三民主義 下 (岩波文庫 青 230-2)

著者 : 孫文
制作 : 安藤 彦太郎 
  • 岩波書店 (1957年5月15日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003323021

三民主義 下 (岩波文庫 青 230-2)の感想・レビュー・書評

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  • 「民権」第五、第六、および「民生」四講をふくむ。「民権」の部分においては、孫文は民主主義の政府が弱く、帝国主義の政府の方が強力であるという認識を示す。これにはプロシアのビスマルクの経済開発や労働者政策などが念頭にあったようである。この民主主義の弱さを克服するため、孫文は自らの発明だとする「権」と「能」の分離を主張する。「権」は権力、「能」は才能のことで、権力は国民全体がもつが、才能はまた別で有能な者が政府で仕事をすべきだとする。政府は機械であり、国民は操縦する技師なのである。諸葛亮と阿斗との関係ともいわれる。この権と能の区別から、政権と治権の区別とその種類が説かれる。政権とは国民がもつ4つの権力、つまり「民権」のことで、官吏に対する選挙権・罷免権、法に対する創制権、複缺権で、それぞれ官吏と法を政府へ出し入れする。治権とは政府が仕事をするための五つ権力で、行政・立法・司法・監査・考試である。いわゆる三権に中国の伝統の、諫議大夫から監査権が、科挙制度から考試権が創設されているのである。ただし、具体的運用についてはあまり書かれていない。「民生」の部分では、まずマルクスの学説が批判されている。マルクスの唯物史観を批判し、歴史の重点は民が生存を求める努力であるとし、民生問題こそ歴史の駆動因とする。フォードへの言及も印象的だ。ただし、共産主義は民生主義と矛盾せず、国民党と共産党は手を携えねばならないとする。民生主義の具体的方法としては、地権の平均と資本の節制が説かれ、科学によって農業を改良し食料の増産し、政治的圧迫、つまり不平等条約を改正し、繊維工業を競争可能にしていく必要性を論じる。国民党の綱領が付録としてついているが、よくまとまっていると思う。中国の政府は孫文においてすでに強力で金儲けができ、民衆を養うエリートの政府としてリアルに論じられている。マルクス主義者が毛皮をきている子供であることなどは譬えも面白い。「知るは難く、行うは易い」とする孫文の主義は、知ることができれば、実践は容易であるという意味とともに、貧しく愚かな大部分の人間には、「知る」ことが難しいという意味もある。リップマンがいうように「民衆にも皇帝にも天与の統治能力などない」とするところは、孫文はたいへんドライでリアリストである。

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