神学・政治論 上巻―聖書の批判と言論の自由 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003361511

感想・レビュー・書評

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  • スピノザを読んだのは本書が初めてであったが、この著作は近代聖書学の先駆け
    であると聞いていたので、とても興味深く読めた。何よりも心に
    残ったのは、聖書観の部分である。当時の教会に対する批判から、その神学に対する
    批判へと向い、それが聖書観の議論に至る。聖書は難解な哲学や思想を伝えるもので
    はなく、ただ神に服従することだけを説く、というこの主張は、あるキリスト教の流
    れの中にある。それはすなわち、コルプス・クリスティアーヌム(キリスト教世界)
    を前提とした教会体制に対して真っ向から反対した「自由教会」の精神である。
    教会が(聖俗関らず)支配的権威と結びつく時、それは知的階級と結びつくこととも
    相まって、難解な哲学的信仰理解(ヘレニズム化)となってきた。それに対する反動
    として、イエスに範を取った、権力に対する
    「革命的従属」の主張が表れる。直接的な接触の有無は分からないが、国定宗教に対
    する反発として、スピノザの聖書理解はアナバプティズムと軌を一にしているように
    思われる。

著者プロフィール

1632年11月24日オランダ、アムステルダムのユダヤ人居住区で商人の家に生まれる。両親の家系はイベリア半島でキリスト教へ改宗したユダヤ人(マラーノと呼ばれる)で、オランダに移住し、ユダヤ教の信仰生活を回復していた。ヘブライ語名バルッフ(Baruch)、ポルトガル語名ベント(Bento)、のちにラテン語名ベネディクトゥス(Benedictus)を用いた。ユダヤ教会内で早くから俊才として注目されたとも伝えられるが、1656年7月27日、23歳のときに破門を受ける。友人・弟子のサークルとつながりを保ちながら、ライデン近郊ラインスブルフ、ハーグ近郊フォールブルフを経て、ハーグに移る。1677年2月21日ハーグで歿す。同年、「エチカ」を含む『遺稿集』が刊行される。他の著作は「デカルトの哲学原理」、「神学・政治論」、「知性改善論」(未完)、「政治論」(未完)、「神、人間とそのさいわいについての短論文」、往復書簡集ほか。

「2018年 『スピノザ エチカ抄 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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