ニュー・アトランティス (岩波文庫)

著者 :
制作 : 川西 進 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 115
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003361740

感想・レビュー・書評

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  • 社会的にそれなりの成功を収めたような人が進む次のステージは、世界を変えることだと思うが、そこに進んだ人たちにとっては現実に即した知識では不十分で、往々にして、フィクションからインスピレーションを受けているように見える。「ニューアトランティス」で描かれる、科学技術を究極まで推し進めたような世界観は、そういう人たちにとって刺激的なのかもしれないと思った。

    個人的には、「サロモンの家」の構成員の役割が面白いと感じた。ここで述べられている役割分担が、現在の科学研究と大して変わらないのが興味深い。科学的なアプローチというのは人間が普遍的に馴染む思考様式なのかもしれない。

  • 確かに日本に向かうとの記述あり。ベンサレムの国のサロモンの家は、メイスンを彷彿とさせる。口絵の森の森はボアズとジャキンのよう。挿絵は、薔薇十字の知恵の鏡は意図的か?

  • 未完に終わった、ベーコンの遺稿である。66頁。ウィリアム・ローリー「フランシス・ベーコン伝」を付し、全部で125頁。

    アトランティス大陸にある理想郷「ベンサレム」の衣食住、地理、歴史等々を掻い摘んだ後、学問の府「サロモンの家」で実験されている様々な科学技術を紹介して終わり。

    トマス・モアの『ユートピア』と比べると、どうしても抽象的かつ不十分な印象を否めない。モアのユートピアは私有財産を禁じていたが、ベンサレムはどうなのか触れておいてほしかった。貴金属に対する価値観の違いからいって、ベンサレムには貨幣が存在したのかも知れない。

  • 「哲学を少しかじると、とかく物事を第二原因のせいにして、神を忘れがちになるが、哲学を究めると、再び神に戻る」。

  • 論文を読んでいてちょくちょく出てくる「サロモンの家」の概念の理解のために購入。

    文庫本サイズで、訳者解説込みで120ページしかないからさらさらっと一日で読めた。

    「サロモンの家」の概念が、イギリス王立学士院やフランス科学協会の設立を促した。科学者の夢。

    科学を組み込んだ社会の理想像を、それが実現されている架空の島「ベンサレム島」に著者が流れ着いた、という設定で展開される。

    ベーコンの著作を読むのはこれが初めてで、次は「学問の進歩」に進む予定。

  • プラトン、トマスマンに続くユートピア(楽園)物語。
    荒海にのまれ、為すすべのなくなった航海者たちが、
    なんとか陸地を発見し、そこで、厚遇される。

    その土地は、「ベンサレムの国」と呼ばれて、
    地図にものっていないような島国であるが、
    キリスト教の教えを守っているユートピア(ニューアトランティス)である。

    この土地の人々はキリスト教を厚く信仰しており、
    (唐突に海に光の柱がたって、聖書のはいった棺がその後に残った)
    さらに、一夫一妻制で、売春などをきっちりと禁じている。
    家父長精度がしっかりとしており、国がそれをバックアップする。
    漂流者を厚遇し、そのかわり出て行くときはこの地については、
    秘密にするよう支持される。
    さらに、研究施設「サロモンの家」があり、
    そこには哲学などのほかに科学的研究施設も据え置かれており、
    むしろ科学がメインとなっている。

    といった感じで、ベーコンの思い描くユートピアが描かれている。
    ちなみにこれは立派な文学となっている。
    おまけに内容としては宗教学がつづられるが、
    そもそもベーコンは哲学者として一般に知られている。
    しかし、ベーコンの哲学は帰納法であり、それは科学に相通じており、
    「博物誌(森の森)」に収められている。
    (まぁ、地中での長生きや、錬金術まがいの怪しげな科学も、
    本編では紹介されているけれど)
    そのため、科学に関しては当時の最先端のものが描かれている模様。
    さらにベーコンは詩人であり、
    実はメインでは政治家、法律家として活躍していた模様。
    要するになんでもできちゃうタイプだったようだ。
    政治法律から詩文学から、宗教哲学、さらには科学。
    今の時代はこれだけを網羅できるひとはいない。
    せいぜい、医者と文学だとか政治法律と文学だとか科学と文学、
    だとかそのくらいが限界だろう。
    そういう意味において、このひとは超人だったと思われる。
    しかし、ゲーテも何でもマンだったわけで、
    そういう意味において、この頃は一つの分野における専門領域が、
    広がりすぎて、どうにも専門家ばっかりが増えてるみたいだね。
    医者も、内科しかわからんとか、そういう感じになりつつあるみたいで。
    さらに細分化。
    細分化も必要だけど、総合的に俯瞰できるひとこそが、
    その技術を使いこなせるわけで、使いどころもわかるわけで、
    さらに技術を結び付けての新技術にも思い至るわけで、
    こういうひとが現代は求められているのかもね。


