偶然性の問題 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 92
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314630

作品紹介・あらすじ

あらゆる事象はゆくりないめぐり逢いであり、その邂逅の源泉に原始偶然が厳存する-。偶然性を定言的偶然、仮説的偶然、離接的偶然の三つに大別し、偶然性の本質を解明した九鬼周造(1888‐1941)の主著。ヘラクレイトスの偶然論とパルメニデスの必然論の対立以来くりかえし問い続けられてきた「偶然と必然」の問題への九鬼独自の解答。

感想・レビュー・書評

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  • 「偶然」の様々な様態を、本書ではひたすら分類する。偶然は必然と対であろうと、必然の分類に基づいて、その反照として偶然を区分してゆく。
     九鬼周造は西洋哲学においてこれまであまり注目されてこなかった「偶然」をしっかりと知的に定位したかったのだろう。この作業によって哲学史の隙間は埋まり、西洋的知が看過してきた部分が浮かび上がってくる。そう自負していたに違いない。
     もっとも、本書の大半は偶然の分類に明け暮れており、偶然なる物への凝視がもつ知的意味については、最後の方でわずかに取り上げられる。特に芸術・文学において偶然性がいかに重要なファクターであるかを指摘している箇所はなかなか面白い。このような考察を深めて、もう1章付け加えてほしかったと思う。偶然性をテーマとした他の九鬼周造の小論を合わせ読むことが必要だ。
     それでも、本書がたいへんな労作であることは確かだ。この努力がいかなる価値を持つのか、九鬼が切り拓いた知の領域は閉じていない。

  • 序説の最初の文、「偶然性とは必然性の否定である。」でがっしりと心を掴まれた。
    偶然と必然についてなんて、漠然とした考えたことなかったけれど、最初の一文で、これはもう面白いに違いないという確信をえた。ああ、問題は心理的なものだったんだ、と膝をうった。

    世界は偶然に満ちているとも、必然だけで成り立っているともいえる。だから、必然性とは偶然性の否定である、と言っても同じことだ。

    けれども、そんなアバウトな読みを尻目に、ページを進むごと、話は「偶然の森」に分け入っていく。そしていよいよ「離接的偶然」に関するくだりにさしかかり、自分の推測はすてきに裏切られそうだ。いま、(西洋的)理性、あるいは記号論理学、を離陸したところだ。

    ――――

    偶然性と不可能性、必然性と可能性、を図式化した、二つの勾玉を組み合わせたような図式(p.186)にうるっときた。アジアというのは、こういうことだったのか。それがこの図で一瞬に感得された。
    つまり、急には角を曲がらないということ。いつの間にかに偶然が必然に、必然が偶然に置き換わっている、この曲線のやさしさ。
    偶然性は論理学では把握できない。少なくともそれは確かだ。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:121.6//Ku28

  • 岩波文庫 080/I
    資料ID 2012200404

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