永遠平和のために (岩波文庫)

著者 : カント
制作 : Immanuel Kant  宇都宮 芳明 
  • 岩波書店 (1985年1月16日発売)
3.44
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  • レビュー :73
  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362594

作品紹介・あらすじ

世界の恒久的平和はいかにしてもたらされるべきか。カント(1724‐1804)は、常備軍の全廃、諸国家の民主化、国際連合の創設などの具体的提起を行ない、さらに人類の最高善=永遠平和の実現が決して空論にとどまらぬ根拠を明らかにして、人間ひとりひとりに平和への努力を厳粛に義務づける。あらためて熟読されるべき平和論の古典。

永遠平和のために (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 18世紀末、フランス革命を経た国際社会を背景に、「永遠平和の実現」についてのイマヌエル・カントが真面目に考察した国際平和理論と実践方法。以下、概略。
    【予備条項】
    1、将来の戦争の種がひそむ平和条約は単なる休戦
    2、独立している国家は互いに侵すことはできない
    3、常備軍は廃止。但し、防衛手段としてはOK
    4、戦争遂行を気安くさせるので戦争国債は禁止
    5、他国への不干渉
    6、戦争時の卑劣な戦略は和平時の信頼性を損なわせる
    【確定条項】
    1、各国の政治体制は共和制がベスト
    2、統一世界国家より諸国家の連合スタイルにすべき
    3、世界市民法は各国市民が友好である権利を保障
    【第1補説】
    自然の摂理によって人間社会は次第に成熟すると、結局、利己的人間を抑制するとともに商業を発達させようとするので平和が望ましくなる。人間は永遠平和を道徳的義務とするはず。
    【第2補説】
    国家は哲学者のこうした意見を妨げてはならない。
    【付録】
    政治家はこうした道徳を手段に使うべきでなく、道徳の実現を目指すべき。政治は自ら取り決めた原則は、民衆に担保するため公表しなければならない。

    21世紀初頭、2度の世界大戦、冷戦を経て、ここに書かれていることはシンプルな内容だけに不完全ながらも実現されているもの(国)も多い。そして、テロの時代。カントがある意味想定し、また想定を超えた国際社会と状況になっているが、当時も今も空想理論として斥けるのは容易いけれど、カントが実践論として真面目に考えた内容は時代を超えて不断な再構築の努力を惜しむべきではないだろう。
    ちなみに、とある旅館の看板に付いていたという本書名はカントがやはりお茶目に名付けたのでしょうか、それとも真面目な義憤なんでしょうかねぇ?あれれ?っていう観点があるのは仕方がない。(笑)

  • 1795年の本です。カントのこの考え方が、国際連合の元になったと言われています。


    難しい命題ではありますが、薄い本で手に取りやすく、よくまとまっていて読みやすいです。


    人が一緒に平和に生活するというのは自然ではなく、自然状態=戦争であり、だからこそ平和とは創設しなければならない
    という考えが元であり、甘い理想論ではありません。

    争いが起きる方が当たり前であり、「だから平和など意味がない」とするのではなく
    「永遠平和」を実現するために漸次努力し近づけていくものという思考は、
    闇雲に平和を叫ぶ現実的ではない平和主義者の思考よりも共感できました。

    軍があるということは、他国を戦争の脅威に晒しているということになります。ならば軍がなければ良いのかというと、自衛手段がなくては攻め込まれる隙を他国に与えることになり、戦争を呼び込んでしまいます。
    国を維持するというのは理想論だけでは当然運営できず、コストを考えての商業的な運営意識も必要になってきます。

    平和条約は実は休戦にすぎないというのはなるほどなと思わされました。
    「将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、けっして平和条約とみなされてはならない。」。
    平和とは、永遠平和のためにはどうしたら良いのか。自分なりに考えて求めていきたいと改めて思います。

  • 定言命法、カント的道徳、倫理観、永遠なる(一時的でない)世界平和の達成という理路を示した本。積んどいたのですが、ようやく読みました。日本の鎖国を高く評価する有名な部分も。道徳と政治の一致について、他国に対する経緯と当時の列強ヨーロッパの振る舞いへの懐疑は興味深い。むしろ後からのヘーゲルのほうが、ヨーロッパやキリスト教への信頼はナイーブに過ぎるように今の眼からは思える。ただ、カントの永遠平和の根拠が自然(神?)の摂理というのは、これも今から思うとナイーブに過ぎるか、、、、もちと考えます。

  • カント曰く「公法の先験的公式」から、公表性と一致しない政治的格率はすべて不正なのだそうですよ、安倍さん。

  • 英語の勉強をしていてこの本が出てきたので青空文庫の訳で読んでみたが、いまひとつ頭に入ってこなかった。訳の問題だろうと思うので英文か新訳で再度読んでみたい。(注意:青空文庫の訳者は岩波文庫の訳者とは違います。)

  • 仕事も生活も、平和があってこそのもの。

    どんな国も、他の国の政治や体制に武力で干渉してはならない。
    平和とは、全ての敵意が終わった状態を指す。

    永遠平和をもたらすための6項目の予備条項
    1.戦争原因の排除‐平和条約を含む戦争の原因をはらむものはすべて排除する。
    2.国家を物件にすることこの禁止‐独立している国を他国の所有としてはならない。
    3.常備軍の廃止‐限りない力での競争で他国を絶えず脅威にされさせてはならない。
    4.軍事国債の禁止‐対外的な紛争を理由に国籍を発行してはならない。
    5.内政干渉の禁止‐他国の体制や統治に暴力で干渉しない。
    6.卑劣な敵対行為の禁止‐暗殺者や毒殺者を利用すること、
    降伏条件を破棄すること、戦争相手国で暴動を扇動することなど。