    ちなみにニューアトランティス。
    というのは、プラトンが言ったアトランティス。
    現在ではその場所はカリブ海あたりにある島だと推測されているのだけど、
    本著では「アメリカそのもの」として考えらている。
    どうやら、アメリカはかつて大航海(侵略)を行っていて、
    その天罰として大洪水が起こり低地における文明は滅び、
    食糧危機により低地以外で生活していた人々も死に絶え、
    後には山中で暮らしていた遅れた人々だけ=インディアン、
    だけが残ったと言う流れである。
    そのため、インディアンは千年ほど文明が遅れている、
    野蛮なひとびとである、なんていう酷いか描かれ方をしている。
    全体的に西欧中心主義と女性蔑視的な価値観はまぁ当時の、
    主流な考え方かなぁ。
    (西欧中心主義は現存しているけれど)
    とはいえ、アメリカっていう国は基本的に、ピルグリムファーザー、
    以降に成立したようなものでもあるので、
    なんつーか、歴史自体は、まだ千年も経っていないわけで、
    意図していない痛烈な皮肉になっている気がする。

  • この本自体がフィクションは寓話でなければならないという思想そのもの。

  • ユートピアより面白いかな。

  • 近代学問理念の予言書
    本書はイギリスの経験論哲学の祖フランシス・ベイコン晩年の未完の書であり、プラトンのアトランティス物語を下敷きに、「新しきアトランティス」として「ベンサレムの島」を登場させ、ヨーロッパの航海者が偶然にそこへ漂着し、この島国の社会体制、風習を見聞し、さらに理想の学問研究の組織である「サロモンの家」のあり方が描写される。
    「知は力なり」という言葉もあるように、ベイコンの学問研究の理想は、学問を頭の中での思索・瞑想に終わらせず、人間の日常生活の向上のために役立つものとすることであり、そのための見取り図として本書が書かれた。しかし同時に、ベイコンの描く「サロモンの家」の研究員は、ただの自然科学者ではなく、「われらの労働に光を与え、それを聖かつ善なることに用いられるよう、神の助けと祝福を乞う」賢者でもあり、科学技術の発達による恩恵と同時に、その暴走の危険性も十分自覚していたことが印象深い。
    本書の構想の影響は大きく、1660年のイギリスの王立協会の設立、1666年のフランスの王立科学アカデミーの創設を促したとされる。また「サロモンの家」には、同時代にヨーロッパ思想界の話題を席巻した「薔薇十字運動」との関連も研究者により指摘されていて、興味は尽きない。

  •  科学が行きつくであろう先が理想的に生活に組み込まれた社会はどのようなものなのか?を著した本(未完)。

     ベーコンが描くこの理想郷は、実に理想でしかない。現実をその理想に至らしめるには、いくつか解消すべき問題がある。

    ?いかにして私利私欲に走る者の発生を抑えるのか?
     理想郷に住む人々は、「道に誤りし者には叱責を加える」わけだが、そのためにはまず指標となる道が必要となる。その道は全員にとって有益でなければならない。しかし、指標となる道が全員の利益たりうることはありえない。卑近な例でいえば、政党のマニフェストを見ればわかる。
     すなわち、どのような道であっても漏れる人が出てきてしまう。彼らを道に沿わせるためにどのような措置を取るべきなのか?

    ?全員の欲求を満たすほどの富が存在しうるのか?
     科学を発展させる。人々の健康を守る。などには莫大なお金や資源が必要となるが、それらは果たして人々全員の欲求を満たせるほど存在するのか?

    これらを解消できないと、実現には程遠い。。そんな現実との乖離部分を明らかにするのがこの本の意義のひとつかもしれない。

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