映画とは何か(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003357811

作品紹介・あらすじ

アンドレ・バザン(1918‐1958)はフランスの映画批評家。サイレントからトーキーへの移行に際し批評の分野で新時代を開き、自ら創刊した「カイエ・デュ・シネマ」で健筆をふるった。本書は彼の映画理論・批評の集大成の書である。上巻にはモンタージュの拒絶、映画と演劇の関係など映画における"現実"とは何かを追究した論考を収録。

感想・レビュー・書評

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  • A「映画なんて、ただの娯楽じゃん」
    B「いやいや、映画とは真の芸術ですぞ」
    C「映画も芸術だとは思うけど、絵画の方が高尚な芸術って感じがする」
    D「映画は芸術だって言うヤツは、きまって面倒くさいよな」

    さて、突然ですが、あなたはA~Cのどの意見に賛成しますか?(Dはたぶん正解)

    普段は何気なく観ている映画ですが、よくよく考えてみると「ヒーローが宇宙人と戦っている映画」は「芸術的」なのでしょうか?あるいは、いまハリウッドや日本で乱発されている「小説やマンガの映画化」には、原作を超えるなんらかの「芸術的価値」が生じうるのでしょうか?
    こうした問いについて考えること、それはつまり「映画とは何か」と問うことです。というわけで、前置きが長くなりましたが、今回はフランスの映画批評家アンドレ・バザンによる映画理論・批評をまとめた著作、『映画とは何か』の上巻を紹介します。本書に収められた論考は、個々の映画作品について論じたものから、映画理論と言えるものまで多岐に渡っていますが、それらはすべて「映画とは何か」という問いに対するバザンの応答として読むことができます。
    たとえば、バザンは「写真映像の存在論」と題された短い文章のなかで、画家の主観性が入り込まざるをえない絵画に対して、過程において人間が除外され、機械的に対象が再現されるというのが写真の独創性なのだと言います(写真の客観性)。これにより、写真映像は、絵画が持ちえない強力な信憑性を獲得することになったとされます。映画とは、こうした写真の客観性ないしリアリズムを基盤とするものです。
    また、本書上巻の白眉である「演劇と映画」という論考においては、演劇と映画(とりわけ演劇の映画化ということが出発点となっている)の比較がなされています。面白かったのは、「演劇は人間がいなければありえないものだが、映画におけるドラマは俳優なしでも成り立ちうる。パタンと閉じる扉や風に舞う木の葉、浜辺に打ち寄せる波、これらはそれだけでドラマチックな力を持ちうるのだ」という分析から始まる箇所(260頁)。映画が好きな方であれば、こうした「自然」だけを映した印象的なシーン、感動的なシーンをいくつも思い浮かべることができるでしょう。そして、バザンはここから、ドラマが演じられる「場」をめぐって演劇と映画の間にある差異について論を展開していくのです。
    そのほか、個別の作品に関する批評についても、ブレッソン『田舎司祭の日記』やロッセリーニ『ドイツ零年』などについてきわめて興味深い叙述がなされています……いや、そんな作品は知らないって?
    そう、本書の惜しむらくは、書かれた時代のために(戦後~1950年代 )、取り上げられる作品の多くが現代の若者にとっては馴染みのないものだという点。とはいえ、名画ばかりなので、これを機に見てみるのもオススメです。バザンの文章はちょっと難解です(少なくとも「モンタージュ」とか「表現主義」といった言葉を聞いてイメージできるくらいの慣れが必要)が、映画好きな方はもちろん、芸術に関心のある方にはぜひとも一読して欲しい作品です。
    (ラーニング・アドバイザー/哲学 KURIHARA)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1632769

  • ジャン・ルノワールとロベール・ブレッソンが大好きなのが伝わってくる。マルセル・パニョルが滅茶苦茶ディスられてる。
    例に挙げる作品がどれも古いから半分くらい知らなかったけど、それでも面白かった。ピカソは見てたから解説が面白かった。ドイツ零年と田舎司祭の日記が観たいな。
    小説と映画、演劇と映画、3つのモンタージュ、サイレントとトーキーの関係性、などなど幅が広いし説得力があるので凄く面白い。たくさん線を引いたからまた読み返そう。

