知性改善論 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 畠中 尚志 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 175
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003361535

感想・レビュー・書評

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  • オランダの哲学者バールーフ・デ・スピノザの初期の論文とのことだが、中断されたままの状態で遺稿集として発表されたという。あるいは、彼の主著『エチカ』のプレリュードだともいう。
    名誉や富や官能といった欲望ではなく、人間が求めるべき真の善とは何か?それは、精神と全自然との合一性を認識するという完全性(本性)を獲得することにある。そして、そのためには知性を矯正・浄化し、結果、正しく理解できるようにせねばならない。本書ではそうした正しい真なる観念を取得するための方法論を示している。
    但し、過酷な修行の末の到達はスピノザの本意ではなく、あるいは民衆と戯れ、健康のために快楽は否定せず、必要なだけの生活上の金銭がかかることも肯定している。(笑)
    その上で、まず自らの知覚様式を改善し、事物のその本質のみによって、あるいは、その最も近い原因の認識によって知覚するべきとする。さて、こうした認識にいたる方法としては、形相的本質(対象)を感受する想念的本質(観念)を有する必要があり、この真の観念の獲得のためには、その他一切の知覚から切り離し、規範・秩序に従い、できるだけ早く完全者へ到達すべきだとしている。
    真の観念に相対する観念としては、虚構された観念、虚偽の観念、疑わしい観念があるが、混同しないように精神を抑制する必要がある。それらは精神の能力ではなく、外的要因から生じた表象によるものであるから、本性を識る妨げにならないよう区別せねばならないとする。
    次にスピノザは、個々の事物をよりよく定義し発見することで、その本質に近づく必要があるとし、その定義の条件を定めた上で、最上の結論は特殊的肯定的本質から引き出されるべきであるから、観念についての特殊性を多く認識せねばならないとする。ところで、個々の事物は無限にあり変化するものだから、それを補足することは人間の知力には難しいし、それ自体は本質でもない。永遠なる事物とその法則を理解するには、補助手段が必要であるが、それはまた別の機会に述べることとし(笑)、やはり基礎は真理の形相を構成するものの認識、および知性とその諸特性と力の認識であるとして、ニワトリとタマゴのどっちが先かという無限ループに陥っていっていくのである・・・。訳者はこの論理のループが未完の理由ではないかと推論している。
    しかし、昔の哲学者は大それたことを考えていたものだ!(笑)神の領域(?)に論理的に到達する方法なのか?実際、どのような完全性を探求しているのかはそれこそ観念的過ぎてわからないのだが(笑)、本筋とは別に論理地獄にさらされていく流れが面白かった。(笑)あと、いろいろな例えを挙げて説明しているのだが、現代の感覚ではハズしているようにも思え、例自体がよくわからなかった・・・。(笑)

  • スピノザの未完の著作。説かれていることを読み解くのは容易ではないですね。

  • 『エチカ』の劈頭があのような唐突な定義から始まるのは、この『知性改善論』が序文・序論に当たるからなのだという見解もあるくらい、『エチカ』と関連の深い重要な著作。とはいえ、こちらでの哲学的探求における困難とそれに伴う未完が、『エチカ』で完全に解消されているかというとそうでもなく、その埋めがたい断絶(あるいは転向と呼んでしまってもいいかもしれない)が却ってこの本の独自性を浮き彫りにしている点でも、極めてユニークな一冊であると思う。

  • 未完ではあるけれどエチカと同じくスピノザらしいテキスト。日本的な生活をしているとスピノザの世界観は割にしっくりくるように思う。

  • 読み始めると、二三ページで寝れる。読み進まないよー

  • 最優先図書。

  • ・民衆の知に適合して語り、且つ我々の目標達成に妨げとならないことなら、すべてこれを避けないこと。
    ・快楽は健康を保つのに必要な程度において享受すること。
    ・最後に生命と健康を支えかつ国の諸風景に従うのはに必要なだけ、金銭その他のものを求めること。

    精神がものを理解することが多くなるにつれて、同時に精神は理解の道を一層容易にたどるための新しい諸道具を獲得していくということ。

    精神は自らの力をよく理解すればするだけますます用意に自分自身を導くこと、並びに自らのために諸規則を立てることができるし。また自然の秩序をよく理解すればするだけますます容易に自らをもろもろの無益なものから遠ざけることができる。

    記憶は知性の助けによっても強まり、また知性の助けがなくても強まるということ。

  • こういう逆説的な説明の仕方は、好きじゃない。
    真の幸福は、精神と全自然との合一性の認識を享受することにある という部分をもっと端的に書いてほしい。

  • \105

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著者プロフィール

1632年11月24日オランダ、アムステルダムのユダヤ人居住区で商人の家に生まれる。両親の家系はイベリア半島でキリスト教へ改宗したユダヤ人(マラーノと呼ばれる)で、オランダに移住し、ユダヤ教の信仰生活を回復していた。ヘブライ語名バルッフ(Baruch)、ポルトガル語名ベント(Bento)、のちにラテン語名ベネディクトゥス(Benedictus)を用いた。ユダヤ教会内で早くから俊才として注目されたとも伝えられるが、1656年7月27日、23歳のときに破門を受ける。友人・弟子のサークルとつながりを保ちながら、ライデン近郊ラインスブルフ、ハーグ近郊フォールブルフを経て、ハーグに移る。1677年2月21日ハーグで歿す。同年、「エチカ」を含む『遺稿集』が刊行される。他の著作は「デカルトの哲学原理」、「神学・政治論」、「知性改善論」(未完)、「政治論」(未完)、「神、人間とそのさいわいについての短論文」、往復書簡集ほか。

「2018年 『スピノザ エチカ抄 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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