映画とは何か (上) (岩波文庫 578)

  • 岩波書店 (2015年2月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784003357811

作品紹介・あらすじ

アンドレ・バザン(1918-1958)はフランスの映画批評家。サイレントからトーキーへの移行に際し批評の分野で新時代を開き、自ら創刊した『カイエ・デュ・シネマ』で健筆を振るった。本書は彼の映画理論・批評の集大成の書である。上巻にはモンタージュの拒絶、映画と演劇の関係など映画における<現実>とは何かを追究した論考を収録。

みんなの感想まとめ

映画における現実の捉え方を深く探求する本書は、アンドレ・バザンの映画理論を集大成した作品です。特に、サイレントからトーキーへの移行期における映画の表現や、モンタージュの拒絶、演劇との関係性など、幅広い...

感想・レビュー・書評

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  • A「映画なんて、ただの娯楽じゃん」
    B「いやいや、映画とは真の芸術ですぞ」
    C「映画も芸術だとは思うけど、絵画の方が高尚な芸術って感じがする」
    D「映画は芸術だって言うヤツは、きまって面倒くさいよな」

    さて、突然ですが、あなたはA~Cのどの意見に賛成しますか?(Dはたぶん正解)

    普段は何気なく観ている映画ですが、よくよく考えてみると「ヒーローが宇宙人と戦っている映画」は「芸術的」なのでしょうか?あるいは、いまハリウッドや日本で乱発されている「小説やマンガの映画化」には、原作を超えるなんらかの「芸術的価値」が生じうるのでしょうか?
    こうした問いについて考えること、それはつまり「映画とは何か」と問うことです。というわけで、前置きが長くなりましたが、今回はフランスの映画批評家アンドレ・バザンによる映画理論・批評をまとめた著作、『映画とは何か』の上巻を紹介します。本書に収められた論考は、個々の映画作品について論じたものから、映画理論と言えるものまで多岐に渡っていますが、それらはすべて「映画とは何か」という問いに対するバザンの応答として読むことができます。
    たとえば、バザンは「写真映像の存在論」と題された短い文章のなかで、画家の主観性が入り込まざるをえない絵画に対して、過程において人間が除外され、機械的に対象が再現されるというのが写真の独創性なのだと言います(写真の客観性)。これにより、写真映像は、絵画が持ちえない強力な信憑性を獲得することになったとされます。映画とは、こうした写真の客観性ないしリアリズムを基盤とするものです。
    また、本書上巻の白眉である「演劇と映画」という論考においては、演劇と映画(とりわけ演劇の映画化ということが出発点となっている)の比較がなされています。面白かったのは、「演劇は人間がいなければありえないものだが、映画におけるドラマは俳優なしでも成り立ちうる。パタンと閉じる扉や風に舞う木の葉、浜辺に打ち寄せる波、これらはそれだけでドラマチックな力を持ちうるのだ」という分析から始まる箇所(260頁)。映画が好きな方であれば、こうした「自然」だけを映した印象的なシーン、感動的なシーンをいくつも思い浮かべることができるでしょう。そして、バザンはここから、ドラマが演じられる「場」をめぐって演劇と映画の間にある差異について論を展開していくのです。
    そのほか、個別の作品に関する批評についても、ブレッソン『田舎司祭の日記』やロッセリーニ『ドイツ零年』などについてきわめて興味深い叙述がなされています……いや、そんな作品は知らないって?
    そう、本書の惜しむらくは、書かれた時代のために(戦後~1950年代 )、取り上げられる作品の多くが現代の若者にとっては馴染みのないものだという点。とはいえ、名画ばかりなので、これを機に見てみるのもオススメです。バザンの文章はちょっと難解です(少なくとも「モンタージュ」とか「表現主義」といった言葉を聞いてイメージできるくらいの慣れが必要)が、映画好きな方はもちろん、芸術に関心のある方にはぜひとも一読して欲しい作品です。
    (ラーニング・アドバイザー/哲学 KURIHARA)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1632769

  • ジャン・ルノワールとロベール・ブレッソンが大好きなのが伝わってくる。マルセル・パニョルが滅茶苦茶ディスられてる。
    例に挙げる作品がどれも古いから半分くらい知らなかったけど、それでも面白かった。ピカソは見てたから解説が面白かった。ドイツ零年と田舎司祭の日記が観たいな。
    小説と映画、演劇と映画、3つのモンタージュ、サイレントとトーキーの関係性、などなど幅が広いし説得力があるので凄く面白い。たくさん線を引いたからまた読み返そう。

  • (01)
    1950年前後,特にヌーベルバーグ前夜ともいえる50年代の論評群を中心に構成されている.
    『コンチキ』などの探検映画,ジャック・タチ,アルベール・ラモリス,ロベール・ブレッソン,演劇の題材を翻案した映画,マルセル・パニョル,オーソン・ウェルズ,ロジェ・レーナルト,ゴッホやピカソを扱った絵画映画,(超)西部劇のジョン・フォードからバッド・ベティカー,ロッセリーニやデ・シーカ(*02)そしてフェリーニーのイタリアのネオリアリズモといった具合に当時の新作を論じ,グリフィスの1910年代,エイゼンシュタインの20年代の過去の手法等の点検を行っている.
    隣接する芸術の分野として,小説,演劇,写真,絵画との関係を探り,新興芸術でもあった映画とその可能性を擁護している.映画分野については,サイレントとトーキー,俳優と非俳優,ドキュメンタリーとドラマ,象徴と現実,背景と運動,フレーム内とフレーム外,歴史と現在,モンタージュとパンといった対立項や共犯的な方法を巧みに扱いながら,「映画とは何か」についての,さしあたっての回答をさまざまに示してもいる.
    政治や社会,歴史へと溢れようとする映画の外延(外縁)における現象もとらえており,観客とカメラの関係にとどまらず,検閲という制度や夢という無意識にも言及し,映画という現象が人類の知のあり方に変容を迫っている事態をも告げている.

