- Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003316962
作品紹介・あらすじ
既成の茶道の立場とは全く別の視点に立つユニークな茶道論を展開した柳宗悦の茶にかんするエッセイから「茶道を想う」等を精選。
感想・レビュー・書評
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掘り出して再読、今読むと何書いてるのがわかる、というか不昧公の名物この前私も見ました見ました!とか。そもそもいまではお名前も「やなぎむねよし」なのがわかっています。
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民藝運動で知られる柳宗悦は、茶の道に入ることなく、在野の人として茶を自由に論じました。旧弊に対するあけすけな批判を展開したため、茶道の世界では正面から論じられることが少ないかもしれません。しかし彼の批判精神は、利休の旧来の茶の世界に向かう挑戦の気概と、相通じるところがあるとも思います。
本書の一節に、利休の美に触れるきっかけを感じました。それが「足らざるに足るを知る」という言葉です。
「足るを知る」という言葉が、ひたすらに内省に向かって自足してしまうのに対し、柳宗悦は、茶の本質をもっと開かれたところに見出します。「足るを知る」というふうに、ひとつの境地に自分を閉じ込めるのではなく、無限なるものに向かって自分を開いていくために「足らざる」場所に自分を置く。このことを「足らざるに足るを知る」という言葉で言い表します。
彼は、茶の本質を「わび、さび」ではなく「渋さ」という民衆の言葉で語り、その真髄は「貧の心」にあると言います。そしてその「貧」を茶器の「簡素な形、静な膚、くすめる色、飾りなき姿」に見るのです。茶器の「貧」は、陰りの中に余韻や暗示が満ちていて、それらに触れることによって、無限に向かって自分が開かれていく。そのことに宗悦は「足るを感じる」のです。「貧の心」は、無限に向かう可能性に、みずからを賭ける潔さも持ち合わせている、と言ってもよいでしょう。そこには「むさぼり」とは無縁の贅沢さがあります。
著者プロフィール
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