饗宴 (岩波文庫 青 601-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003360132

作品紹介・あらすじ

原題の「シンポシオン」とは「一緒に飲む」というほどの意味。一堂に会した人々がワインの杯を重ねつつ次々にエロス(愛)讃美の演説を試みる。最後に立ったソクラテスが、エロスは肉体の美から精神の美、さらには美そのものへの渇望すなわちフィロソフィア(知恵の愛)にまで高まると説く。さながら1篇の戯曲を思わせるプラトン対話篇中の白眉。

感想・レビュー・書評

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  • 「コーラン」を読み終わったので哲学書再読キャンペーンを勝手に開催(といっても数冊)まずはやっぱり『饗宴』。最初に読んだのは澁澤龍彦にかぶれていた18~20代の頃だったと思う。澁澤龍彦のエッセイのどれかに『饗宴』の中でアリストファネスが語る「愛慕の説」について言及したものがあって(両性具有関係だったかな~もう覚えてないや)それで興味を持って読んだのでした。当時、うまくいえないけどなんていうか、目からウロコみたいな気持ちにさせられる説だったなあ。

    簡単に言うと、もとは完全体(球体で手脚それぞれ4本づつ)だった人間が神の怒りに触れて真っ二つにされたのが今の人間の姿、だからもう半分を探してるんだよっていう、ロマンチックさがあり。のちに映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の中でも「The Origin Of Love(愛の起源)」として歌われていて感動したものでした。

    もちろんその他の部分も興味深く読めます。饗宴というのは要するに飲み会、女子会ならぬインテリのオジサマたちが集って高尚な(?)お話をする会ではあるけど、今回のテーマは「愛(エロス)って何?」です!っていう、なんだろね、言ってること実はガールズトークと変わらないような気もちょっとしたり(笑)

    しかも古代ギリシャのオジサマたちの間では異性愛より少年愛のほうが高尚とされているので、ちょいちょい腐女子みたいな発言も。現代語でBL風に訳すと「アイスキュロス先生も書いてるけど、パトロクロス×アキレウスのCP最強だよね!パトロクロスがヘクトルに殺されたから仇とるとかアキレウスの愛深すぎる~!アキレウスのほうが年下で美少年でヒゲもなかったから受なんだよね!」みたいな(※意訳すぎ)

    終盤ではソクラテスの愛人であるところの美青年アルキビアデスが酔っぱらって乱入、痴話喧嘩というか惚気なのか愚痴なのか、かつてソクラテスに抱き着いて一晩過ごすも何もしてくれず、だったら逆がいいのか!?攻にまわればいいのか!?と思ったけどそれでも相手にしてくれず、ひどいと思わない!?という話になるのですが(※意訳)、つまりこれこそが「肉体ではなく精神のみの愛」「美を愛でるだけの愛」=プラトニック・ラブ!!!なのですよね。語源ですから。そういう本です(笑)というか、基本的に会話劇になってるから、小難しくなくてとても読み易いのがいいですね。

  • "読書する人だけがたどり着ける場所"
    に紹介されていたので読みました
    哲人達が愛について演説し合う話

    ギリシャ神話がわかったらもう少し理解できるだろうか、
    勉強してからまた読み返すかも

    思ったのは
    愛のことを普通に男性間の愛だと言ってること
    ソクラテスが出てきてようやく、生殖という現代っぽい切り口が出てきたけど、それにしても醜い者への愛はないみたいな発言は現代だとちょっと厳しいよな

  • 昔々、人間には男男、女女、男女、の3種類の性があった。人間は球体の体をしていて、二つの性が背中合わせになっていた。二つが合体して倍の能力を持っていた人間は、慢心して神さえ恐れない振る舞いをしたため、神は罰として人間を2つに分離した。こうして(半身の)男と女が生まれた。人間はかつて合体していた半身を求めてやまない。それが愛である。▼肉体的な愛よりも精神的な愛の方が優れている。肉体的な愛はなく精神的な愛のみの同性間の愛など。プラトン『饗宴』

    ※男女(アンドロギュノス)。

  • 愛について考える。

    最初の序説が長いけれど、この解説のおかげで本文がわかりやすくなってる。

    まず、ファイドロス、パゥサニャス、エリュキシマコスがエロスが人間にどんな影響を与えるか、について語る。そのあとのアリストファネスの話はラッドのオーダーメイドみたいなロマンチックなようでないような。
    そしてアガトンが愛の神エロスそのものを讃える。100ページ目の演説はそれだけで一編の詩のような美しさ。
    最後にソクラテスがディオティマとの対話を思い出して愛に関する真理、を発表する。

    愛とは善きものの永久の所有へ向けられたもの。
    人間は肉体においても精神においても絶えず新しくなり続けるのに、死ぬまでひとりの人間として認知され続けること。
    つまり、子孫を残すことは滅びゆくものの永遠への憧れを満たす手段であること。
    生きるとは美の本質を認識を目指すこと。

    あたりが好きかな。
    なぜ生きるのか、それは美しいとは何か知るためだ、って人生は希望があると思う。
    また、人は一瞬一瞬新しくなっている、ってのも明るい気持ちになれる。
    神々のエピソードを交えながら語られる、初めから最後まで飽きさせない一冊でした。そのうち読み返そう。

