黒船前後・志士と経済 他十六篇 (岩波文庫 青 153-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003315316

作品紹介・あらすじ

明治維新史研究で知られる著者(1901‐56)の歴史随想集。名篇「黒船前後」以下、幕末から明治へ至る激動の時代をめぐるエッセイを精選した。その広い視野と自由な発想、ユニークな視点は、洒脱な語り口と相まって、読者に歴史の面白さを十二分に満喫させてくれるとともに、歴史は史料でなく着想から始まることを教えてくれるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 日本資本主義論争にて講座派の異端に位置する服部のエッセイ集。造船技術の発展、新選組、福沢諭吉、北海道旅行記など幅広いが、とくに『黒船前後』(1933)所収のエッセイは、「地主・ブルジョワ」に明治維新の変革主体を見出す考え方が徹底されている(この点は、奈良本辰也の解説が指摘している)。この徹底ぶりをどう受け止めるかは、読者の好みが分かれるだろう。

  • 左の方の高名な社会学・歴史学者。読んだことなかったが平置きになってたので手にとった。
    幕末の交渉史は興味があるところで、ゴールドラッシュで西海岸が開拓されたことにより、最高に技術の高まった帆船と黎明期の汽船が太平洋航路で競合することになった話が面白かった。
    ロシアの日本交渉もオホーツク海まで来て船舶技術が無いために停滞したわけで、政策も技術に依存するところが大きいのだ。

  •  
    ── 服部 之総《黒船前後 志士と経済 他十六篇 19810716 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003315316
     
    ── 服部 之総《雲浜その他 19341000 歴史科学》初出
    http://www.aozora.gr.jp/cards/001263/files/50363_39816.html
     
    …… 久坂 玄瑞などはわりにいい方だが、文久二年三月、同志ととも
    に脱藩してでも伏見挙兵に加わろうと準備最中の日記に、「金の一条に
    は大困窮、英雄もこ……。
     
    (20170603)
     

  • 1981年刊(初出1931~48年)。著者は元東洋大学教授、中央公論社初代出版部長。◆こんな書があるから古本屋漁りがやめられない。◆確かに、著者は戦前の労働農民党の書記局長だったためか、マルクスの影響を感じる。ただそれは発展段階史観というより、事実や数字重視の唯物的な姿勢のよう。また、テーマが①19世紀中期、米英間の世界の海をまたにかけた激烈な海運業競争、この日・中への影響、②1860年代、仏を中心とする朝鮮開国圧力とその頓挫(失敗は欧米の準備不足や自滅に依拠)、③安政の通商条約に先立つ日蘭自由貿易の実。
    こんなおよそ他書ではお目に書かれないテーマに多く頁を割いている。特に①はマルクスが描く、英を中心とする欧州と米の対立、暫時の米国の優越傾向、その結果欧州の革命へという見立て(現実にはその見立ては外れたが)からインスパイアされたもの。しかも、雑誌畑らしく、語りが時に講談調になったり、新撰組や桜田門外の変関係者をテーマにする等、箸休めもできる美味しい書である。

  • 新書文庫

  • 「志士と経済」の「結局、雲浜の方が、松陰よりは当年の政治家としてはるか上にいたこととなろう。」という梅田雲浜と吉田松陰の比較において、著者の歴史観が凝縮されている。声高に「日本の夜明け」を語るアジテーターに、ではなく、「草莽義徒」の組織者にこそ、深いところでの歴史の駆動力を見る視点には昨今の「竜馬ブーム」などからは見落とされがちなものが掬い取られていると思う。
    抱腹絶倒の「moods cashy」にしても、あわせて市井の人々のしたたかさや、大変革期にあってもなお流れるある種のゆとりのようなものを感じさせる筆の運びにただただ脱帽。それにしても歴史を扱った文章でこれほど笑わせられたのは生まれて初めての経験だ。

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