  • (01)
    1950年前後,特にヌーベルバーグ前夜ともいえる50年代の論評群を中心に構成されている.
    『コンチキ』などの探検映画,ジャック・タチ,アルベール・ラモリス,ロベール・ブレッソン,演劇の題材を翻案した映画,マルセル・パニョル,オーソン・ウェルズ,ロジェ・レーナルト,ゴッホやピカソを扱った絵画映画,(超)西部劇のジョン・フォードからバッド・ベティカー,ロッセリーニやデ・シーカ(*02)そしてフェリーニーのイタリアのネオリアリズモといった具合に当時の新作を論じ,グリフィスの1910年代,エイゼンシュタインの20年代の過去の手法等の点検を行っている.
    隣接する芸術の分野として,小説,演劇,写真,絵画との関係を探り,新興芸術でもあった映画とその可能性を擁護している.映画分野については,サイレントとトーキー,俳優と非俳優,ドキュメンタリーとドラマ,象徴と現実,背景と運動,フレーム内とフレーム外,歴史と現在,モンタージュとパンといった対立項や共犯的な方法を巧みに扱いながら,「映画とは何か」についての,さしあたっての回答をさまざまに示してもいる.
    政治や社会,歴史へと溢れようとする映画の外延(外縁)における現象もとらえており,観客とカメラの関係にとどまらず,検閲という制度や夢という無意識にも言及し,映画という現象が人類の知のあり方に変容を迫っている事態をも告げている.

    (02)
    デ・シーカについては,『自転車泥棒』,『ミラノの奇蹟』,『ウンベルト・D』といったネオリアリズモの仕事について好意的に触れ,デ・シーカが振る舞った愛情と詩についての見解が注目される.また,エロティシズムについての一文も,公開されていた処刑の歴史にも触れながら,映画にある欲望の手触りについての表現を試みており,興味深い.また,背景的に配された自然がどのように演技と演出に参加してくるのかについても考察しており,映画が,俳優と俳優,俳優と作家,俳優と観客の関係を結ぶものでありつつ,その運動は,自然と社会を結びつけていたことも知る.
    当時のサルトルの思想の影響を読むことも可能であるが,ベルグソンについての言及もある.映画においては特に,持続という問題系が今後も製作と批評の鍵になるだろう.

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706727

  • 7/13

  • つまんね〜、マックスと犬見ました

  • 目次

    1.写真映像の存在論
    2.完全映画の神話
    3.映画と探検
    4.沈黙の世界
    5.ユロ氏と時間
    6.禁じられたモンタージュ
    7.<span style="color:#0000ff;">映画言語の進化</span>
    8.不純な映画のために-脚色の擁護
    9<span style="color:#0000ff;">.『田舎司祭の日記』とロベール・ブレッソンの文体論</span>
    10.演劇と映画
    11.パニョルの立場
    12.<span style="color:#0000ff;">絵画と映画</span>
    13.ベルクソン的映画、『ピカソ 天才の秘密』
    14.『ドイツ零年』
    15.『最後の休暇』

  • 映画批評集。
    映画『ピカソ』に関する評など、映画が他のメディアと違い、何をなしうるのかを述べていて面白い。

  • 2015年8月新着

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著者プロフィール

著者アンドレ・バザン(André Bazin)1918年4月18日生まれ。40年代半ばからシネクラブ活動と並行して、『ル・パリジャン・リベレ』、『レクラン・フランセ』、『エスプリ』等の紙誌に映画評・映画論を寄稿。48年にシネクラブ「オブジェクティフ49」を組織し、翌年「呪われた映画祭」の開催にも尽力する。51年に『カイエ・デュ・シネマ』を創刊し、後にヌーヴェル・ヴァーグを担うことになる若き批評家たちが集う。主要論考をまとめた『映画とは何か』全4巻の刊行を前にして、白血病により、58年11月11日歿。2017年末にフランスで全集の刊行が予定されている。

「2015年 『オーソン・ウェルズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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