  • 面白かった。滑稽だけど、含蓄深いエロスに対する讃美の饗宴。
    しかしまあ少年愛が徳の高いものとみなされているのは笑うなあ

    ソクラテスが巫女に諭された話では、美が仏教の言う空のような語り方をされていて興味深く読みました。美の本質を観るに至るって、悟るってことじゃないのか。
    そのために「少年愛の正しい道を通」うってのがさすがです~
    ソクラテス先生を落とそうと誘ったのに全然のってくれないんだよこの人まじすごいよってぶっちゃけちゃう最後の語り手アルキビヤデスがもうすごいなあ笑 古典の自由さが好きよ

    モーリスで天王星人がゲイとされる所以、
    Hedwig And The Angry Inchの大好きな曲(The Origin of Love)のモチーフとなった神話?等、
    元ネタが読めて嬉しかった。
    ゲイ作品(だけではないだろうが)に多大なる影響を与えている偉大な哲学書。

  • 難しい…と思いながら読み終わってしまい、投稿まで時間が空いてしまった!
    難しいと感じる最大の理由は、「エロス」という神が一つの人物像(人ではないけど)なのか、それとも恋や愛という概念として語られるものなのかがなかなか掴めなかったことでした
    ネットに上がっている要約に助けられながら振り返ります。笑
    
    
    物語はソクラテス含む6人が、ギリシア神話のエロス神を称えるという形式で進んでいく。
    エロス=恋(少年愛)に関して、6人が様々な意見を戦わせる。
    
    ・古さゆえにエロス神は「善さ」の源泉であり、徳と幸福をえるために最も強い力となる
    ・エロスには2種類あるが、世俗的な恋ではなく、理性的な男性に対してのみ向かう恋が称賛に値する
    ・少年の美だけではなく、徳も同時に目指し徳を通じて善さの実現へと向かうエロスこそが称えられるべき
    ・完全なものへの欲望と追及が恋
    ・エロスは最も美しく高貴で幸福な神であり、正義の徳、慎みの徳、勇気の徳、知恵の徳を備えている
    
    5人の意見に対してソクラテスは、
    ・恋とは善きものと幸福を手に入れようとめがける欲望である
    ・愛には段階があり、肉体の美も恋の入り口として必要
    エロスは美への追及の道だという論を展開する。
    
    …
    
    自分の持っていないものや自分に欠けているものを相手に求める、というのは納得する。自分の知らない世界を知っている人や、自分が思い付かないような考え方をする人って素敵だなと思う。
    一方で、自分と似ているところや同じ感じ方をする人に惹かれるということもあるけど、ある程度の同質性の中にあっても結局はその中の違いに惹かれているということなのかしら
    
    そもそもこの饗宴の中では、恋と愛との区別があるのかな?世俗的な恋(男女の恋)を貶し、少年愛を貴ぶ意見もあったけど、ここではどちらも恋は恋なのでしょうか
    
    
    どんなにどのような恋が善いものであるかを考えても、心はなかなかコントロールできないものだけど、恋が自身の美への追求だという着地点は面白いなと思った。
    個人的には、歴史的にも現代でも「恋」はどちらかというと破滅として描かれるイメージがあるんだけど、それはわたしの中での恋っていうのは一時的な感情だからであって、ここで語られる恋とはまた違うのかなあ〜
    果てしない笑
    

  • 男女の恋愛ではなく、少年愛が主なテーマ。
    ギリシャ時代、少年愛こそが崇高なもので、女性に興味を持ってるような男はまだまだ人間としてレベル低いやつ、というような考えだったよう。
    フェミニストとしては、この時代で既に女性は男性に都合の良いように定義づけられてきたのか、、と悲しく思った。

    ただ、愛というものは、最終的には1つの対象に対するものではなく、広い後世の世代に対しての教育意欲を掻き立てる=社会全体への貢献欲に繋がる、という点は、
    自分自身の感覚や、アドラー心理学とも共通していて、やはり、人の欲求は最終的にそこに至るのだなと再確認できた。

  • 初プラトン、気合いを入れて読んだら、それほど難しくないし、短くてすぐ読了。古今東西、何千年も前から人は愛とはなんぞやと考え続けてきたんだと認識。善、美、徳といった、人が求めて行くより高いところに絶対的なイデアがあって、そこに導かれるための力が愛、ということなのか。どこか宗教にも通じていく考えなのだろう。

  • もっと難しいのかと思っていたけど、読んでみるとそうでもなく、面白かった。ギリシャ語がわかれば、詩的な面白さもわかるんだろうけれど…翻訳の限界。序文は解説なので、本文を読んでからのほうが理解しやすい。プラトン、というかギリシャ古典をまともに読んだのが初めてなので、ここから周辺へ広げていきたい。
    しかし、どうしても、閉じられたサロンでの机上論、と見えてしまうが、ソクラテスは実践してた人らしいので、やっぱ当時としても特別というか変わり者だったんでしょうね、だからすごいんだけど。

  • フィックションだが、登場人物がリアルすぎて、しかも紀元前。本当の話のように…

    この中で出てくる、ソクラテスの雄弁さと説得力ある講釈、その弟子プラトンも侮れない…

    エロースとはをテーマに書かれる愛=人間⇨智慧。

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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