    (02)
    デ・シーカについては,『自転車泥棒』,『ミラノの奇蹟』,『ウンベルト・D』といったネオリアリズモの仕事について好意的に触れ,デ・シーカが振る舞った愛情と詩についての見解が注目される.また,エロティシズムについての一文も,公開されていた処刑の歴史にも触れながら,映画にある欲望の手触りについての表現を試みており,興味深い.また,背景的に配された自然がどのように演技と演出に参加してくるのかについても考察しており,映画が,俳優と俳優,俳優と作家,俳優と観客の関係を結ぶものでありつつ,その運動は,自然と社会を結びつけていたことも知る.
    当時のサルトルの思想の影響を読むことも可能であるが,ベルグソンについての言及もある.映画においては特に,持続という問題系が今後も製作と批評の鍵になるだろう.

  • 写真家・土門拳の「絶対非演出」という言葉をご存じの方も多いでしょう。被写体を操作せず、現実をありのままに写し取る――。1950年代、日本を代表する写真家がそう主張したとき、はるか西の地フランスでも、ある映画評論家が驚くほど似た思想を展開していました。アンドレ・バザンです。

    『映画とは何か』は、まさにその時期に書かれた映画論の古典です。バザンは、ハリウッド的な派手な演出や技巧的な編集を否定し、カメラが捉えた現実そのものの中に真実があると説きました。これは、写真の「演出を排す」と唱えた土門拳の思想と、不思議なほど響き合います。

    しかし、二人の「現実」への向き合い方には、微妙な違いもありました。土門は「主体の内面から湧き出る眼差し」を重視し、写真家の魂の叫びとしてのリアリズムを追求しました。『筑豊のこどもたち』や『広島』といった作品には、戦後日本の現実を凝視しようとする、痛切な意志が込められています。

    一方バザンは、より冷静に、しかし同時に詩的に映画を論じます。彼が注目したのは、映画という媒体そのものが持つ「現実を記録する力」でした。例えば、イタリア・ネオリアリズモの作品群を高く評価し、素人俳優の何気ない仕草や街の雰囲気まで含めて撮影することで、より深い真実に近づけると考えたのです。

    今日、私たちはスマートフォンで気軽に写真や動画を撮影し、加工アプリで「理想の一枚」を作り出す時代を生きています。そんな時代だからこそ、土門とバザン、この二人の表現者が追い求めた「真実の瞬間」について、あらためて考えてみる価値があるのではないでしょうか。

    『映画とは何か』は、単なる映画理論の本ではありません。それは土門拳の写真論とともに、「カメラを通して私たちは何を見るのか」という、より本質的な問いを投げかけているのです。インスタグラムに溢れる加工写真や、AIで作られた偽画像が話題となる現代。二人の先達の思索は、新たな光を放ち始めているように思えます。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706727

  • 7/13

  • つまんね〜、マックスと犬見ました

  • 目次

    1.写真映像の存在論
    2.完全映画の神話
    3.映画と探検
    4.沈黙の世界
    5.ユロ氏と時間
    6.禁じられたモンタージュ
    7.<span style="color:#0000ff;">映画言語の進化</span>
    8.不純な映画のために-脚色の擁護
    9<span style="color:#0000ff;">.『田舎司祭の日記』とロベール・ブレッソンの文体論</span>
    10.演劇と映画
    11.パニョルの立場
    12.<span style="color:#0000ff;">絵画と映画</span>
    13.ベルクソン的映画、『ピカソ 天才の秘密』
    14.『ドイツ零年』
    15.『最後の休暇』

  • 映画批評集。
    映画『ピカソ』に関する評など、映画が他のメディアと違い、何をなしうるのかを述べていて面白い。

  • 2015年8月新着

  •  個別の作品の批評というよりも、映画というジャンル全体に対しての批評になっていて、個人的には難しいタイプ本ではあったけど、小説と映画の比較や、他の作品との比較を用いたバザンの批評は一歩踏み込んでる印象は漠然と感じた。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003357811

  • 全2巻。

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著者プロフィール

著者アンドレ・バザン(André Bazin)1918年4月18日生まれ。40年代半ばからシネクラブ活動と並行して、『ル・パリジャン・リベレ』、『レクラン・フランセ』、『エスプリ』等の紙誌に映画評・映画論を寄稿。48年にシネクラブ「オブジェクティフ49」を組織し、翌年「呪われた映画祭」の開催にも尽力する。51年に『カイエ・デュ・シネマ』を創刊し、後にヌーヴェル・ヴァーグを担うことになる若き批評家たちが集う。主要論考をまとめた『映画とは何か』全4巻の刊行を前にして、白血病により、58年11月11日歿。2017年末にフランスで全集の刊行が予定されている。

「2015年 『オーソン・ウェルズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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