帝国主義 (岩波文庫 青 125-1)

  • 岩波書店
3.48
  • (3)
  • (8)
  • (15)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 157
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003312513

作品紹介・あらすじ

「帝国主義はいわゆる愛国心を経となし、いわゆる軍国主義を緯となして、もって織り成せるの政策にあらずや」。明治34年に刊行された本書で、幸徳秋水(1871‐1911)は帝国主義の本質を喝破。該博な知識を駆使し、レーニン、ホブスンに先駆けて複雑な帝国主義の構造をえぐり出した本書の先見性は、今なお光輝を失わない。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 幸徳秋水 著『帝国主義』岩波文庫

    120年前、明治34年(1901年)に海外情勢や世界史に関する豊富な知見を踏まえて、当時の明治政府がしゃかりきになって列強と肩を並べるべく邁進していた軍国主義、帝国主義を分析し批判した秋水の初の著作です。軍国主義、帝国主義の前提となる愛国主義なんてものはもう徹底的にこき下ろしています。

    彼は土佐出身で中江兆民の弟子。内村鑑三の盟友。同じく土佐出身の林有造や板垣退助の薫陶を授かったジャーナリストです。ゴシップ記事を書いて稼いでいた時代もあったというのですから興味深いですね。書き方も内村鑑三の陶酔風味よりも檄文型の苛烈さがあってわたしは好みでした。

    アナキストであり社会主義者の秋水ですが、『帝国主義』においてはそのあたりの主義主張は強く感じませんでした。ただひたすら「非戦論」を貫いています。ですのでわたしにとっては非常に飲み込みやすい本でした。内村鑑三といえども『代表的日本人』では西郷隆盛の伏見の戦闘における非情な指揮に礼賛を捧げています。ただのブラック上司によるやりがい搾取なんですが。蛇足のついでですが、あの田中正造でさえも議会における自分達のポジションを強化する目的で日清戦争を肯定しています。

    話が少しそれましたが、わたしは明治という時代を肯定的に捉えることもしていませんし『坂の上の雲』的史観を無邪気に楽しんでよいとも考えていません。

    明治維新において武闘派として討幕に尽力した武士がたくさんいたにも関わらず、明治政府立ち上げでは薩長に干されそれほど多くの要職に就くことがなかった土佐藩士。わたしは脱藩した坂本龍馬なんかよりもよっぽど切腹に追い込まれた武市半平太に思い入れが強いです。

    そんな土佐を土壌に、自由民権運動というリベラリズムが芽吹いたというのは本当に興味深い歴史だと思うのです。

    そして、幸徳秋水『帝国主義』は明治政府に発禁とされ、本人も政府の弾圧による死刑。有名な大逆事件です。

    その後、言論弾圧に成功した日本政府はいくつかの戦争の果てに太平洋戦争に突入します。

    この『帝国主義』はGHQ占領下でも復刊は叶わず、ようやく40年ぶりに岩波文庫から公刊されることになったのは1952年のことだそうです。

    1901年に初版が発行され、復活するのが1952年。その間に日本が参戦した近現代における戦争の全てが起きているというのはあながち偶然ではないと思われます。

  • 漢文調で書かれているものの読みやすい文だなと思いながら読んでいた。しかし、単語や使っている漢字が難しいものが多く、途中何度か中断し、やっと読み終わった。
    21世紀になっても、秋水の指摘した20世紀の怪物、帝国主義は蔓延っている。まさに現代は、自由や平等がなく、生産分配の公平もなく、百鬼夜行、黒闇々たる地獄な状態ですね。

  • 今も昔も大きな声で言われるスローガンは、胡散臭い。真面目に世界平和の実現のためにできることをやっていく…。大逆事件のことをもっとリアルに理解する必要があると感じた。

  • ゼミで読んだけど印象うすい。

  • 2011.06.24-07.13

  • 幸徳秋水は、今から139年前の1871年11月5日に高知県四万十市で生まれた明治時代の思想家・ジャーナリスト。

    社会主義思想の持ち主だというだけで、あの大逆事件によって明治天皇暗殺を計画したというまったくでっち上げの罪で虐殺された12人のうちのひとりですが、1911年(明治44年)1月24日という処刑された日を私たちは忘れません。

    わずか100年前には、反天皇性という思想心情を持つことはイコール死を意味したということをけっして忘れません。

    歴史とは、ただ漫然と長い時間が過ぎて現代に到ったのではなく、たくさんの理不尽に殺された犠牲者の屍の山が積み重なって出来たのだということを、けっして忘れてはならないと思います。

    帝国主義論は、1917年に世に出たウラジミール・イリイチ・レーニンの『資本主義の最高段階としての帝国主義』があまりにも有名ですが、それに影響を与えたといわれるイギリスの経済学者ジョン・アトキンソン・ボブソンの『帝国主義論』が出たのが1902年ですから、1901年に出されたこの幸徳秋水の著作が、どれだけ世界的にも早い時期の論考だったか、また内容的にも優れたものだったかはあまり知られていません。

    私は、独占金融資本論と帝国主義論はとても重要な認識で、現代に生きる者としての必需品だという意識から、1927年から37年ころの講座派と労農派の日本資本主義論争なども含めて、できるだけ関連した本を読むように心掛けてきました。

    幸徳秋水のこの著作は、中央公論社版の『日本の名著44 幸徳秋水』の中に「二十世紀の怪物 帝国主義」というタイトルで入っているものを読みました。

    それまで明治時代に書かれたものは、好きな樋口一葉でさえ漢文調でむずかしいということで、安直に松浦理英子の現代語訳を読んできましたが、この幸徳秋水の格調高い文章に出会ってから、感激して心改め現物に接するようになりました。

    「彼等は戦争の罪悪にして且つ害毒なることを知れり、彼等は可及的之を避けんと希(ねが)はざるはなし。彼等は平和と博愛の、正義にして且つ福利なることを知れり、彼等は可及的速に之が実現を望まざるはなし。而かも何ぞ断々乎として其戦争に対する準備を廃して、以て平和と博愛の福利を享けざるや。」

    ・・もう少し続けたいのに、馬力がないので中途半端なままで放置せざるを得ません。

  • 私には敷居が高かった。

全7件中 1 - 7件を表示

幸徳秋水の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×