武家の女性 (岩波文庫 青 162-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003316214

感想・レビュー・書評

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  • 戦時下の1943年に書かれた幕末水戸藩の生活史。柳田国男の支援下で刊行されたもので、自身が住む村(今の神奈川県藤沢市)の民俗誌である『わが住む村』と対をなす。舞台が水戸藩なのは、菊栄の家系が水戸藩の下級武士だったためで、おもに母の回想に基づいて書かれている。

    幕末水戸藩の文字通り血みどろの抗争や悲劇の数々と、それにもかかわらず営まれていた平穏な日常生活の双方が、ともに過不足なく記されている。この筆致に、圧倒される。

    山川菊栄は、アジア太平洋戦争下でも、戦争協力に殆んど加担しなかった数少ない論客として知られる。それができたのは、本書で示されたような幅広い視野と、人びとの日常生活への温かいまなざしとを菊栄が備えていたからなのだろう。

  • 「明治150年に読みたい岩波文庫」シリーズで紐解いた。マイナーなセレクトが多い中で、これは83年発行以来35年間で43冊も重版がかかっている古典と言っていい作品である。残念ながら私は今まで見逃していた。私は社会主義者山川均の妻の堅苦しい女性問題本かと勘違いしていた。一読、重版出来は伊達じゃないと思った。戦前の発行とはとても思えない、優しい文章、けれども練りに練った文体、しかも民俗学の勘所を押さえた貴重な幕末武家社会の民俗聴き取り書にもなっていて、その上で、女性問題の啓蒙書にもなっているし、幕末水戸藩の歴史書にもなっているのである。

    柳田国男の薫陶を受けたらしいが、頷ける箇所が山のようにある。最初から12章までの見出しの立て方自体が見事に民俗学的な視点である(cf「明治大正史世相篇」)。その他民俗学的視点の素晴らしいところ、三界に家なしと言われた女でも着物だけが唯一の財産だった点、開国を境に作る着物から買う着物に変わっていった点、武家女性のお歯黒は、江戸中期からの習慣で一新後は苦労から解放されてほっとした点、三つ四つの女の子は頭の周りをけずって真ん中に残した毛を赤い切れで結んで「ケシ坊主」にしていた点、青年の遊びに墓参という名の遠足、2月と11月の25日に菅公様のお祭り、打球、等々があった点、典型的なきつねが化かした話が語られていた点、結婚についての迷信の点、などは史料的価値も高いと思われる。

    水戸の武家社会の史書的価値も高い部分がある。武家の離婚率の高さは、女史の分析通りと思える。また、それに続けての「女大学」批判、そして封建制度批判は、当時(昭18)の地位の低い女性制度批判に繋がる内容だったと思うが、まあ度胸の良い書き方だと思う。

    最後の三章分は、何処かで読んだと思ったら朝日まかて「恋歌」(直木賞受賞作)のエピソードがまるまる出てきた。おそらく、「恋歌」がこの本に刺激されて作られた長編だったのだと思う。水戸藩の「子年のお騒ぎ」に代表される内乱の内幕を女性の立場から活描した。また、その歴史観の正しさにも舌を巻く。改めて、これが戦中に書かれたことにびっくりする。
    2018年7月読了

  • 大河ドラマなどで幕末の人々の暮らしをかいま見ることはできますが、女性らしい優しい文体で書かれたこの本からは、脚色のない、実際の暮らしの様子が生き生きと伝わってきます。

    「朝読み」なんて、今の「朝読」と同じだと思ったり。

    歴史好きの人におすすめなのはもちろん、そうでない人も、興味を持つきっかけになると思います。

  • 幕末にかかる時代の、水戸の下級武士の一家の生活を、一家の主婦である女性の視点から記したもの。その時代に少女だった、著者の母親への取材が中心になっているらしい。時代劇を見てもわからない、実際の武家の女性の生活が興味深い。当時の家庭はぼくらが考える家庭というより、小さい会社みたいなものだと思っていたほうがいいのかもしれない。夫にも奥さんにも、家庭という会社の中で与えられた仕事があって、それをこなさないと会社の経営をしていけないのだ。10代後半の新入社員である嫁のチューターが先輩社員である姑ということなんだな。柳田國男にすすめられて書いたそうだが、淡々と丁寧な語り口が心に残る。

    執筆時点(戦時中の出版)から見ても窮屈極まりない生活で、正直そういう時代が終わってよかったな、と思わずにはいられない。男もずいぶん窮屈だっただろうな。

  • 家族の古写真を見つけると、自分のルーツやその時代の雰囲気を覗き見る事ができて胸がときめく。時代の生き証人として、戦争を生きた高齢の曽祖父等の言葉に触れる時も同じく。本著には、似たようなときめきを感じながら、やや惜しいのは時代の被験者や古写真の被写体ではなく、老母の思い出。勿論、それで何か古写真に写っていたはずのものが消えている、という事は無い。余す事なき、時代の語り部を果たしていると思った。

    ー女の方は己を空しゅうして人に仕えるという、犠牲と服従の精神を涵養する点に重きが置かれ、女は大事にしてはいけない、粗末に育てようということになっていましたー

    家の中では、ハイハイと口答えせずにお勤めし、妾をマネジメントしながら、時に、斬刑の息子、最期に望みの食をとの計らいに対し、斬刑後武士の腹に食べ物が出てきてはならぬと食べさせず。静かながらも壮烈な生き様。命が尊厳がより軽く、欲を満たす事は仕来りの後回し。時に情け、しかし体裁。生よりも名の方が大事。今とは異なる文化だが、通底するルーツをやはり覗き見できたという事で、本意を遂げられた。

  • 2018岩波文庫フェア本。これは面白かった。武家の女性の生活を様々な視点で描いている。「男の子には玉を抱かせ。女の子には瓦を抱かせ」今の時代にそんな発言でもしたら炎上騒ぎもいいところ。だけど、山川さんのお母様が生きた時代はそれが当たり前。疑問を感じた女性もいたに違いないが、それはそれ。時にはひどい結婚・離婚もあったり、時代柄理不尽とも思える仕打ちもあるところにはあったが、概ね、淡々と毎日を積み重ね、明るく力強く生きていた女性たちの姿がそこにはある。

  • 幕末、水戸藩の下級武士の娘、千世の昔話を娘の山川菊栄が著した。昔の武士の家庭が生き生きと描かれている。質素でも健気に生きる女性が描かれている。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706830

  • 幕末の水戸藩の下級武士やその妻女たちの生活を書いた一冊。

  • 簡潔、平静な文体ながら、ちらちらと背後に情熱を感じる。

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