社会契約論 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 桑原 武夫  前川 貞次郎 
  • 岩波書店
3.55
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本棚登録 : 1012
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362334

作品紹介・あらすじ

これはもっとも徹底的な人民主権論を説いた書物である。国家は個々人が互いに結合して、自由と平等を最大限に確保するために契約することによって成立する。ルソー(1712‐78)はこの立場から既成の国家観をくつがえし、革命的な民主主義の思想を提示した。フランス革命の導火線となった近代デモクラシーの先駆的宣言の書。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。画期的とされるルソーの本書(1762)はジョン・ロックの「統治二論」(1690)の考え方をベースにしているように思われる。しかし、そこからいきなり跳躍して、主権者は市民であり、政府は主権者に雇われているだけだ、という民主主義を打ち出してフランス革命を招いた、とされる。
    ただし私の印象では、ルソーは文学者的な情緒性をもち、それはしばしば「幼児的」とも言える側面で、そうと決め込んだ理想にひた走り出すと、あの「エミール」のような馬鹿馬鹿しい空想教育論に結実する。
    本書でも(訳文のせいかもしれないが)ルソーの筆致にはしばしば情緒性が顕著であり、私はどちらかというと、クールなジョン・ロックの方が好きだ。
    しかしルソーの思想の画期的なところは、法をつくりだす「一般意志」にもとづく「主権者」と、法に従う「被治者」とを、おなじ「市民」の両面として同居させるという卓抜な発想にあると言えるだろう。
    ただこの「一般意志」という概念はルソーの空想性・理想主義がモロに出たものであり、それは必ずしも「多数者の意見」とも限らず、具体的にはどうも明確でない。
    最後の方でローマの「民会」について詳細に述べられているが、そこで著者が力説しているのは、代議者選出のような間接民主制にとどまらず、結集した市民による「直接民主制」的なものだ。しかしこれだと「主権者は立法権しかもたない」という彼の理論から逸脱してしまうと思うのだが。
    「この人民の集会は、いつの時代にも首長たちの恐れるところであった。だから、彼らは、集まっている市民に、いやがらせをするために、つねに、配慮、反対、妨害、甘言を惜しまなかった。」(P131)
    といったくだりは、まるで日本の先日の安保反対デモに対する警察や与党の妨害・反抗を表現しているようで面白い。
    理想を掲げるロマンティストであるルソーは、しかし、すべての国家は結局衰退へと向かうというペシミズムをも示しており、このアンビバレンツぶりは魅力的でもある。
    まあ、ルソーがえがいた国家の基準からしても、現代日本は相当腐敗していることだけは確かだ。
    結局私はルソーの「一般意志」なるものは存在しないか、それを見極める者はこの世にいないと考える。それは孤独な散歩者の夢想であった。

  • (2017.06.26読了)(2006.06.23購入)(1993.09.15・第55刷)
    二十歳前後のころからこの本は読んでおこうと思いながら、半世紀すぎてしまいました。
    昨年6月に「100分de名著」で『エミール』が取り上げられ、『エミール』の最後の方で、『社会契約論』の内容が盛り込まれていることを知りました。『エミール』を読みたいけど、その前に、『社会契約論』を読んでおいた方がいいかな、と思いました。
    さらに、「フランス革命」の本を読んでいたら「フランス革命」に影響を与えた本が『社会契約論』であることを知りました。
    そんなこんなで、やっとこの本を読む、(本に一通り目を通す)ことができました。残念ながら、書いてあることをほとんど理解できませんでした。
    ジャン・ジャック・ルソーの著作は、結構文庫に入っていて近づきやすくなっているので、この本に懲りずに少しずつ読んでいこうと思います。

    1750 : 『科学と技芸についてのディスクール』日本語訳『学問芸術論』
    1755 : 『人間不平等起源論』
    1761 : 『ジュリ または新エロイーズ』
    1762 : 『エミール または教育について』
    1762 : 『社会契約論』
    1781 : 『言語起源論』
    1770 : 『告白』
    1778 : 『孤独な散歩者の夢想』

