特命全権大使 米欧回覧実記1 (岩波文庫 青141-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314111

感想・レビュー・書評

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  • 一般流布を主目的とし、公益的な面を色濃く反映した岩倉遣欧使節の報告書。本巻は米国編。微に入り細に亘り叙述。テーマも農・工・鉱・鉄道・橋梁等の技術・都市計画・美術等の文芸・教育・米国史等幅広。黒人奴隷は兎も角、モルモン教弾圧まで記した点は驚き。が、読みにくい。報告書的な数字の羅列、擬古文的片仮名交り文・現代に無い独特の熟語、玻瓈(ガラス)等の現代では凡そ見かけない漢字に加え、米国固有名詞の当て字に困惑。華盛頓・新約克・聖路易・加利福尼・尼哇達・費拉特費(地名)/密士失比・落機/希臘/林根・苟白得博士(人)。
    とまぁ、全然読めない(振り仮名付も多いが、つっかえてしまう)。しかも、米国の地勢と地理に精通していた方が読みやすいのは間違いない(当て字は判らずとも)。とはいえ、ここまで詳細に書けば記録としては間違いなく一級品。1977年刊行(底本1880年)。

  • みなさん日本史で勉強されてご存知だと思いますが、明治の岩倉使節団の欧米見聞報告書の現代語訳です。いずれ留学しようと思っている方はぜひこれを読んでから出かけてください。頭の中が好奇心全開の留学モードになります。拾い読みOKです。これを読んでから岩波文庫(請求記号:080/la/141、リベラルアーツ資料コーナーにもあります)の漢文調の原文にチャレンジしましょう。英語翻訳版もあるのでこれで英語の勉強もできます(現代語訳の上の棚に並んでいます)。

  • 2月になって文庫本を手に、読みはじめている.中学の歴史、高校日本史の教科書にも答唱する使節団の公式報告書というべきか.
     
     初巻はアメリカ編.
     使節団がなぜ最初の訪問国をアメリカに選んだのか.航路事情ということでもあるまい.案内人の米国人が同行している.<ペリー使節に対する返礼>を大儀としてるのか?、そこを読み取りたい.

     学制・鉄道・鉱産 
     渡泊22日(明治4年11月~).その行程は省略されている.報告は最初に国論全体、つぎに訪問地.
     国論総体で注目は、1)集合団体型学校制度の普及、2)鉄道輸送網、速度より網目、3)鉱産資源の豊富さ.

     徳川の世に本邦の金銀は海外流出.
     その知識はあったのであろうが、金銀山の豊富さに目をみはる箇所が.随所.長州閥二世は、本書を読んだか.国力の違いは明白.そこがまず、開示される.

  • 岩倉具視を特命全権大使とする訪欧米団は明治4年(1871)11月10日に横浜を発ち、アメリカに向かう。目的は江戸時代に結んだ不平等条約の改正のための下準備とそのためには外国の法制度を知ることが必要である。当初は大隈重信の発案の大隈使節団構想であったが、外国との交渉は内政の主導権に関わることから大隈を支持した太政大臣三条実美に対抗し岩倉と大久保利通は木戸孝允と計り、西郷隆盛、板垣退助らを説得し岩倉、木戸孝允、大久保利通ら薩長連合の指導者に対外的な外交交渉に慣れている旧幕臣を含めた使節団を派遣させることに成功した。

    明治4年廃藩置県後の新政府の人員は以下のようになっている。太政大臣三条(34)、右大臣兼外務卿岩倉(47)、参議西郷(43)木戸(39)板垣(34)大隈(33)、大蔵卿大久保(42)等。留守政府の西郷等とは廃藩置県の実効をあげ出来るだけ新規の改正を避けるという約定を作ったが、留守政府は陸軍省・海軍省・近衛兵を設置し徴兵令を布告、西郷が陸軍大将を兼任している。また鎖国中の朝鮮政府が政体の変わった日本の国書を形式が異なると拒絶したためー140年前からこういう関係なのだー武力征伐での開国いわゆる征韓論の板垣と、派兵には反対し自ら全権大使として訪朝すると一旦はまとめ、岩倉使節団の帰国を待つ西郷だったが、欧米を”見た”使節団は内政と国力増強を優先して訪朝を否決、下野した西郷、板倉から西南戦争と自由民権運動が生まれていくことになる。

