾)に入塾。1858年、江戸で蘭学塾(のちの慶應義塾)を開く。その後、幕府の使節団の一員として、3度にわたって欧米を視察。維新後は、民間人の立場で、教育と民衆啓蒙の著述に従事し、人々に大きな影響を与えた。特に『学問のすすめ』は、17冊の小冊子で、各編約20万部、合計で340万部も売れた大ベストセラー。その他の著書に『西洋事情』『文明論之概略』『福翁自伝』など。

「2010年 『独立のすすめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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