ランケ 世界史概観――近世史の諸時代 (岩波文庫 青 412-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003341216

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  • ランケは実証主義的歴史学を打ち立てた19世紀の碩学だが、近年の社会史の流行もあって、文献至上主義を貫き政治を中心としたその歴史叙述は古色蒼然としたイメージがつきまとう。「ランケ流の実証主義……」といった枕詞にも大抵ネガティブなコノテーションが含まれている。だが社会史の意義がどれだけ強調されようとも、それはあくまで文献資料の隙間を埋めるものだ。今も昔も歴史学の王道は確実な文献に依拠した実証主義であることに変わりはない。

    ランケは世界史を理念の自己展開とみたヘーゲルの歴史哲学に反発し、あくまで個別的なものを介して歴史を観察する。「各々の時代は神に直接している」という言葉にそれは端的に表れているが、他方でランケは単なる事実の羅列を歴史と考えたわけではない。「個々の時代の間に横たわる相違を認識して、その前後関係の内的必然性を考察しなければならない」とし、ヘーゲルとは別の意味で歴史の「指導的理念」の探求を歴史家の使命と考えた。

    本書は「世界史」と言っても東洋は捨象されており、古典古代もギリシャ世界を飛び越えてローマから始まる。ランケにとってギリシャや東洋はヨーロッパとは異なる「指導的理念」が働く世界であり、そこには別の「世界史」がある。逆に言えば本書にはランケの捉えたヨーロッパとは何かが示されている。ローマを起点に「世界史」を叙述するランケは、ゲルマン民族の侵入がローマ文明を破壊したのではなく、彼らがローマ文明を継承し、その土台の上に形成したのがヨーロッパであるとみる。その意味で本書は後にアルフォンス・ドプシュが唱えた「文化連続説」の先駆をなす。「一切の古代史は、いわば一つの湖に注ぐ流れとなってローマ史の中に注ぎ、近世史の全体はローマ史の中から流れ出る。」

    共訳者の鈴木成高は戦前に「世界史の哲学」を提唱した京都学派の俊英であり、悪名高き二つの座談会『 近代の超克 』と『 世界史的立場と日本 』のいずれにも参加している。ランケの世界史学に触発されて、西洋史と東洋史が出会う新たな「世界史的立場」を構想したが、戦後の公職追放で京大を去る。だが鈴木の『ランケと世界史学(1939年)』は我が国におけるランケ研究の草分けにして今なお最高水準である。古書も入手困難な状況は残念だ。復刻を強く望みたい。

  • 本質的な問いが散りばめられている良書。
    人間は進歩するのか?
    歴史は進歩するのか?
    どのような態度で歴史に臨むべきか?
    我々が歴史を学ぶ価値はどこにあるのか?
    そのような問いに対する示唆に富むヒントを与えてるくれる。

  •  本書は、1854年、ランケがバヴァリア国王マクシミリャン二世のために行った「近世史の諸時代について」という講演を記録化したものである。
     今日的な歴史学の観点からするとさすがに古さは否めないが、近世ヨーロッパが確立されていく歴史の歩みを簡明に分かりやすく解き明かしてくれる。

     序説において、進歩という概念をいかに解すべきか、及びヘーゲル学派の歴史における指導的理念をいかに解すべきか、についてランケの歴史観が率直に説かれているのは、とても興味深かった。

  • 受験の為でない歴史をもっと知りたい、そのきっかけになった記念すべき本。
    40年以上の悪戦苦闘、嗚呼!切りが無い。
    でも、大体見えた。遅すぎた。

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