魔女 (上) (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1983年5月16日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784003343418

感想・レビュー・書評

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  • フランスの歴史家ジュール・ミシュレ(1798-1874)による『魔女』(1862年)は、中世から近代初期のヨーロッパにおける魔女狩りの実態を描き出した画期的な著作です。

    本書の特徴的なのは、魔女を単なる異端や悪魔の手先として糾弾するのではなく、当時の社会構造や民衆の生活の中で彼女たちが果たしていた役割に着目した点です。ミシュレは、魔女とされた女性たちの多くが実は民間療法の知識を持つ治療師であり、農民たちの病を癒し、心の支えとなっていたことを明らかにしました。

    著者は豊かな想像力と共感力をもって、教会や権力者たちによって「魔女」として迫害された女性たちの内面に迫ります。彼女たちは、封建制と教会支配による抑圧的な社会システムの中で、自然との深い結びつきを保ち、独自の知恵と技術を育んでいました。

    本書は、単なる歴史書の枠を超えて、権力と抵抗、ジェンダー、民衆文化、医療の歴史など、現代にも通じる多様なテーマを内包しています。ミシュレの流麗な文体と詩的な表現は、学術書でありながら文学作品としての魅力も備えています。
    特筆すべきは、本書が19世紀という時代に、魔女裁判を批判的に検証し、近代的な歴史学の手法を用いて分析した先駆的な研究だという点です。それまでタブー視されていたテーマに正面から取り組み、魔女狩りの背後にある社会的・政治的な力学を明らかにしました。

    『魔女』は、歴史研究の古典であるとともに、人間社会における差別や抑圧の構造を考える上で、今なお示唆に富む重要な著作として評価されています。中世ヨーロッパの暗部を照らし出すことで、現代社会にも潜む不寛容や偏見の問題に警鐘を鳴らしているのです。

  • 上巻では中世における魔女の誕生についての考察中心。小難しい話かと思いきや、なぜか物語仕立てになっている部分があって予想してたより読み易くはありました。ただそういう書き方がわかりやすいかというと微妙なのだけれど。

    ものすごく乱暴な結論を述べてしまえば、悪魔にしろ魔女にしろ、結局それを生み出したのはキリスト教自身だということ。

    一神教である彼らが追い払った古い神々とそれを信じる人々がまず邪悪とされた歴史、さらに宗教と医学の相反する立場=医者を頼らず神に祈れ、信仰心があれば病気も怪我も医学で治す必要はないというまともな人間からしたら頭おかしいとしか思えない教会の理論。しかし現実には疫病や飢えから神様は守ってくれないわけで、虐げられた庶民が教会や国家権力に反発し、キリスト以外の神様や薬草に詳しい人間を頼るのは当然のなりゆき。しかしつまりそれが「魔女」的行為ととみなされたわけですね。

    妖術使い(男性)ではなく魔女(女性)ばかりが狩られる被害者であったというのは男尊女卑の歴史の一端なのでしょうか。いずれにしても理不尽・・・

  • 序の章
     第一の書
     Ⅰ 神々の死
     Ⅱ なぜ中世は絶望したか
     Ⅲ 囲炉裏端の小さな悪魔
     Ⅳ さまざまの誘惑
     Ⅴ 悪魔にとりつかれる
     Ⅵ 悪魔との契約
     Ⅶ 死者たちの王
     Ⅷ 自然の王者
     Ⅸ サタン、医者となる
     Ⅹ さまざまの魔薬と媚薬
     Ⅺ 反逆の霊的交わり(コミュニオン)-魔女の夜宴(サバト)-黒ミサ
     Ⅻ そのつづきー愛、死-サタンが消え失せる

     訳註
     解説
     ミシュレ略年表

  • 本書の特徴は中世ヨーロッパにおける「魔女」の出現とその周辺環境に関するファクトを伝える分析的書物でありながら、一人の女性の日常と心の動きを踏まえた上で、彼女がいかにして「魔女」となっていくか、時代を跨ぎつつも一つの人生を追うように記載されていることである。

    古代世界の神々の死からキリスト教支配の開始、ルネサンスからフランス革命の暗示まで時代を大きく辿りながらも、ある魔女の事績を一つの読み物として辿っていけるこの上巻は一編の小説として楽しむこともできる。

  • いま集会から帰って来ました、とばかりの筆致に胸がときめく。薄暗がりかアルコーヴでこっそり読もう。

  • 角野栄子が魔女に会いに行く時読んだ本。

  • ヨーロッパ中世の魔女について、成立から魔女狩り手前のサバド隆盛期までを――サタンに魅入られた一人の女を軸に叙事的に記。かなり変わった書き方であるが読み進めやすく、また当時の民衆の置かれた状況(とみに女性に関して)での機微を鮮やかに描く。

  • 10/7 読了。
    下巻捜索中。

  • ヴォルテール「哲学辞典」


  • 魔女研究には欠かせないですよね。
    内容は。。。妖しい部分もありますが参考になります。
    引用もさせていただきました。

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