鎖国〈上〉―日本の悲劇 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314432

感想・レビュー・書評

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  • 1982年刊(初出1950年)。本書の問題意識は、西欧に遅れた日本近代化の要因を近世江戸期の鎖国政策にあるとみて、その政策対応の日欧の差異を分析していく。ただ、上巻は前座で、鎖国論は皆無。すなわち①大航海時代を招来した要因分析のために、西欧の中世後期までの史的展開の解説、②大航海時代(葡とアラブ・印との抗争/西の米大陸侵略)の詳細模様、③近世の前提としての中世後期における日本の実情、④キリスト教の日本布教を解説する。実に詳細。また、西欧史との比較や西欧史料から日本の実像を分析する手法は当時斬新だったはず。
    という意味で、全然古びていない。確かに、近世江戸期を、近代と完全に断絶したものと見る解釈は、清国・韓国との比較から見て、古いなという気はする。つまり江戸後期には近代の萌芽が胚胎していたと見ており、著者の見解に諸手を挙げて賛成するわけではない。しかし、江戸期封建制の意味内容を、その前史と西欧史との進展比較から見ようとする方法論は決して古びておらず、むしろ、著者の革新性を物語るものと言えるのではないか。
    しかも、詳述されている内容は、個人的には新奇なことかが多い。特に大航海時代の西・葡の侵略、海外進出をここまで書いているのは余りないのではないか、とも感じる。日本の中世後期における著者の一揆論は、個人的に読破書籍がまだまだ多くなく、何とも言い難いが、教科書的な解説を詳細に展開しているようにも思え、収穫ある内容であった。

  • ふつうは下読み終わってからだけど、長丁場になりそうなので。

    鎖国と題うっているが、上巻4分の3は西欧の大航海時代の話。
    ゲルマン民族の流入とイスラム勢力の台東で陸地に押し込められたヨーロッパ。
    十字軍からようやく外へベクトルが向き始める。
    15世紀後半から16世紀にかけ、スペイン・ポルトガルを中心に、インド洋から東南アジアの香辛料貿易に直接入り込み、新大陸では既存の勢力を支配し、大量の金銀を手に入れる。そのままメキシコやペルーを拠点に太平洋を通って東南アジアとを行き来できるようになる。
    そして宣教師を伴ったかたちで、15世紀半ば日本に到達。ザビエルたちがキリスト教の伝来に努めるところで上はおわる。

    多大な犠牲を払っても未開の地を進み続ける冒険精神の起源はエンリケ航海王子に拠る。地中海しか知らないヨーロッパ人が大洋に出るのは相当な覚悟がいると想像。海に出た時点では、東アジアやイスラームの方が航海技術においてはすぐれていただろう。

    コルテス・ピサロはじめ半分海賊のような少数の人々が新大陸の巨大な秩序を崩す様、相当少ない兵力でインド沿岸部に次々と拠点を築くポルトガルの様を読んでいると、当時の日本ではかくはいくまいと思わせられる。
    ばらばらの状態とは言え、他の文明に対し見劣りする部分は少なく、海から大陸と交流・敵対し続けていた。なにより西欧からは遠すぎる。西は新大陸、東はインドせいぜい東南アジアまでしか続かない。

    でも副題は「日本の悲劇」
    まだ読み終わってないのでわからないけど、
    宣教師が「日本人はキリスト教布教にもっとも適している」と感服したように、貿易ももちろんだが、武力よりもキリスト教が先行し、意外とそれが日本に根付いてしまったところに、鎖国につながる特殊性がある気がする。
    鎖国の結果、できあがった島国根性が太平洋戦争の惨敗までつながるようだ。

    メモ
    ・インカ帝国の説明は初めて読んだ。秩序はしっかりしているけど、「人が政府のためにのみ作られている外観」とあるような、無表情で自己の意識の低そうな人民のイメージ。
    ・室町・戦国時代はばらばらだったがゆえに創造的な時代で、ヨーロッパのルネッサンスと相似。倭寇は単なる海賊ではなくて、貿易商であり国家権力が貿易を禁じたときのみ、海賊と化す。外への活動はあったが、それは「あぶれもの精神」で、無限追求の・公共的な企業の精神がなかった。
    ・土一揆にみられる、武士の対抗勢力としての民衆の結束力は、結局江戸幕府の統治機構として利用される。

  • 近所の古書展で筑摩叢書版を購入。500円也。

  • 歴史は世界史と日本史に分かれているがため、世界の動きの中での日本の歴史、世界の動きと関連付けた日本社会というものは、なかなか理解しにく、全体像の中での日本について意外とわかっておらず、そのようなことを著した書物もないものと思っていた。唯一、松岡正剛さんのお仕事が該当するのかな。ところがどっこい、和辻哲郎の「鎖国」は、グローバルな視点で著されておりました。こういう視点は必要だな。深くて広くて面白い。

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著者プロフィール

和辻哲郎(わつじ・てつろう 1889-1960)
兵庫県神崎郡砥堀村仁豊野(現在の兵庫県姫路市)に生まれる。倫理学者、哲学者。著書に『古寺巡礼』『風土』『倫理学』『日本精神史研究』など。

「2016年 『日本語と哲学の問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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