    使節団は岩倉大使、副使に木戸、大隈、工部大輔の伊藤博文(31)外務小輔の山口尚芳を初め46名、平均年齢30才前後で最年少は18才と非常に若い。岩倉はこの実記の著者久米邦武(33)と現地参加の書記官畠山義成を常に同行させ記録を残させた。使節団の正式資料としては大使事務書目27冊と理事官視察官取調書目41冊があるがそれとは別に回覧実記全100巻5編を久米に編纂させ明治11年に発売させた。これは一般向けの報告書であり、欧米に関する最新の百科辞典であり当時の政府の考えを示すマニュフェストでもあると言える。また貿易や産業の利益構造にも思索は及び日本で最初の欧米市場のマーケティング資料でもある。

    使節団には5か条の御誓文に関わった由利公正や東久世通禧もいて、ワシントン滞在中に思い出した木戸は御誓文を再発見し立憲政治の出発点として見直されることになる。随員18名、留学生43名には自由民権運動の中江兆民、津田梅子や山川捨松など女性4名、ハーヴァードでローズヴェルトの知己を得後にポーツマス条約で奔走する金子堅太郎、MITで鉱山学を学び三井三池炭鉱をドル箱に変えた団琢磨、大久保の息子で長女が吉田茂に嫁ぎ、ひ孫が麻生太郎と武見敬三の牧野信顕、現地参加の通訳新島襄などもいる。

    一行はサンフランシスコからロッキーを越えシカゴ、フィラデルフィヤ、ワシントン、ニューヨークと東に向かい各地の人口動態、産業、歴史、自然環境など事細かに記録している。水銀を使った金銀の精錬や銅板印刷、力織機、紙幣の印刷などかなり技術的な内容も正確に記載され久米の教養の高さには驚かされる。

    基本的には淡々と事実を書き連ねる久米だがロッキーを越えユタからネブラスカ州オマハに入ったころの感想には熱い思いが見える。「世界の財宝は貨財ではなく物力であり、国力の元は人口にある。」当時のアメリカの人口は4000万人でGDPは1990年の購買力平価換算で1000億$、対する日本は人口は3400万人と欧米主要国並だがGDP250億$だった。それでもGDPはスペインより高く、人口が10倍の清もGDPは世界最大で1872億$だが一人当たりでは日本の方が高い。アメリカは移民と黒人奴隷で国力を増強させているのは明らかだが「けだし不教の民は使い難く、無能の民は用を成さず、不規則の事業は効をみず、民力の多きも、その至宝となる価値を生むためにはどうして漫然と希望するだけでできようか」高尚な学問より基礎教育だ、米国の基礎教育はキリスト教の信仰が元になっている。しかし、東洋では上流階級は高尚な空論か浮ついた文芸に走り、中流は金と賭博に走る。

    アメリカについては豊かな土地に自主独立不覊の精神あふれる移民を宗教を元にした規律でまとめているのがその隆盛の元という見立てだが、選挙制度については最上の俊才を集めることは出来ず、多数決では上策ではなく下策に落ち入るポピュリズムの限界を指摘している。

    それにしても岩波版は旧仮名遣いで読むには辛い。読点が多くリズミカルな文体なので慣れれば何とかなるがやはり頭には入りにくい。

  • 古い字体にカタカナ表記なので、そのまま全部読むのは大変苦労する。なので、米欧の旅程表を参照しながら、気になったところ、興味を持った所を読むという読み方がお勧め。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)35
    日本近現代史
    日本の近代は明治の指導者たちのこの一大見学旅行からはじまった。

  • 明治4年から明治6年まで海外文化視察の名目で日本を発った男たちがいた。そう、ごぞんじ──特命全権大使・岩倉使節団である。<br><br>
    大使随行(実質は書記官?)久米邦武の速記した膨大な海外視察データ(100冊にもおよぶ!)『米欧回覧実記』を、コンパクトに文庫本5冊に凝集して岩波文庫さまが出してくださった<br>(こんなマニアックな本、誰が買うんでしょうねええ?!ま、わたしのようなオタク歴史マニアが買うんだろうな!岩波書店ってホント無欲っていうか商売欲なさすぎ!でも愛してる。)<br><br>工場や施設の見学中に見聞した内容だけでなく、時に触れて自分なりの感想まで書くという余裕の離れワザ。久米邦武のおそるべき筆記スピードが想像せられる。

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著者プロフィール

1839年(天保10)、肥前国、佐賀藩士の家に生まれる。藩校弘道館、昌平坂学問書に学んだ後、明治新政府に出仕。岩倉使節団に記録編纂係りとして随行し『特命全権大使 米欧回覧実記』5冊を編纂。後、歴史学者として帝國大学等で教鞭をとり、近代的実証史学、古文書学の領域を確立した。1931年(昭和6)没。

「2018年 『現代語縮訳 特命全権大使 米欧回覧実記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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