ルネサンスと宗教改革 (岩波文庫)

制作 : Ernst Troeltsch  内田 芳明 
  • 岩波書店
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003341711

作品紹介・あらすじ

ドイツのプロテスタント神学者、文学哲学者トレルチの代表的論文「ルネサンスと宗教改革」「啓蒙主義」「プロテスタンティズムと文化との関係」の3篇を収録。宗教改革によってもたらされる西欧の「近代」の意味を追求し、その歴史的把握の一典型を明快に示す。キリスト教の絶対性を否定するその論旨は当時多くの議論をまき起した。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、ルネサンスと宗教改革がヨーロッパ文化の発展過程において主要な契機となったという立場をとっている。
    ルネッサンスにおいては、絶対的かつ世俗的近代国家や知的なる教養を自力で建設することによって近代の理念世界の発展に最初の衝撃をあたえた。
    プロテスタンティズムはその全活動を通して政治的・社会的・経済的生活を独立させるのに役立った。

    ルネサンスと宗教改革は近代の偉大な共有財産として、倫理的・宗教的でありながら学問的かつ人文主義的な思想傾向を帯びた。このことは晩年のゲーテの言葉がこれらを根拠づける最も適切な例である。

    ルネサンスについて。
    「精神が宗教改革によって自己を開放せんと企てたことは否定出来ない。ギリシャ・ローマ古代に関する啓蒙は、より自由な、よりととのった、そしてよりいっそう趣味豊かな生への憧憬を、願望を、ひき起こした。ひとびとは宗教改革によって魂をある種の単純な自然状態へと復帰させようと努め、想像力を集中させようと努めたのであったが、そのことによってこの啓蒙がうけた恩恵はけっしてすくなくなかった」

    宗教改革について。
    「いったいわれわれは、一般にルターや宗教改革に何を感謝すべきかということを全然知ってはいない。われわれは精神的偏狭さという足かせから開放された。われわれは自分たちの文化が目ざめたことの結果として、源泉にさかのぼり、純粋なるキリスト教を把握できるようになった。自分の足でしっかりと神の大地に立って、人間は神からさずけられた自然人である、ということを感ずるその勇気をふたたびわれわれは持っているのである」


    また19世紀ドイツの哲学者デルタイによると、
    「神学的形而上学というものを個人主義的主観主義によって解体し、本来の自己に自主的に復帰することを意味した」とした。
    ルネッサンスと宗教改革によって神学的形而上学は解体され「啓蒙の自然体系」のなかでまったく新しい合理主義的内在的思想体系に変わったという。

    プロテスタンティズムが作用を及ぼしたもろもろの強力な文化影響は、もっぱら職業的誠実、真面目、厳粛、勤勉、官職の義務感情、信仰による良心の自由などである。かくしてプロテスタンティズムは絶対主義的諸侯権や官僚主義を強化し、信仰の自由をふくめて国民的自由を獲得せしめ、近代経済エートスと労働エートスとを高揚し、最後にはローマ教皇権からの解放によって世界のなかばを一つの政治体制に組織したのである。

    本書はルネッサンスと宗教改革に関する論文ではない。
    主題は、ルネサンスと宗教改革が融合することによって「啓蒙思想」が生まれたというところにある。
    ルネサンスは、キリスト教と同化する事で強力になり、自らが独立して古い敵対者にうち勝ち、カトリックの地盤では極端な反キリスト教精神となって現れ、プロテスタンティズムの地盤では、その内側からこれを征服したという。
    ルネサンスが創造した新しい自然科学と信仰の自由と国民のために闘ったカルヴァニズム、職業道徳としてあらわれた功利主義などが、啓蒙主義には反映されているという。
    ここで語られているのは、ルネサンスとプロテスタンティズムが融合することで化学反応を起こし、ヨーロッパの各地に飛び火することで様々な軋轢を生んだことの説明となっている。

    また本書では、18世紀以降のオランダ・イギリス・フランス・ドイツが啓蒙思想をどのように発展していったかを解説している。
    特に目を惹いたのが、フリーメイソンに関する記述。

