忘れられた日本人 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003316412

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい。とても読みやすいとは言えないが、熱量がすごい。どの村も部落も誰かが拓いたもの、それを維持するために命を燃やしたもの、それを引き継ぐもの、全てが揃わなければ、今の世に現存しない。平成の大合併でほぼ村がなくなった。相互依存による継続か、個性の死滅か、答えは未来にあるんだろう。会社も同じ。肝に銘じたい。

  • 寄りあいに興味が出て読む。それ以外は拾い読み。
    日本の村には寄りあいというのがあったらしく、そこで村人は自分たちが納得いくまでいつまでも村の課題を話し合っていたらしい。議論の仕方は、自分の経験や体験、知っていることを話し、いろんな意見が出たうえで長老みたいな人にうかがう、という方式。面白いと思ったのが、村の文化伝承などの中心は隠居した人たちだったそう。村での隠居は早く、40~50で隠居。わりかし自由に動き回れるので地域貢献もできたそう。今は難しいから行政が出たほうがいいのかなぁ、どうかなぁ…忘れられた日本人だもんなぁ…

  • いまさらながら読もうと思って購入。

  • 時代の進歩の陰で失われていくもの、忘れ去られていくものを考え直させられる。時代は常に移り変わっていくもので、今もなおその中で繰り返し何かが淘汰されていく。全てを残すことが良いのではない、しかしここに収められた先人の足跡は根本的な人間のあり方として心の片隅に生かす価値のあるものであることは間違いない。

  • 「姑による嫁いじめ」も「嫁による姑いじめ」もあったが、前者ばかりが有名なのは若い方が発信力が強かった、という話。
     などなど相変わらず興味深い話が盛りだくさんの宮本常一氏の著。ほんの少し前のことなのに結構忘れられていたり、事実とは異なる固定観念にとらわれていることも少なくない。
     その一例が先述の嫁いじめ姑いじめの件であり、また「女性は一人旅をしない」とかいうのも実際はそうでもなかったりという話である。

     本書は様々なテーマの章があって、対馬の村落の成り立ちや合議の形成方法なども大変興味深いのだが一つ選べばやはり「土佐源氏」であろう。
     土佐で博労(馬や牛の売買人)をしていて、いまは盲目となって乞食をしているという男性からの聞き書き、という体であるが、別の人の話によるとこの博労は盲目でも乞食でもなかったらしい、が、ともあれ話の内容は概ね事実(少なくとも聞き取った内容に忠実)であるとのことである。
     この博労は夜這いで生まれた父なし子で、すぐに祖父母に預けられる。母は働きに出るがそこで事故に遭ってすぐに死んでしまう。物心ついたときには彼は「子守り」と一緒にいた。
     この「子守り」というのは貧乏な家の子の定番奉公であって、豊かな家に雇われてその家の子(未就学児)を預かるわけだが、なんだかんだで貧乏人の家の子もそこに混じって面倒を見てもらったりもしていたらしい。
     で、同年代の子が学校に行く歳になっても彼は学校に行けず、そのまま子守り仲間と育つ。扶養者は隠居の爺婆だから家の手伝いをさせられることもなかった。
     そうこうしている内に子守り同士で悪い遊び、つまりは性行為をおぼえ、雨で外で遊べないときは納屋で見せあったり入れたりしていたそうな。
    「あんまりええとも思わだったが、それでもやっぱり一ばんおもしろいあそびじゃった」
     まあそんな所から始まって彼の女遍歴がとうとうと語られていく。明治大正期にも様々な愛の形、性の形があったのだということを改めて知らしめられる。

     宮本氏の話が面白いのは、一貫して「人々」でなく「人」を見ている所であるように思う。幾人かの話を混ぜて「この地域では」などと雑にまとめたりせず、一人ひとりの話を聞き、それを記録している。一人ひとりを積み上げた上で「東日本」と「西日本」を対比しようとしている。
     学術的に考えればやはりどこかで「人々」に統合しなければならない場面も出てくるのであろうが、ただの趣味人としては、氏の残してくれた膨大な「個」の記録をただただ眺めていたい衝動に駆られるのである。

  • わずか百年たらずのうちに、日本人の生活はこうも変わってしまったのか…。
    数十年前までは、日本全国にありふれていた風景と生活ぶり、しかし今ではイメージすることさえ難しい。
    そしてここで描かれている人々のなんと情緒豊かなこと…。ワタシたちの暮らしのなんと殺伐としていること…。

    色んな感慨を深くして再読したい本です。

  • ネタバレ明治以前の日本は性に関しておおらかであったことは知っていたが、農村部では明治期くらいまではそのような慣習が残っていたというのは初めて知った。電車の中で読んでいて思わず赤面してしまった。

  • 農家の家に生まれたのにあまり農業に関心がなかった自分にとって、農業をとりまく村の生活が伝承されるべきものなのだということを知れてすごく良かった。そして名もない人々のたくましく歩んできた軌跡に心打たれた。しみじみと心が澄み渡っていくような感じがした。「私の祖父」「世間師」「文字をもつ伝承者」がものすごく好きだ。「世間師」を読んで明治はじめ頃の日本で各地を旅した人がいたことに驚いた。高木誠一さんの言葉ひとつひとつが際立って心の琴線をくすぐった。宮本さんのような旅は到底できないけれど、旅をしてみたくなった。

  • 人と人とが揉めずに共存していく上で、生活の知恵というか、自然に出来上がったシステムが昔はあったのだという事を知った。
    井戸端会議での愚痴の言い合い。

    そして男女の関係はもっと自由だった。

    日本人は、もう少し元の日本人の姿に戻っても良いかもしれない。

  • その時代に語られる話を書きとめていく大切さを感じます。

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著者プロフィール

民俗学者

「2019年 『宮本常一 伝書鳩のように』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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