柳宗悦茶道論集 (岩波文庫 青 169-6)

著者 :
制作 : 熊倉 功夫 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 78
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003316962

作品紹介・あらすじ

既成の茶道の立場とは全く別の視点に立つユニークな茶道論を展開した柳宗悦の茶にかんするエッセイから「茶道を想う」等を精選。

感想・レビュー・書評

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  • 掘り出して再読、今読むと何書いてるのがわかる、というか不昧公の名物この前私も見ました見ました!とか。そもそもいまではお名前も「やなぎむねよし」なのがわかっています。

  • 民藝運動で知られる柳宗悦は、茶の道に入ることなく、在野の人として茶を自由に論じました。旧弊に対するあけすけな批判を展開したため、茶道の世界では正面から論じられることが少ないかもしれません。しかし彼の批判精神は、利休の旧来の茶の世界に向かう挑戦の気概と、相通じるところがあるとも思います。

    本書の一節に、利休の美に触れるきっかけを感じました。それが「足らざるに足るを知る」という言葉です。
    「足るを知る」という言葉が、ひたすらに内省に向かって自足してしまうのに対し、柳宗悦は、茶の本質をもっと開かれたところに見出します。「足るを知る」というふうに、ひとつの境地に自分を閉じ込めるのではなく、無限なるものに向かって自分を開いていくために「足らざる」場所に自分を置く。このことを「足らざるに足るを知る」という言葉で言い表します。
    彼は、茶の本質を「わび、さび」ではなく「渋さ」という民衆の言葉で語り、その真髄は「貧の心」にあると言います。そしてその「貧」を茶器の「簡素な形、静な膚、くすめる色、飾りなき姿」に見るのです。茶器の「貧」は、陰りの中に余韻や暗示が満ちていて、それらに触れることによって、無限に向かって自分が開かれていく。そのことに宗悦は「足るを感じる」のです。「貧の心」は、無限に向かう可能性に、みずからを賭ける潔さも持ち合わせている、と言ってもよいでしょう。そこには「むさぼり」とは無縁の贅沢さがあります。

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著者プロフィール

柳宗悦(やなぎ・むねよし):1889-1961年。学習院高等科在学中に雑誌「白樺」創刊に参加。主に美術の分野を担当した。東京帝国大学哲学科を卒業後は宗教哲学者として活躍。濱田庄司、河井寛次郎、バーナード・リーチ、富本憲吉らと出会い、「民藝」という新しい美の概念を打ちたてた。眼の人として知られるが、柳のまなざしは、物の美しさだけではなく、物を生み出した人や社会にたえず注がれていた。

「2023年 『新編 民藝四十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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