維新旧幕比較論 (岩波文庫 青 189-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003318911

作品紹介・あらすじ

明治維新によって、日本の社会はどのように変わったのか。当時、太政官官吏として政治の中枢に身をおいていた木下真弘が、明治新政の具体的諸成果を、旧幕府の実態と一つ一つ比較しながら明らかにした史論。岩倉具視の命を受けて執筆されたもので、維新当時の民衆の実態に接近できる一級史料である。原題「新旧比較表」。

感想・レビュー・書評

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  • ざっくり再読。明治維新後変わった制度を、旧幕時代の制度と比較研究した一冊。原本は三分冊で編年、族別、社会に分かれている。底本になったのは松本清張が所蔵していたものなんだそう。著者の木下真弘は文政7年(1824年)肥後熊本藩の儒者の家に生まれ、明治維新後は太政官に出仕、上司は岩倉具視、三条実美。明治10年、西南戦争真っ只中の頃の著作で、出版されたわけではなく太政官内の報告書的なものだったらしい。

    まずは明治元年~九年までの<編年>での比較。二段組になっており、上段が「便利になったこと」下段が「不便なこと」、箇条書きの「○」が明治維新以降、「●」が旧幕府、で表記されている。つまり、本来なら上段(便利)がすべて○(新制度)、下段(不便)が●(旧制度)であるべきだけど、稀に、逆になっている項目があるのが興味深い。つまり旧幕時代のほうが良かった点もいくつかあるということ。

    <族別>は、皇族、華族(貴族、士族)、農・工・商・その他と立場ごとの新旧比較。最後の<社会>は、ジャンルごとの総括的な感じ。

    著者が肥後熊本藩出身で一応元士族ということもあり、士族贔屓というか、いろいろ複雑だったのかな、というのが垣間見える。例えば編年の便利・不便の区分けで、処刑方法について、便利:旧幕府●斬首、切腹、不便:新政府○絞首刑、となっており、本来なら新制度のほうが便利でなくてはならないのにこの項目は逆になっている。徴兵制についても、本来武士ではない農工商の身分からも徴兵することについて不満だったようで、農工商に対する同情というより武士のプライドがあったのかなという感じ。

    さらに西南戦争について、他の士族の叛乱よりも首謀者への処罰が甘いんじゃないか的なことを書いており、神風連の乱を起こした肥後熊本藩出身者としては、薩長藩閥政府が薩摩にだけ厳しい処分を下さないことへの不満だったのかなと推測。

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