倫理学〈1〉 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (481ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314494

作品紹介・あらすじ

和辻哲郎(1889‐1960)の主著であり、近代日本最大の体系的哲学書。東西の古典を渉猟し、現象学・人類学・社会学・地理学など最新の学知を総合。倫理学原理論から共同体論に至る一大構想は、余人の追随を許さぬ壮大さで屹立する。本冊では共同存在としての人間を律する「根本理法」としての倫理学の方法を考究。全4冊。

感想・レビュー・書評

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  • 体系学的な倫理学。

  • この大部の主著の前に刊行された『人間の学としての倫理学』で既に示された基本概念・手法に沿って、著述は開始される。
    和辻が「人間」というとき、「個」としての人と、「世間」「人と人の間柄」といった共同態のありようと、常にダブル・ミーニングが語に込められていることに、気をつけなくてはいけない。
    デカルトのコギトがヨーロッパ的な「知」の、独我論的傾向を如実に予告していたのに対し、徹底的に「人と人のあいだ」を前提として、そこから開始する和辻哲郎の思想に、私は全面的に賛成である。
    こうした考え方を私は木村敏氏の著作で習得したのだが、和辻がこの時代に、いきなりこのようなパラダイムを呈示し西洋と堂々と対決したことは、驚くべき事実である。
    はじめから「他者」が存在し、自己を生み出す前提として「関係性」がある、という考え方は、西洋的独我論、強調されすぎた個人主義を排して、我々の日常的な感覚にもよく合致する。
    ただし危険なのは、「共同体」(あるいは「国家」)と「個人」とが対立する場面で、あまりにも「共同体」を優先してしまうならば、それは結局全体主義に陥ってしまうし、最近の右傾化した論調に見られる「公と私の区別」などというくだらない議論に収束してしまうおそれもあることだ。
    そのへん、和辻哲学は大丈夫なのか。3巻あたりに本格的に国家論に踏み込むようなので、ちょっと不安を感じてもいる。
    「全体は部分(個人)の集合を超えたものである」というゲシュタルト心理学の知見がこういった危険を乗り越えるヒントになるはずだが、たぶん和辻はゲシュタルト心理学もメルロ=ポンティも知らないはずだ。

    とりあえずこの第1巻は「個」に拘泥しすぎるヨーロッパ哲学をうまく乗り越えていて爽快であり、興味は尽きない。
    ただし途中で、いきなり「絶対者」という観念が登場したときにはとまどったが、この観念は巻でもっと詳しく論述されるのだろうか?

  • ワークショップ「つながりをたどる」:ゲストのおすすめ本

  • 和辻の「倫理学」下巻精読。下巻は人間存在の歴史的具体的考察が進められる。

  • 2010/12/20 借りる。

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著者プロフィール

和辻哲郎
1889(明治22)年、兵庫県に生まれる。哲学者・文化史家。姫路中学、第一高等学校を経て、1909(明治42)年、東京帝大文科大学哲学科入学。在学中に第二次「新思潮」に参加、谷崎潤一郎らと文学活動を続ける。卒業後、京都帝大助教授を経てドイツ留学、1931(昭和6)年同大教授。1933(昭和9)年に東京帝大教授となり1949(昭和24)年退官する。翌1950(昭和25)年、日本倫理学会初代会長、1955(昭和30)年文化勲章受章。1960(昭和35)年没。主な著書は、大和古寺巡りのブームを起こした1919(大正8)年の『古寺巡礼』の他、『日本古代文化』『風土』『倫理学』(全三巻)『鎖国』『日本倫理思想史』など、また『和辻哲郎全集』(全25巻・別巻2)がある

「2019年 『国民統合の象徴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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