    「1717年ロンドンに設立されたフリーメイソン秘密結社によって一種の祭儀的形態をとるに至り、その普及に力がそそがれた。」

    「1725年以来パリにはフリーメイソン秘密結社がある。国家、教会、社会のあらゆる規制的存在への包括的攻撃が始まったのはようやくこの世紀の中頃になってである。この運動は次にのべる三つの集団(自由主義の諸理念・唯物論・啓蒙主義)からなり、これらの集団はフランス精神の支配を世界的ならしめた」


    その後の啓蒙主義に対する反作用について、アメリカ革命とフランス革命が惹き起こした政治的反動についても触れている。
    「事実たしかに政治的支配層や教養階級の間で反動を起こしはしたが、しかし他方では事実ヨーロッパにおける中世の諸国家世界やその社会組織をここにはじめて最終決定的に破壊し、いたるところに政治的、社会的新構造へとうながした。」とその結果について締めくくっている。

    最後に、プロテスタンティズムの文化意識について、中世からの流れをまとめた一文が非常に印象深かったので掲載する。
    「プロテスタンティズムは、教会の統一や教皇の支配からヨーロッパの半ばを奪い取った運動として、カトリックに対して自主独立するにいたった一個の新しい世界の基礎を意味することである。」



    おまけとして、メモ書きしてあったルネサンスと宗教改革における個人主義の相違について触れておく。

    ルネサンスは、権威から開放された主観の完全な自律なのであって、ただ知的活動のなかで論理の規制に拘束されたにすぎない。非生産であるという性質上完全に独立を失って国家や教会の既存勢力に凭りかからざるをえず、全ての権力に臣従を誓うのがルネサンスの個人主義。

    宗教改革は、超自然的なものによって拘束されたもろもろの純客観的事実をただ内面化し精神化しただけのものであって、何らの拘束も制限ももたない。ただし信仰の立場を異にする国家統合に対しては、国民の権利と信仰の自由を闘いとるというのが宗教改革の個人主義。

  • そういや最近、「ルネッサーンス!!」のオッサン見んけどどうしてんのかな。芸人の世界は厳しいで。こうやって読書できるんはホンマ幸せなことやで。と噛み締めながら読んだ本。私アホですけど分かりやすかったです。訳者がええんやろね。

  • 神学から宗教学への軌跡を表すような、トレルチの代表的論文。全体が180ページほどで、3つの論文によって構成されているのだが、文字の小ささも合わさって、なかなか読み進めるのに苦労した。とりあえず読み終えた感じではあるが、流してしまった部分も多い。
    ルネサンスと宗教改革の、歴史における人間への影響を、再考する機会になった。

    13/7/9

  • 近代とは何かを問おうとすれば必ず読まなければならない名著。翻訳もうまく、読みやすい。

  • ヴェーバーと並び称される社会学者の著作。ルネサンスと宗教改革がいかなる意義を持っていたのかを解明しようとする表題作などが収録されている。ルネサンスは貴族的でありその社会的影響は宗教改革に比して大きくなかった、とする指摘は今なお斬新であろう。

  • 目次
    1 ルネサンスと宗教改革
    2 啓蒙主義(序説―啓蒙主義の本質
    政治的、経済的、社会的発展
    新興諸科学と哲学
    新しい文学
    国家生活および教育制度の実践的諸改革
    啓蒙主義の神学
    啓蒙主義衰退の諸原因)
    3 プロテスタンティズムと文化との関係(プロテスタンティズムはプロテスタント諸国民にとって一般にどういう文化的意義をもっているか
    別してプロテスタント的なる文化の創造)

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著者プロフィール

1865年、ドイツのアウクスブルク生まれ。プロテスタント神学者・歴史哲学者。ゲッティンゲン大学などで神学を学び、ハイデルベルク大学神学教授、ベルリン大学哲学教授などを歴任。第一次世界大戦後のワイマール時代には、ドイツ民主党の政策に関わり、評論家として活発な執筆活動を行い、さらにプロイセン州の政務次官として、また大統領エーベルトの参事官としてドイツ再建に尽力した。1923年没。

「2015年 『キリスト教の絶対性と宗教の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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