    「一般意志2.0」東浩紀著、も手元にあります。近々読めればと思います。

    【目次】
    まえがき  桑原武夫
    はしがき
    第一編
     ここでは、いかにして人間が自然状態から社会状態に移るか、また社会契約の本質的諸条件はいかなるものであるか、が探求される
     第一章 第一編の主題
     第二章 最初の社会について
     第三章 もっとも強い者の権利について
     第四章 ドレイ状態について
     第五章 つねに最初の約束にさかのぼらねばならないこと
     第六章 社会契約について
     第七章 主権者について
     第八章 社会状態について
     第九章 土地支配権について
    第二編
     ここでは、立法がとりあつかわれる
     第一章 主権は譲りわたすことができないこと
     第二章 主権は分割できないこと
     第三章 一般意思は誤ることができるか
     第四章 主権の限界について
     第五章 生と死の権利について
     第六章 法について
     第七章 立法者について
     第八章 人民について
     第九章 人民について(つづき)
     第十章 人民について(つづき)
     第十一章 立法の種々の体系について
     第十二章 法の分類
    第三編
     ここでは、政治の法、すなわち政府の形態がとりあつかわれる
     第一章 政府一般について
     第二章 政府のさまざまの形態をつくる原理について
     第三章 政府の分類
     第四章 民主制について
     第五章 貴族政について
     第六章 君主政について
     第七章 混合政府について
     第八章 すべての統治形態は、すべての国家に適合するものではないこと
     第九章 よい政府の特長について
     第十章 政府の悪弊とその堕落の傾向について
     第十一章 政治体の死について
     第十二章 主権はどうして維持されるか
     第十三章 主権はどうして維持されるか(つづき)
     第十四章 主権はどうして維持されるか(つづき)
     第十五章 代議士または代表者
     第十六章 政府の設立は決して契約ではないこと
     第十七章 政府の設立について
     第十八章 政府の越権をふせぐ手段
    第四編
     ここでは、引きつづき政治の法をとりあつかいつつ、国家の体制をかためる方法がのべられる
     第一章 一般意志は破壊できないこと
     第二章 投票について
     第三章 選挙について
     第四章 ローマの民会について
     第五章 護民府について
     第六章 独裁について
     第七章 監察について
     第八章 市民の宗教について
     第九章 結論
    訳注
    解説  河野健二
    索引

    ●子供(22頁)
    子供たちは、人間として、また自由なものとして、生まれる。彼らの自由は、彼らのものであって、彼ら以外の何びともそれを勝手に処分する権利はもたない。
    ●戦争(24頁)
    戦争は人と人との関係ではなくて、国家と国家の関係なのであり、そこにおいて個人は、人間としてでなく、市民としてでさえなく、ただ兵士として偶然にも敵となるのだ、祖国を構成するものとして。
    ●平等(41頁)
    人間は体力や、精神については不平等でありうるが、約束によって、また権利によってすべて平等になるということである。
    ●危険にさらす(54頁)
    市民は、法によって危険に身をさらすことを求められたとき、その危険についてもはや云々することはできない。そして統治者が市民に向かって「お前の死ぬことが国家に役立つのだ」という時、市民は死なねばならぬ。なぜなら、この条件によってのみ彼はこんにちまで安全に生きてきたのであり、また彼の生命は単に自然の恵みだけではもはやなく、国家からの条件付きの贈物なのだから。
    ●政府の形態(95頁)
    一般に民主政は小国に適し、貴族政は中位の国に適し、君主政は大国に適するということになる。
    ●消費(110頁)
    あらゆる政府において、公人は消費するのみで何一つ生産しない。それでは、その消費される物質はどこからくるのか? 構成員の労働からである。
    ●保護と繁栄(118頁)
    政治的結合の目的は何か? それは、その構成員の保護と繁栄である。では、彼らが保護され繫栄していることを示す、もっとも確実な特長は何か? それは、彼らの数であり、人口である。
    市民が一段と繁殖し増加してゆくような政府こそ、まぎれもなく、もっともよい政府である。人民が減少し、衰微してゆくような政府は、最も悪い政府である。
    ●法律(133頁)
    よい法律は、ますますよい法律を作るが、悪い法律は一そう悪い法律をもたらす。

    ☆関連図書(既読)
    「ルソー『エミール』」西研著、NHK出版、2016.06.01
    「ロベスピエールとフランス革命」J.M.トムソン著・樋口謹一訳、岩波新書、1955.07.20
    「世界の歴史(10) フランス革命とナポレオン」桑原武夫著、中公文庫、1975.03.10
    「フランス革命200年」河野健二著、日本放送出版協会、1989.04.01
    「フランス革命と数学者たち」田村三郎著、ブルーバックス、1989.04.01
    「絵で見るフランス革命」多木浩二著、岩波新書、1989.06.20
    「図説・フランス革命」芝生瑞和著、河出書房新社、1989.06.22
    「フランス革命」遅塚忠躬著、岩波ジュニア新書、1997.12.22
    「ナポレオン発掘記」F.コクロー著・酒井傳六訳、法政大学出版局、1982.09.10
    「彼も人の子ナポレオン」城山三郎著、講談社文庫、1999.03.15
    (2017年6月27日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    これはもっとも徹底的な人民主権論を説いた書物である。国家は個々人が互いに結合して、自由と平等を最大限に確保するために契約することによって成立する。ルソー(1712‐78)はこの立場から既成の国家観をくつがえし、革命的な民主主義の思想を提示した。フランス革命の導火線となった近代デモクラシーの先駆的宣言の書。