  • 初の岩波文庫で、読む前はかなり気張っていたが、読み始めると案外楽に読み終えることができた。
    薄いので岩波文庫初心者におすすめ。
    第2補説の読み応えは素晴らしい。

  • 国連創設に影響を与えたと言われるカントの著書。
    多くの人に読んでもらう為に薄い冊子にしたらしい。(と、授業では習った)
    国際機構について学ぶなら読んどいた方がいいんですかね。

  • カントの実践哲学を現実の政治に当てはめて考えるとどのようなことを論じうるかを、カント自身が示した名著。

    カント自身が本書のタイトルを「風刺的」と呼んでいることに象徴されるように、永遠平和など実現不可能な絵空事と見なされがちである。
    カントはただ理想を語っているのではなく、人間の本性を「利己的」とし、法的状態が構築される以前の自然状態を「戦争状態」とした上で、地に足の着いた議論を展開している。

    人間が利己的で、各国家が言語と宗教によって互いに隔離されているということは一見戦争の種であるように思われるが、カントはむしろ、そのような現実があってこそ、平和は構築可能だとする。人間の利己性は社会契約による共和的国家の樹立を促し、言語と宗教による隔離は、国家の規模を大きくなりすぎないように役立ったと。目からウロコであった。

    「付録」では、政治と道徳の対立、すなわち利益と正義の対立について語られており、「前者が後者に従属すべし」というカントのリベラルな立場が簡潔に表明される。

    薄いけど中身の濃い、素晴らしい本だった。

  • どうもカントはお堅いイメージがまとわりついて離れないが、一哲学者として、かなりこの平和というものに思うところがあったに違いない。自身の築き上げてきた学問を土台にして緻密に、そして熱情をもって書き上げていると感じた。
    真の平和とは何か。平和のために争う、その皮肉に対して、彼は命ずる。そんなものは平和ではない、汝の普遍的な格率に従え。そのための法だ。
    道徳とは、平和とは、法律が与えるものではない。よく巷では、憲法改正だとか、なんだとかでデモをしているが非常にばからしい。そんなものが平和を守っているのではない。戦争したくないからしないだけなのだ。それは憲法でも法律でもなんでもなく、ひとりの人間の気持ちなのである。カントはこれを格率と呼んでいる。法律とは、そのような格率から生まれたものであるから、義務なのである。誰かが与えるのではなく、したくないことを無理にするのは不正であるから、してはならない、そういうものなのだ。したがって、義務とはおのずから生じるものであって、外から与えられるものでは決してないのだ。
    では、平和というものはどうすれば実現するのか。カントに言わせてみれば、みなが平和を自身の格率として価値あるものとみなせばいい。それだけの話である。でも、現状、そういうばかりではないから、互いに公表し、相互に監視し合う体制が必要なのだ。それが国際連合である。今の国際連合とはまったく違う。こうした連合体制は、国家としてまとまりをもったものを前提としている。それが共和制であると、カントは言う。この共和制は、民主制や僭主制とは異なる。どういうわけか、プラトンの哲人政治とも異なると言っている。この点、カントの弱いところだと思われる。代議制を是認しているようにもとらえられてしまうからだ。カントにとって共和制とは、すべての人間が、もうすでに、普遍的な格率をもってその義務に従っていることを前提にしているのである。だから、代表者が無理に哲人でなくても問題などないのだ。プラトンに異を唱えているというより、プラトンのような想定をする必要がない状態についての国家を述べているのだ。アプリオリに法的状態にある国家があるとするなら、連合形態や述べてきた条項が望ましい、そういう話なのだ。
    では、そういう法的状態というのは、いったいなんなのか。カントは付録で自然状態と道徳・政治について述べている。確かに人間は争わずにはいられない。けれど、争いを嫌悪し、それを裁こうと法律というものを定めるのもまた、人間の自然状態でもある。では、なぜそんな自然状態が政治や道徳と結びつかないのか。それは、そもそもそういう結びつかない政治や道徳というのがおかしいからだ。人間に義務が生じているとするなら、おのずと道徳と政治は分かたれないはずである。法に従うということは、外部から与えられた決まりを守ることではない。おのずと自分の中から生じてきたものに従うまでのことだ。だから、自分のしたくないことをするということは、それこそ不自然であって、道徳的ではない。だから、公表しても問題ないはずなのである。隠すということは、それ自体に後ろめたいなにがしかがあるからだということになるのである。
    哲学をする者にとって、平和とはかくも当たり前の話なのである。だからこそ、自由に哲学者がものを言えないといけない。哲学者のいうことが浮世離れしている、夢想の話をしているのではない。それを浮世離れしていると退けてしまう事の方が問題なのだ。彼らは現実をどうするかについて興味がない。現実というものが一体何なのか、そちらに興味がある。そもそものスタート地点が違うのだ。自分の従う現実というものに挑むからこそ、その現実を超えることができ、平和の意味が変わる。
    平和だ戦争だ言う前に、そう言っている自分の胸に手を当てて同じことを問うべきだ。

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