特命全権大使 米欧回覧実記 (4) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1980年8月16日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314142

特命全権大使 米欧回覧実記 (4) (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 岩倉遣欧使節団報告書。4巻/全5巻。ロシア、北ゲルマン、デンマーク、スウェーデン・ノルウェー、オーストリア、イタリアが対象。ああ読みにくい、難しい、時間がかかる……。

  • 第四巻の舞台はまだ雪の解けぬロシアに始まり成立したばかりのドイツ帝国ーこの本では北日耳曼(German)ーを通過しながらデンマーク、スウェーデンのストックホルムへ。またドイツを南下してイタリアを下り万博開催中のオーストリアウイーンまで。

    江戸時代からロシアが怖れられていたのは文化元年(1804)長崎でのロシア軍船が撃った一発の祝砲に始まる。当時の日本では英仏はオランダ同様の商業国で日墺(ドイツとオーストリア、この本では国名で日はドイツを表すのですこしややこしい)が争いロシアがヨーロッパ最大最強というのが一般的な認識だった。実際に来てみるとロシアはトルコやドイツという強国に面し国内でもポーランド、フィンランドは専制に不満を抱いている。しかもアラスカをアメリカに売ったばかりでもある。形勢を見るにロシアがすぐに日本を攻めそうにもないし日本がロシアを攻めるなんて話もない。「もし親睦を持って相交われば、欧州各国みな兄弟なり。そもそも各国に政略を巡らすことから言えば、親交を結ぶ相手は英仏なのか、ロシアなのか。」

    ロシアは欧州第一の農産物輸出国でシベリヤの鉱産にも富んでいる。しかし商船の数はバルト海ではデンマークほどしかなくイギリス、ドイツの商船頼みになっている。これはロシアの権力構造が皇帝と貴族に握られているため国内に健全な商業が育たなかったからだ。ロシアの土地はほぼ皇帝と貴族のもので農民は隷属させられていた。1861年に6360万人の農民の内2223万人は皇帝に2200万人は貴族に属し11万人足らずの貴族がロシアの国土を所有し、アメリカの南北戦争と同じ時期に農地解放が行われた際には借金を課せられた。所得が6ルーブルの土地に対し原価を100ルーブルとしてそれを払うのが農地解放のしくみだった。20ルーブルは自分で用意し80ルーブルは政府が肩代わりする代わりに49年に渡って元利返済してやっと自分の土地になる。ロシア皇室に金銀財宝があふれていたのは農民からの搾取によるもので「東洋人種は情欲の念薄く、道徳の政化に服し、君主は勤勉と倹約」と書いているが本当か?しかしこの貴族による収奪が自由民権運動の原動力になったと言うのはそうなのだろう。宗教についてもロシア正教では皇帝が法王も兼ねていた。日本から見ればキリスト教も人を使うための方便に見えた様だ。

    スウェーデンはノルウェーと条約により一人の王による統治としていた。ノルウェーはデンマークに属していたがナポレオン戦争でフランスと同盟していたためキール条約によりスウェーデンに割譲された。ノルウェー人はこれに承服せずデンマーク王子を戴冠して独立しようとしたがスウェーデンに破れ合併の条約を結ばされた。少し前にはロシアとの戦争に負けたスウェーデンがフィンランドを割譲しているがこの後200年スウェーデンは紛争に巻き込まれていない。スカンジナビア半島は緯度の割には温和でシベリアだと北緯60度より北では収穫がないのにノルウェーだと北緯70度まで収穫がある。例えば南緯70度は南極大陸だからどれほどの緯度かわかるだろう。ノルウェーのハムノベルト(おそらく西海最北の街のひとつで不凍港のハンメルフェストのこと)ではわずか8週間の夏の間に麦をつくる。スウェーデンでは造船も盛んで英仏の様な巨大な造船所ではないが簡易な設備で小型船を多く造っている。

    イタリアに関してはローマ帝国の栄光を思いながら当時の日本については自信を持った発言をしている。日本は古来より発明には乏しかったが中国や朝鮮から技術を導入し今はこれを越えている。東洋に古国多いといっても開化が進んでいるのは日本だけだと。まだ明治の初めにしてこれほどの自身を持っていた。そして更に努力すれば今は見るべきもののないところも他日は変わるだろうと。そしてイタリアについてはけっこう評価は厳しい。フィレンツェ、ローマ、ナポリと南に下るに従い貧民が増え、ナポリについては晴れた日は埃っぽく臭気が鼻を突き欧米12カ国でこんなに不潔で人民が怠惰で貧しい子供の多い街はなく上海と変わらないと。「ナポリを見てから死ね」といわれるほどの美しい土地ではあってもフランス、オーストリア、スペインに領有され王家の圧政、教門の弊害、および封建の余毒を最も受けた土地であり最近ようやく政府が人民とともに自由を遂げようと計ってはいるが人民は萎縮しイタリア政府は困難な時期にかかっているという。ローマ時代に造られ今も残る水道、それに対してその栄光の影もないナポリの人民、そしてこれから富国を目指す日本がどうあるべきかを重ね合わせたのだろう。

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