  • 古典に回帰して、考え方の基礎部分をもう一度固めてみようと読んでみました。

  • やはり、「一般意志」という概念を創出したことが、この本の最もラディカルで、なお且つ今でも通じる新しさを感じさせる点であろう。

    特殊意志の集合ではなく、各々の特殊意志の相違点を相殺し、社会の中で最小限必要とされる共通の意志を抽出することを社会の構築の基礎に置くという考え方。これは、様々な政策により社会を改善しようという取組みへのアンチテーゼとしても受け止められるし、現在の社会が抱える「疎外」の問題にも、全く違った切り口から解を与える考え方にもなりうるのではないかと感じた。

    一般意志による国家を成立させるため、人々はその力を無条件で差し出すが、その国家は一般意志にのみ従うので、個々人にはその人の幸福を追求する幅広い権利が認められている。

    このような社会の構想は、一人ひとりの自立を強く求めるものであると同時に、社会や自己の幸福追求に対する個人の積極性を、結果的には生む可能性があるのではないか。

  • 国家とは何か。主権とは、政府とは。そんな問いに答える名著。当然ながらかなり古い本なので、生産体制やその他の部分に多少現代とはそぐわない部分が出てきている。しかしだからと言って色あせない。

  • 社会契約/法は自己保存を享受するために人類が編み出した。
    我々は生まれながらに自由であり、縛られている。
    個々人すべての意思がまんべんなく反映された一般意志こそが法の理想形だが、実際は部分社会や対立構造、あるいはドレイの状態に陥った主権者により、完璧な一般意志を構築し執行することは難しい。

    国家のために戦うことが義務、それは、これまで国家によって生命の安全を保障してされていたのだから、その対価、ということをすっかり忘れていた。
    同意はしかねるが。
    政治体も(人間が生み出した以上)人間の身体同様生まれた時から死に向かっている
    主権は譲り渡せない、分割できない、代表されることもできない

    ローマ史について、高校世界史の知識で止まっていたけれど、もっと深く知りたくなった。

    まさか、教科書に出てくるような本を読んでこんなにも面白いと思えるとは意外だった。

    生まれながらにして自由であり、縛られている私たち。
    政治がうまく回らず、弱者を作り続ける社会の構造
    その疑問の核たる部分に触れた。
    でも、この一冊だけじゃ不十分。
    引き続き多角度から“社会”とは何たるかを検証したい。

  • 2012.9.1 読了

  • 正直久しぶりに哲学的な本を読んだら、案の定内容が難しく読んでいて苦痛だった。2000ページの小説よりも200ページの難解な本の方が遥かに読むのに時間がかかる。
    しばらくこういった本はいいやと思いつつ、「不平等起源論」がまだ未読で残ってるからどうしよ~とか思ったけど、そもそもルソー的に見たら「不平等起源論」を先に読むべきだったか。
    社会契約論の冒頭で書いてあるが、「人間をあるがままのものとして、また、法律をありうべきものとして、取り上げた場合、市民の世界に、正当で確実な何らかの政治上の法則がありうるかどうか」という問題を調べるために、一般意思や社会契約という考えが出てきたんだなと。
    ルソーが想定する自然状態は、闘争状態ではなく平和な状態ゆえ、やはり一般意思や社会契約という概念が出てきたんだろう。某氏が現代ではtwitterのデータを集約すれば一般意思になるみたいなことを言っていた気もするが、すごくおもしろい考え方だなと思った。勘違いかもだけど。何かレビュー書くのもめんどくさくなってきた。フランス革命関わってるようなフランス人って頭いい奴多いな。まぁこの本難しくてあんまよくわかってないけど、なんとなくふ~んそういう感じねってことにしておこう(笑)もうやだ。

  • 思想的には好き。

  • 「フランス革命に影響を与えた」とよく言われるが、本書は“市民の権利”を説いた本ではない、ということに注目したい。
    国家は私的利害を超えた市民の公共心(一般意思)によって維持されるべきだ、とルソーは説いたのであり、すべての市民が自己を国家に委ね、等しく責任を負うべきであると訴えたのだった。
    だからこそルソーは、国民すべてが兵役の義務を負うべきであり、「法によって危険に身をさらすことを求められたとき、その危険についてもはや云々することはできない」(p54)と主張するのである。

    このような考え方は明らかに現代日本の政治には合致しない。
    佐伯啓思氏は「ルソーの論理を具体的なかたちで突き詰め現実化すると、まず間違いなく独裁政治、全体主義へと行き着かざるをえない」と指摘する(『人間は進歩してきたのか』p135)。
    それは確かにそうかもしれないけれども、本書が出版された時代に比べて権利意識の成熟した社会においては、“市民の義務”についてもう一度考えてみる価値があると思う。

    ルソーはまた「一般意思は代表されえない」として、直接民主制の論理的妥当性を訴えた。
    彼は当時すでに代議制を敷いていたイギリスの国民を指して次のように言う。
    「彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民はドレイとなり、無に帰してしまう。その自由な短い期間に、彼らが自由をどう使っているかをみれば、自由を失うのも当然である」(p133)

    この言葉を聞いてギクリとしない日本人は、おそらくいない。

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