ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝 (岩波文庫)

著者 :
制作 : ゲンドゥン・リンチェン 
  • 岩波書店
4.09
  • (5)
  • (2)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 61
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003334416

作品紹介・あらすじ

瘋狂聖の愛称を冠されるドゥクパ・クンレー(1455‐1529)は、ブータン人に語り継がれ、賛仰されてきた遊行僧。本来の仏教から堕落し形骸化した教団を痛烈に批判し、奔放な振る舞いとユーモアで民衆に仏教の真理を伝えた。型破りの遍歴、奇行、聖と俗にわたる逸話集は、ブータン仏教を知るための古典作品である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 序文がブータン皇太后というだけでも畏れ多いが、実にかっこいい。福音書が大好きな私にとって、新たなスーパーヒーローである。旧約の教えに対するイエスと、既存の仏教(仏教界)に対するドゥクパ・クンレーの立ち位置が似ている様にも感じた。

    「このお茶にはお茶の匂いもしないし、バターの匂いもどこにもない。こんなお茶を飲む者などどこにいようか。壁に染み込むがいい」このセリフのイエス感。わかりますか?イチヂクを枯らしそうな勢いではないですか。
    また、水を汲む、というのは福音書では重要なエピソードだが、ここでも似た場面がある。しかし井戸からではなく「すぐに膣から水が出るので十分だ。」イエスが与える水を飲むと渇かない、というのと自分自身から水が出る、そこは違いを感じる。
    そのスイッチを入れるのがドゥクパ・クンレーの男根、という事になる。

    内容はD.H.ロレンスが到達した地点にかなり近いと受け取ったが、もっと鷹揚な温かみと丸みと猥雑な生命力がある。
    女性は成仏しないのが仏教だが、ここでは仏になるのは女性ばかりである事や、釈迦の男根が体内に仕舞われている事と比べてみよう。
    コンポ小町スムチョクマの可憐さが胸に沁みた。

    ここにある宗教的メッセージを充分に読み取る力は無論、私には無いのだが、文学的に比喩を受け取る愉しさ、女性と交わされる歌の美しさ。ラスト「吉祥」の鷹揚で寛容なメッセージ。
    それを味わうだけでも非常に豊かな体験なのだと思えた。

    (しかし、やはりある程度の解説は欲しい所だ。)

  • 面白すぎるのでは...

  • チベット関連の本はとんでも本が多いのだけど、訳者の今枝由郎さんのは間違いがないので大体見たら買って間違いない。
    「大谷大学文学部卒業。フランスでのチベット研究のため留学、パリ第七大学で文学博士号修得。1974年から国立科学研究センターに勤務。1981年~1990年に、ブータン国立図書館顧問としてブータンに赴任し、国立図書館の建設に尽力。」(wikipedia)
    という不思議な経歴な人である。
    専攻はチベット歴史文献学で、本書もさすが解説がしっかりしている。

  • ブータンで今もなお讃仰される遊行僧の伝記、だが、全編これかなまら祭りというか、股間の「燃え盛る智慧の金剛」で鬼や魔女を調伏し、猥褻な歌で民衆を強化するトリックスターの英雄譚といった内容。性的な笑いに包まれつつ、まじめで一途な信心も一貫している。

  • 原書名:'GRO BA'I MGON PO CHOS RJE KUN DGA' LEGS PA'I RNAM THAR RGYA MTSHO'I SNYING PO MTHONG BA DON LDAN

    1章 家系と瘋狂
    2章 中央ブータン訪問
    3章 西ブータンでの事蹟(1)
    4章 西ブータンでの事蹟(2)
    5章 西ブータンでの事蹟(3)

    編者:ゲンドゥン・リンチェン(Brag-phug Dge-bśes Dge-ʼdun-rin-chen, 1926-1997)
    訳者:今枝由郎(1947-、愛知県、チベット学)

  • 2018-2-2

  • 新聞の読書のコーナーで以前に目に止まった。
    図書館で借りた。
    とんでもない仏典があるものだ。
    お国柄なんだろうか。
    うしろのほうで、日本の一休宗純と、ちょっと比較してあった。
    まだまだ知らないことや、知らない人物の、多いことよ。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1947年生まれ。1974年にフランス国立科学研究センター(CNRS)研究員となり、91年より同研究ディレクター、現在に至る。専門はチベット歴史文献学。著書に『ブータンに魅せられて』(岩波新書)、『ブータン仏教から見た日本仏教』(NHKブックス)、訳書に『日常語訳 ダンマパダ ブッダの〈真理の言葉〉』『ダライラマ 幸福と平和への助言』、『仏教と西洋の出会い』(フレデリック・ルノワール著、共訳)『人類の宗教の歴史』(フレデリック・ルノワール著)(いずれもトランスビュー)などがある。

「2014年 『日常語訳 新編スッタニパータ ブッダの〈智恵の言葉〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

今枝由郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×