代表的日本人 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 鈴木 範久 
  • 岩波書店
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レビュー : 222
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003311936

感想・レビュー・書評

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  • 『代表的日本人』は内村鑑三が、欧米に対して日本人も歴史があり、徳があり、すでにして先進国としての資格を備えているのだと示すために英語で書かれたものである。新渡戸稲造『武士道』、岡倉天心『茶の本』とともに明治期に日本人が英語で日本文化を紹介した3大名著と言われている。

    内村鑑三は、代表的日本人として、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、藤江藤樹、日蓮上人の5名を挙げている。
    ここで内村が描いた人物像すべてに共通するのは、その心の高潔さ、利他の心と広い心である。熱心なキリスト教信者となった内村は、日本古来よりキリスト教にある美徳が存在していたことを示す強い内在的動機があった。特に日蓮を選んだのは、西洋におけるルータやカルビンによる宗教改革が、すでに日本でも日蓮によって行われていたことを示すために必要な人選であったと考えられている。

    5人の偉人はいずれも敬すべきリーダーであるが、一方、それぞれの人物にはそれぞれの特徴があり面白い。

    西郷隆盛は、豪快で大局観を持ったカリスマ的リーダーであったが、情に脆く最後にはそのことが仇にもなったところもある何か大きなことを始めるために必要な人物で、明治維新の時代に西郷を擁くことができたのは幸運であったのかもしれない。京セラ創始者であり名経営者の稲盛氏が西郷が好んで使った「敬天愛人」を社是として掲げている。
    上杉鷹山は、米沢藩の建て直しに尽力したが、単なるコスト削減だけではなく、実力本位での組織改正、人心の掌握に加えて、次代の産業振興(養蚕など)やインフラ整備も行った。守旧派によるクーデターを民を味方につけること(「民の声は神の声」)と首謀者を厳罰に処したことによって乗り越えたところも有事の際のリーダーとして有能であった。「成せばなる 成さねばならぬ 何事も 成らぬは人の 成さぬ成けり」という言葉でも有名な通り、事物をなすにあたり、創意工夫をもって実現する力を持っていた。
    二宮尊徳は、農村改革に力を発揮したが、細かいところから確実に改革を行った。倹約を規とし、率先垂範してことにあたった。短期敵に確実に改善を重ねるときにその力を発揮するタイプのリーダーのように思われる。「道徳を忘れた経済は、 罪悪である。経済を忘れた道徳は、 寝言である」や「誠実にして、はじめて禍を福に変えることができる。術策は役に立たない」というとき、誠実さを何より優先して統制を取っていたことがうかがえる。
    中江藤樹は、近江の聖人と呼ばれ、「積善」を旨として敬意を集め、彼を中心としたコミュニティを築いた。今でいうとコンプライアンスや顧客中心主義の徹底といった組織文化を根付かせるために必要なタイプの人材なのかもしれない。「人生の目的は利得ではない。正直である、正義である」というとき、人生において何を優先するべきなのかを考えさせる。
    日蓮は、その情熱をもって日蓮宗を一大宗教勢力にし、「南無妙法蓮華経」という念仏の浸透に力を注いだ。闘争力があり、外部に対して対抗する際に頼りになるリーダーなのかもしれない。


    内村は34歳のときにこの本を書いている。
    この時代において、西欧に対して自国を背負ってこの本を英語で出版したことを考えると、その若さに感服する。明治の時代は何かやはり特別な時代であったのだなと思う。

    ※ 研修でこの古典を今更ながら読むことになったのだが、古典はやはりその意義はあるのだなと感じたところである。

  • 挙げられている人がどんな人かを知りたいのではなく、内村鑑三がなぜこの人たちをリストアップしたのか、そういう目線で捉える必要がある。

    西郷さんなんて、まさに非戦に転向する前の内村さんの考えがありありと分かるし、日蓮を挙げるっていうのも特徴的だなあ、と思った。

  • 日清戦争の頃、西洋との関わりが進む日本。そういう時代に英語で書かれて海外で出版された内村鑑三の作品。

    いきなり最初の西郷さんのところでは、あまりに彼を美化しすぎていて、かの征韓論についても、征服の野心ではなく世界平和のためのものであったと肯定的に書かれているのには、正直少し引いてしまいました。もちろん西郷さんの人格について書かれた箇所には納得でしたけど。

    その後に出てくる、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹については、彼らの謙虚で徳を重んじる生き方に大いに感銘を受け、最期の日蓮では、その革命者としての強さ、激しさに驚き、最後まで一気に読んでしまいました。

    これを読んだ当時の西欧の人々は、彼らの功利主義とは反対の生き方にさぞかし驚いたことでしょうね。今読むと、日本では既に彼らのような生き様を見ることは少なくなっているせいか、かえってどこか他の国の話のように感じてしまいます。それだけに、心の深いところに喝を入れられたような気持ちになった一冊でした。

  • 敬虔なキリスト教徒であった内村鑑三が、海外のキリスト教徒に向けて英語で著した本。
    「道徳」という意味で著者の根底に流れている、ゆるぎない日本人としての魂と誇りが感じられます。
    5人の人物が取り上げられているのですが、どの話も「なんて誇らしいんだ」という感情を持って紹介されているのが、泣きたくなるような想いです。


    こんな気持ちで日本を語れる日本人は、現代にいるでしょうか。
    日本に残された叡智から、学ぶべきだと感じました。


    個人的には西郷隆盛と二宮尊徳が印象的でした。

  • まず、この本が内村鑑三の英文著作だということに驚き。逆輸入ですね!

    西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人。
    どの人も、日本の文化や思想に多大なる影響を与えてきた方です。

    それぞれが自らの思想を持ち、その時代その時代で影響された人はいるものの、
    根本的な考えは不変なのだろうと感じました。

    この人たちが今の日本を作ってきたのか、と思い返してみると、
    今の私たちには当事者意識が不足しているのでは、と思います。
    この人たちは、自分がリーダーとなって日本を引っ張ってきてくれました。
    犠牲という言葉には語弊があるかもしれませんが、
    自分を犠牲にして日本のために行動する、そんな意識は今とても低いと感じます。

    自戒の意を込めて記します。

  • 西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人という5人の偉人の生涯が描かれている。その逸話から日本人の精神性、日本人の原点をもう一度考え直して、現代の日本人に欠けているものを再考するのにうってつけの良書。

  • 日本と欧米、基督者と非基督者。
    それらの中間者として、両者に相互の魅力を伝える使命を感じていたのだろうという気持ちが、生々しく感じられた。
    中間者、橋渡しを使命とする人は、気高く美しく、悲しい。
    自分が夢見た世界の実現に貢献しながら、実現した世界に浴することが出来ないと、初めから分かっているから。

    日本の人格者を欧米に向けて紹介することで、
    日本の素晴しさをアピールする内容。
    日本人も、世界大戦までは、自国に対する健全な誇りを、
    当たり前に持ち得ていた。

    そんな日本の「健全な愛国心」はどんなものだったのかを、
    憧憬をこめて鑑賞することが出来る本。

  • 中江藤樹、素敵。

  • 内村先生の勇気と志が胸に沁みる。人生の航路を示す一冊である。この本に出会えたのも天命か。

  • かなり前に書かれた本なので、時代錯誤と感じる部分がみうけられるのは仕方ないけど、エッセンスは今に通じるところが多々あると思う。

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