武家の女性 (岩波文庫 青 162-1)

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レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003316214

感想・レビュー・書評

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  • 幕末にかかる時代の、水戸の下級武士の一家の生活を、一家の主婦である女性の視点から記したもの。その時代に少女だった、著者の母親への取材が中心になっているらしい。時代劇を見てもわからない、実際の武家の女性の生活が興味深い。当時の家庭はぼくらが考える家庭というより、小さい会社みたいなものだと思っていたほうがいいのかもしれない。夫にも奥さんにも、家庭という会社の中で与えられた仕事があって、それをこなさないと会社の経営をしていけないのだ。10代後半の新入社員である嫁のチューターが先輩社員である姑ということなんだな。柳田國男にすすめられて書いたそうだが、淡々と丁寧な語り口が心に残る。

    執筆時点(戦時中の出版)から見ても窮屈極まりない生活で、正直そういう時代が終わってよかったな、と思わずにはいられない。男もずいぶん窮屈だっただろうな。

  • 「明治150年に読みたい岩波文庫」シリーズで紐解いた。マイナーなセレクトが多い中で、これは83年発行以来35年間で43冊も重版がかかっている古典と言っていい作品である。残念ながら私は今まで見逃していた。私は社会主義者山川均の妻の堅苦しい女性問題本かと勘違いしていた。一読、重版出来は伊達じゃないと思った。戦前の発行とはとても思えない、優しい文章、けれども練りに練った文体、しかも民俗学の勘所を押さえた貴重な幕末武家社会の民俗聴き取り書にもなっていて、その上で、女性問題の啓蒙書にもなっているし、幕末水戸藩の歴史書にもなっているのである。

    柳田国男の薫陶を受けたらしいが、頷ける箇所が山のようにある。最初から12章までの見出しの立て方自体が見事に民俗学的な視点である(cf「明治大正史世相篇」)。その他民俗学的視点の素晴らしいところ、三界に家なしと言われた女でも着物だけが唯一の財産だった点、開国を境に作る着物から買う着物に変わっていった点、武家女性のお歯黒は、江戸中期からの習慣で一新後は苦労から解放されてほっとした点、三つ四つの女の子は頭の周りをけずって真ん中に残した毛を赤い切れで結んで「ケシ坊主」にしていた点、青年の遊びに墓参という名の遠足、2月と11月の25日に菅公様のお祭り、打球、等々があった点、典型的なきつねが化かした話が語られていた点、結婚についての迷信の点、などは史料的価値も高いと思われる。

    水戸の武家社会の史書的価値も高い部分がある。武家の離婚率の高さは、女史の分析通りと思える。また、それに続けての「女大学」批判、そして封建制度批判は、当時(昭18)の地位の低い女性制度批判に繋がる内容だったと思うが、まあ度胸の良い書き方だと思う。

    最後の三章分は、何処かで読んだと思ったら朝日まかて「恋歌」(直木賞受賞作)のエピソードがまるまる出てきた。おそらく、「恋歌」がこの本に刺激されて作られた長編だったのだと思う。水戸藩の「子年のお騒ぎ」に代表される内乱の内幕を女性の立場から活描した。また、その歴史観の正しさにも舌を巻く。改めて、これが戦中に書かれたことにびっくりする。
    2018年7月読了

  • 戦後の教育でゆがめられている昔の女性の本当の姿を綴っています。
    若いときに読んで非常に感銘を受けた本です。
    日本の美しさが感じられます。

  • しばらくさぼっていた幕末もの再読キャンペーン再開。こちらは著者の山川菊栄が幕末の水戸藩の下級武士の家に生まれ育った母・千世から聞いた当時の話をわかりやすくまとめた1冊。語り口が素朴で、とても読みやすい。

    藩によって微妙に事情は違うだろうけど、当時の下級武士の生活ぶり、食卓事情、結婚や離婚、子育て、嫁姑問題など、現代にも通じるものがありどれもとても興味深い。時代的に一種の男尊女卑があるとはいえ、そのかわり女子供に責任は取らせないという男性側の潔さもあり、さほど女性が虐げられていたという印象はない。階級によって自由がないのは男性も同じでしょう。

    水戸藩ゆえ、少しだけ当時の情勢についての話もありますが、黄門さま徳川光圀の時代から尊王思想が強く学問も盛んで、幕末の烈公斉昭の時代は薩長土よりよほど先鋭的な藩だったのにも関わらず、内部で天狗党と諸生党が血で血を洗う抗争と復讐を繰り返して人材が残らなかった。○○さんも△△さんも殺された、の描写の連続が淡々としているだけに恐ろしい。

  • 大学の授業で読んだものを個人的に再読。教科書にのるような歴史ではなく、今のわたしの暮らしに繋がるような身近な歴史。女性はいつの時代もたくましくつよく美しいなと思った。

  • 江戸時代・水戸に住んでいた著者が書いたエッセイ。

    桜田門外の変~明治維新あたりの水戸の歴史が
    生き生きと描かれている。

    この時代を女性から見た感想が書かれているのが
    興味深い

  • それにしても、まるで実際に見てきたような描き方である。母が語る過去の鮮やかな精彩が読者にまで伝わってくる。菊栄は婦人問題研究家、夫の山川均はマルクス主義者であった。初版は戦時中に刊行されており思想色は見られない。藤原正彦がお茶の水女子大の読書ゼミで採用し、広く知られるようになった(『名著講義』2009年)。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/11/blog-post_26.html

  • 当時の幸せを今の価値観では計ることができないとした考え方は当時の人のものとしては新しく、その考えを持っていた著者の聡明さが素晴らしいと思った。
    昔のことといわず、年配の方から話を聞くことの大切さを感じた。

  • 着物は衣服として以上の意味をもっていた。

  • 幕末水戸藩の下級武士の家庭で育った母の話~塾の朝夕、お縫い子、身だしなみ、遊びごとなど~当時の日常生活を描いた非常に素朴な本。日本人が勤勉でまじめだった姿が浮かび上がってきます。
    アイロンの代わりに、口に含んだ水を吹きかけて重石の板を乗せて皺を伸ばすなど(大変だなぁ・・・)、男性視点での歴史本では決して出てない武家の暮らしぶりが描かれてます。
    武家といってもよほどの上流でない限り、暮らしぶりは貧しいです。
    しきたりが厳しくて自由の少ない生活を送りつつ、規律と守り節を乱さない姿勢はやっぱり凛々しい。清貧。
    幕末の受難の時代には、当人のみならず、家族や幼い子供までが斬罪や永牢に処されたことも書かれています。自決した主人の首を刈ろうとする賊の前に「それをお渡しするわけには行きません。この姿になっておりますものを、それ以上なさることはございますまい。強いてと仰るならまず私から御成敗願いましょう。」と立ちはだかった新妻に、天誅組も思わず「おみごと!」と首を刈らずに去った話と、牢獄で殺される断首される直前まで5歳の息子に論語を教え続けた女性のエピソードが印象的。

    完全な男尊女卑の社会で女性に入る情報もほとんど無かった中、男系が断絶された家が女系の手で再興されたり、明治初期に教育界で活躍したのは辛苦を重ねた下級士族の女性が多かったりという維新後の話は、怠け身の耳には痛いです(^^;引き締まる!

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