- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003362129
感想・レビュー・書評
-
高校世界史で、トマス・アクィナス=『神学大全』と呪文のように憶えた彼の政治思想論文。(笑)あとがきの「訳者解説」に本書の由来や意味などについて詳しく論述されていてとても勉強になった。
西欧中世におけるスコラ学の代表的神学者にして西欧中世最大の哲学者である著者が、5世紀のアウグスティヌス以来の伝統を持つ「君主の鑑」の体裁にのっとり、理想の君主のあるべき姿を「旧約聖書」などから多くを引用して記載したものということである。だが諸説があるものの、献呈予定であったキプロス王が執筆途中で死んでしまったため、執筆自体も中断されてしまったとのこと。「政治」というものの出発点に、人間を「社会的および政治的動物」と定義し、伝統的キリスト教思想体系に加え、アリストテレスの政治思想を巧みに融合しているところに特色があるという。
同じことが繰り返し記述されていたり、いきなり具体的な話になったり、引用や論理展開がストレートに結論に結び付かないような箇所があったりと執筆途中だなと窺わせるところもいろいろあると思ったが、論旨が明解な上に、引用する話に面白い物語が含まれていたりとなかなか興味深かった。内容はいたってシンプルであるが、とりあわけ興味深かったのは以下のところ。様々な政体の中で1人が統治する王政が一番優れている。王が僭主(悪王)になっても迂闊に打倒すると次の政権はより酷くなる可能性もある(「アラブの春」後の状況が思い浮かんだ・・・)。王の目的は「共通善」をもたらすこと。王はそれにより獲得される名誉や栄光をもとめてはならない、それは神により与えられるもので天上の浄福が約束されている。王の役割は身体の頭、船の船長のようなものである。都市建設の場所は健康に良く風光明媚で自給自足できるところ。商取引は食糧流通とか外国人との共生とか商人的体質などの観点で有害なのでほどほどに、などなど。
『神学大全』を読んでみたくなったが、AMAZONでみるとこれは結構な大著で、ちょっと今は無理かな・・・。(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
開始: 2024/4/30
終了: 2024/6/6
感想
ひたすらに徳を修養する。君主に求められるのは何か。マキャベリは狡猾さと言った。その新しさと驚き。その原点に触れる。 -
原書名:De regimine principum,ad regem Cypri(Thomas Aquinas, Saint, 1225?-1274)
著者:トマス アクィナス(1225?-1274)
訳者:柴田平三郎(1946-) -
中世最大の哲学者であり,大著『神学大全』で知られるスコラ学の代表的神学者トマスの政治思想論文.西欧文学に伝統的な〈君主の鑑〉とよばれる文芸ジャンルの体裁にのっとり理想の君主像や統治の形態などを論じる本書は,トマスの著作のなかで政治学に関する唯一のものであり,またトマス思想全般の理解にも不可欠の書である.
-
中世を代表する神学者、トマス・アクィナスが遺した政治に関する論文。アリストテレスの『政治学』に多くのものを負いつつも、最善の国制とは何かという根本においてはアリストテレスとは違い、王制を最善のものとする。現代的な視点から見ると、そこにトマスの限界を認めてしまうが、近代のもたらした帰結を考える時、トマスの議論を乗り越えることなくしては民主主義政体が優れているとは主張しがたいだろう。
-
まあ、似たようなことはいろんな人が書いているんだけど、中世のこの時期にトマスが書いたということが重要なんだろうなあ。
フーコーの「生の統治」の観点で読んでしまった。そうすると興味深い部分があった。
トマスアクィナスの作品





