社会契約論 (岩波文庫 青 623-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362334

作品紹介・あらすじ

これはもっとも徹底的な人民主権論を説いた書物である。国家は個々人が互いに結合して、自由と平等を最大限に確保するために契約することによって成立する。ルソー(1712‐78)はこの立場から既成の国家観をくつがえし、革命的な民主主義の思想を提示した。フランス革命の導火線となった近代デモクラシーの先駆的宣言の書。

感想・レビュー・書評

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  • ルソーの社会契約論、ようやくしっかり読む時間ができました。本書は発売当初は各国で発禁処分になり、ルソー自身もかなり迫害されたということですが、ルソーの死後、本書に掲げた思想はフランス革命に結実します。その意味で、わたしもフランス革命を主導した人々の気持ちになって本書を読みましたが、ルソーの論調は冷静な中にも非常に熱いトーンを感じます。

    中身については思っていたよりもわかりやすかったです。唯一わかりづらかったのは、後半に古代ローマ帝国とのアナロジーで政治制度を議論している箇所で、これはローマ帝国の知識がある程度ないとわかりづらいとは思いました(その点注釈は役に立ちました)。人間は本来自由と平等の中で生まれてきた。しかし社会契約を結んで社会状態に入ることで、安全などを得る代償として自由と平等は失われていった。しかし自由と平等と求める欲求は社会状態の中でも消えることはなく、それを実現するためには人民の「一般意志」が主権者となることである。本書を一言で言うならこういうことではないでしょうか。多くの人に影響を及ぼした思想書に触れられて、なにか知的レベルが上がった気がしました。必読書かと思います。

  • こうした歴史的名著はいま読むと当然の事が小難しく書かれているように感じる。つまりそれだけ我々の血肉となって思想として根付いていることの証明である。

    革命を起こすには徹底した暴力よりも圧倒する思想のほうが有効だ。ルソーの『社会契約論』は民主主義の礎であり、フランス革命の導火線となった書物である。民衆の総意を一般意思と表現し、国家運営を説くその内容は、君主制が主だった当時からすると相当過激だったに違いない。

    本書で語られる行政官の選出方法、抽籤と選挙。抽籤というのは今の時代になってみると斬新で面白いアイデアかもしれない。

  • 再読。画期的とされるルソーの本書(1762)はジョン・ロックの「統治二論」(1690)の考え方をベースにしているように思われる。しかし、そこからいきなり跳躍して、主権者は市民であり、政府は主権者に雇われているだけだ、という民主主義を打ち出してフランス革命を招いた、とされる。
    ただし私の印象では、ルソーは文学者的な情緒性をもち、それはしばしば「幼児的」とも言える側面で、そうと決め込んだ理想にひた走り出すと、あの「エミール」のような馬鹿馬鹿しい空想教育論に結実する。
    本書でも(訳文のせいかもしれないが)ルソーの筆致にはしばしば情緒性が顕著であり、私はどちらかというと、クールなジョン・ロックの方が好きだ。
    しかしルソーの思想の画期的なところは、法をつくりだす「一般意志」にもとづく「主権者」と、法に従う「被治者」とを、おなじ「市民」の両面として同居させるという卓抜な発想にあると言えるだろう。
    ただこの「一般意志」という概念はルソーの空想性・理想主義がモロに出たものであり、それは必ずしも「多数者の意見」とも限らず、具体的にはどうも明確でない。
    最後の方でローマの「民会」について詳細に述べられているが、そこで著者が力説しているのは、代議者選出のような間接民主制にとどまらず、結集した市民による「直接民主制」的なものだ。しかしこれだと「主権者は立法権しかもたない」という彼の理論から逸脱してしまうと思うのだが。
    「この人民の集会は、いつの時代にも首長たちの恐れるところであった。だから、彼らは、集まっている市民に、いやがらせをするために、つねに、配慮、反対、妨害、甘言を惜しまなかった。」(P131)
    といったくだりは、まるで日本の先日の安保反対デモに対する警察や与党の妨害・反抗を表現しているようで面白い。
    理想を掲げるロマンティストであるルソーは、しかし、すべての国家は結局衰退へと向かうというペシミズムをも示しており、このアンビバレンツぶりは魅力的でもある。
    まあ、ルソーがえがいた国家の基準からしても、現代日本は相当腐敗していることだけは確かだ。
    結局私はルソーの「一般意志」なるものは存在しないか、それを見極める者はこの世にいないと考える。それは孤独な散歩者の夢想であった。

