君主の統治について―謹んでキプロス王に捧げる (岩波文庫)

制作 : Thomae Aquinatis  柴田 平三郎 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 68
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362129

作品紹介・あらすじ

中世最大の哲学者であり、『神学大全』で知られるスコラ学の代表的神学者トマスの政治思想論文。西欧文学に伝統的な"君主の鑑"とよばれる文芸ジャンルの体裁にのっとって理想の君主像や統治の形態などを論じる本書は、トマスの著作のなかで政治学に関する唯一のものである。"君主"とは、いかにあるべきか。

感想・レビュー・書評

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  • 高校世界史で、トマス・アクィナス=『神学大全』と呪文のように憶えた彼の政治思想論文。(笑)あとがきの「訳者解説」に本書の由来や意味などについて詳しく論述されていてとても勉強になった。
    西欧中世におけるスコラ学の代表的神学者にして西欧中世最大の哲学者である著者が、5世紀のアウグスティヌス以来の伝統を持つ「君主の鑑」の体裁にのっとり、理想の君主のあるべき姿を「旧約聖書」などから多くを引用して記載したものということである。だが諸説があるものの、献呈予定であったキプロス王が執筆途中で死んでしまったため、執筆自体も中断されてしまったとのこと。「政治」というものの出発点に、人間を「社会的および政治的動物」と定義し、伝統的キリスト教思想体系に加え、アリストテレスの政治思想を巧みに融合しているところに特色があるという。
    同じことが繰り返し記述されていたり、いきなり具体的な話になったり、引用や論理展開がストレートに結論に結び付かないような箇所があったりと執筆途中だなと窺わせるところもいろいろあると思ったが、論旨が明解な上に、引用する話に面白い物語が含まれていたりとなかなか興味深かった。内容はいたってシンプルであるが、とりあわけ興味深かったのは以下のところ。様々な政体の中で1人が統治する王政が一番優れている。王が僭主(悪王)になっても迂闊に打倒すると次の政権はより酷くなる可能性もある(「アラブの春」後の状況が思い浮かんだ・・・)。王の目的は「共通善」をもたらすこと。王はそれにより獲得される名誉や栄光をもとめてはならない、それは神により与えられるもので天上の浄福が約束されている。王の役割は身体の頭、船の船長のようなものである。都市建設の場所は健康に良く風光明媚で自給自足できるところ。商取引は食糧流通とか外国人との共生とか商人的体質などの観点で有害なのでほどほどに、などなど。
    『神学大全』を読んでみたくなったが、AMAZONでみるとこれは結構な大著で、ちょっと今は無理かな・・・。(笑)

  • アリストテレスを受容したスコラ哲学による政治学とは何か、ということをトマス・アクィナスは書いている。中を見ていくと、君主制/僭主制、貴族制/寡頭制、政体/民主制、それぞれ前者が正しく(公の利益を求めている)、後者がわるい(私益を求めている)、とする。ちなみに君主制が最善で、僭主制が最悪とする。

    以前大学の講義で、西洋哲学はロールズ、ロック、カント、(プラトン)を系譜とする「自由・人権」、アリストテレス、サンデルを系譜とする「徳・共同体」、(エピクロス)、ミル、ベンサムを系譜とする「功利主義」があると習った(これが必ずしも正しいのかどうかは私もすこし疑うが)。私はこれに、トマス・アクィナス(とそれに影響を与えたイブン・ルシュド)を共同体の系譜の中に入れる事ができるとは思う。「共通善」や「公の中で徳を求めるべきだ」などとつねにアキナスは説く。共同体主義者とされるサンデルは、「今までの政治哲学中で、アリストテレスのような考えを持つ人は、近代にはいなかった。」と振り返る。たしかに、アクィナスはむしろルネサンスの過程で唾棄されてしまったのかもしれないが。

    ただ、いつも思うのは「君主制がいいのだ。」と云われたところで、いままでの政体は総じて「僭主政から民主政への転換」であり、決して「君主制から政体」ではないことに注意が必要だ(その意味で一種の「君主制」を実行しようとしたのがボルシェビズムでありファッシズムなのかもしれないが)。

    あいも変わらず人間は進化しないいきものだ。

  • [ 内容 ]
    中世最大の哲学者であり、『神学大全』で知られるスコラ学の代表的神学者トマスの政治思想論文。
    西欧文学に伝統的な“君主の鑑”とよばれる文芸ジャンルの体裁にのっとって理想の君主像や統治の形態などを論じる本書は、トマスの著作のなかで政治学に関する唯一のものである。
    “君主”とは、いかにあるべきか。

    [ 目次 ]
    生活を共にする人びとは誰か王によって慎重に統治されるのが必要であること。
    生活を共にする人びとにとっては、一人の人間によって統治されるほうが、複数の人間によって統治されるよりも、より有益であること。
    一人の支配が正しいがゆえに、最善であるように、その反対は最悪であること、そのことは多くの理由および論拠によって証明される。
    ローマ人の間で支配権はいかに変遷したか、またかれらの間ではむしろ多数者支配の国家がしばしば発達したということ。
    多数の支配においては、一人の支配におけるよりも、しばしば僭主制的支配が生じること、したがって一人の支配のほうが優ること。
    一人の支配が確かに最善であるとの結論。民衆はその人に対してどのような態度をとるべきか、を示す。それは僭主制に陥る機会をかれから取り除くことが必要だからである。そしてより大なる悪を避けるためにこの支配が認容されるべきであること。
    本章で聖博士は、現に王の統治において主要な動機となるのは名誉か栄光のいずれであるか、そしてさらにそれらのいずれを守るべきか、について見解を示す。
    本章で博士は、王をして善き統治へと促す真の目的とは何か、について説き明かす。
    本章で聖博士は、王侯君主の報酬が天上の浄福において最高の位置を占めることを説き明かし、そのことを数多くの理由と実例によって指し示す。
    王侯君主はそこより生じる自己自身の善と利益のために善き統治を熱心に求めねばならないこと。その反対から僭主制的支配が生じること。〔ほか〕

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 中世最大の哲学者であり,大著『神学大全』で知られるスコラ学の代表的神学者トマスの政治思想論文.西欧文学に伝統的な〈君主の鑑〉とよばれる文芸ジャンルの体裁にのっとり理想の君主像や統治の形態などを論じる本書は,トマスの著作のなかで政治学に関する唯一のものであり,またトマス思想全般の理解にも不可欠の書である.

  • 中世を代表する神学者、トマス・アクィナスが遺した政治に関する論文。アリストテレスの『政治学』に多くのものを負いつつも、最善の国制とは何かという根本においてはアリストテレスとは違い、王制を最善のものとする。現代的な視点から見ると、そこにトマスの限界を認めてしまうが、近代のもたらした帰結を考える時、トマスの議論を乗り越えることなくしては民主主義政体が優れているとは主張しがたいだろう。

  • 岩波文庫(青) 080/I
    資料ID 20102004635

  • まあ、似たようなことはいろんな人が書いているんだけど、中世のこの時期にトマスが書いたということが重要なんだろうなあ。
    フーコーの「生の統治」の観点で読んでしまった。そうすると興味深い部分があった。

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