- Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003314470
作品紹介・あらすじ
日本の諸種の「文化産物」を通してそこに表現されている「それぞれの時代の日本人の『生』を把握」しようと試みる。この観点から十七条憲法や大宝令、推古・白鳳天平の仏像、『万葉集』『源氏物語』といった古典あるいは道元の著作と生涯などを論ずる。
感想・レビュー・書評
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古美術の力を享受して、心を洗い、心を富ませる。▼西洋の風呂は事務的、日本の風呂は享楽的。和辻哲郎『古寺巡礼』1919
大宝令(飛鳥時代)。富の分配の公平、社会主義的な理想を目指した。▼聖徳太子の三経義疏さんぎょうぎしょ。大乗仏教の深い哲理。▼当時、仏教とは現世利益、老病死の悲哀を慰めてくれるもの。仏像・仏教建築は悲哀を慰めてくれる仏への憧憬を投影したもの。▼美術の様式と思想・宗教は関係しており、両者の根底には時代精神がある。和辻哲郎『日本精神史』1926
「観る」とはすでに一定しているものを映すことではない。無限に新しいものを見いだして行くこと。観ることは直ちに創造に連なる。純粋に観る立場に立て。▼我々は花を散らす風において歓びあるいは傷むところの我々自身を見いだすごとく、ひでりのころに樹木を直射する日光において心萎える我々自身を了解する。我々は「風土」において我々自身を、間柄としての我々自身を見いだす。和辻哲郎『風土』1929
能面。一定の表情の類型化。不必要なものが全て抜き去られている。筋肉の生動が注意深く洗い去られている。しかし、生きた人間が顔につけて動作すると、豊富きわまりない表情を示し始める。手が涙を拭うように動けば、能面はすでに泣いている。面が肢体(したい)を獲得したのだ。和辻哲郎『面とペルソナ』1935詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【目次】
改訂版序 (昭和十五年二月 著者) [005]
序言 (大正十五年九月 於洛東若王子 著者) [007-009]
目次 [011-013]
挿画目次 (撮影 入江泰吉 他) [014]
飛鳥寧楽時代の政治的理想(大正十一年、五月) 015
推古時代に於ける仏教受容の仕方について(大正十一年、六月) 045
仏像の相好についての一考察(大正十一年、四月) 055
推古天平美術の様式 087
白鳳天平の彫刻と『万葉』の短歌 107
『万葉集』の歌と『古今集』の歌との相違について(大正十一年、八月) 125
お伽噺としての『竹取物語』(大正十一年、十一月) 145
『枕草紙』について(大正十一年、八月) 161
一 『枕草紙』の原典批評についての提案 161
二 『枕草紙』について 186
『源氏物語』について(大正十一年、十一月) 203
「もののあはれ」について(大正十一年、九月) 221
沙門道元(大正九年~十二年) 237
一 序言 237
二 道元の修業時代 251
三 説法開始 264
四 修行の方法と目的 273
五 親鸞の慈悲と道元の慈悲 285
六 道徳への関心 300
七 社会問題との関係 307
八 芸術への非難 311
九 道元の真理 314
(イ)礼拝得随 315
(ロ)仏性 324
(ハ)道得 339
(ニ)葛藤 350
歌舞伎劇についての一考察(大正十一年、三月) 357
解説 作品・方法・感受性および時代(加藤周一) [391-401]
編集付記 [402] -
和辻哲郎最初の論文集の改訂版(1940)である。初出はいずれも1920年代。
日本精神史を知るというよりは、これが書かれた戦前の知識人の精神構造を知るに適した一冊ではないだろうか。加藤周一や内田義彦はこれを先駆的な手法と切り口で研究された社会科学的作品として高く評価しているようだが、それだけにはとどまるまい。むしろ、今日からみるとつまらぬところの多いこの論文集から、近代日本の基盤となった思想的エッセンスが多く抽出できるという点、ここに着目するべきであろうと思う。