  • 「自然(超理想的平等)状態」をベースとした「一般意思」(「主権者の総体による純粋理性」が近い?)と「功利主義」で組み上げたと言ったら間違いだろうか。実際、「個別意思」その他の例外が無数にあることを著者は指摘しているし。それと、著者は主権者を「市民」としていて、必ずしも「臣民(⊆全ての国民⊆人民)」全員が主権者とはしていないのですね。

  • 民主主義を問い直す。

    ◯社会契約:各構成員の身体と財産を、共同の力のすべてをあげて守り保護するような、結合の一形式を見出すこと。そうしてそれによって各人が、すべての人々と結びつきながら、しかも自分自身にしか服従せず、以前と同じように自由であること
    →われわれの各々は、身体とすべての力を共同のものとして一般意志の最高の指導の下におく。そしてわれわれは各構成員を、身体の不可分の一部として、ひとまとめとして受け取る。

    ◯人民、市民、臣民の違い

  • 学生時代に読んだ本を整理していたときに見つけてそのまま読みました。当時も未熟だったけど、今も未熟。目的意識をもって読まないとなかなか入ってこないなあ、というところです。
    訳も今の言葉遣いとちょっと違うような気がします。新訳がでるのはこのようなことがあるからなんでしょうね。
    でも、これ読んで、やっぱり今の政治はあかんなと強く思いました。

  • 未開人は同胞に対する同情の心をもちながら、それぞれ距離を保って平和に暮らしていた(戦争状態ではなかった)。しかし次第に人々は定住して、集まって暮らすように。すると人々は互いの優劣を比較するようになり利己心が生まれた。他人よりも優越したい。それまで共有だった土地に線を引いた。財産は私有だと考えるようになった。不平等が生まれた。競争に次ぐ競争。戦争状態になった。そこで人々は国家を作ったがそれは財産を持つ者が不平等を維持するためものだった。ルソー『人間不平等起源論』1755

    本来自由で平等な個人が契約を結んで社会・国家が成立。人民が自ら契約を結んだのだから、主権は人民にある。▼ 代議制けしからん。英では民衆が選挙で代表を選ぶことができるが、選挙が終われば選ばれたエリートの支配になる。イギリス人が自由なのは選挙の時だけだ。主権者である人民の集会で法律を作るべき。 ▼常にみんなのことを配慮する意志(一般意志)が生まれることが望まれる。人はそれぞれ自分の意見(特殊意志)をもつが、多くの人で多数決をすれば、正解(一般意志)に到達できる。一般意志は各個人の特殊意志の総和ではなく、人民全体の共通利益を志向する。一般意志は決して間違えない。各個人の意志(特殊意志)と一般意志が食い違った場合、その個人は一般意志への服従を強制される。▼ばらばらの個人を一つの全体にまとめるため、人々は公共精神(軍事精神・奉仕の精神・祖国愛)を共有すべき(例スパルタ)。また、良き市民になるために人々は神の存在、霊魂の不滅、契約の神聖さを信じるべき。信じない者は「反社会的」なので追放する。ルソー『社会契約論』1762

    ※ロベスピエール。ルソーを崇拝。ジャコバン指導者。国民会議こそ、一般意思の実現だ。我々ジャコバンに敵対するものは人民ではない。排除されるべきだ。独裁権力を行使し恐怖政治。穏健共和派により打倒される(テルミドール1794)。コンコルド広場でギロチン処刑。
    ※ハンナ・アレント。個人の意志が一般意志に従属すれば、個人が国家に従属する全体主義につながる。

    議会制民主主義では、教養のある人々による冷静な討論が必要。大衆は教養がなく激情に左右される。大衆によって民主制が独裁制に転落する可能性がある。▼国民によって選出された代表者は国民全体の意思を代表しているので、代表者の意思は国民の意思である(治者と被治者は同一)。▼危機の時代においては、議会で長々と議論している余裕はない。議会を一時的に停止し、大統領による直接の命令によって、危機を迅速・効率的に乗り切る必要がある。独裁は自由主義には反するが、民主主義には反しない。カール・シュミットSchmitt『現代議会主義の精神史的状況』1923

    ポピュリズム。反エリート。純真な人民と腐敗したエリートたちは対立関係にある。政治は人民の一般意志を反映すべき。▼理性の政治ではなく興奮の政治。真面目な関心事から人々の注意を逸らす政治。クリック2004

  • やや難解だが、ベルサイユのバラを副読本にすれば、理解が広がる

  • 630円購入2009-01-27

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