小論理学 下 (岩波文庫 青 629-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362921

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  • 生きるための古典

  • 現実的なものは理性的で理性的なものは現実的。だって同じひとつのものだから。

    考えて、わかる。なんて現実的で理念的。
    件の小論理学。
    在るから始まって、本質、現存在、現象、現実、概念、そして、理念へと帰る。ぐるっと回ってまた振出しに戻る。

    確かに彼のことばは敷居が高い。先を読んでは戻ってようやくみえる。それでも、彼の考えのリズムに乗っかれば、するっと自然に入ってくる。
    在るということは、それ自体であると同時に、その有限性はないものではないという否定によって裏付けられる。在るは無いに、無いは在るによって関係づけられる。それは無限の対立のようだが、どちらも、在るということばが、無いということばが、「ある」。このきれいな三段跳び。
    観念的で自己中心的という批判を耳にしたことがあるが、そんなもの、彼はとうに見越してきっちり言っている。すべては自己の動きだと。他者なんていないのだ、と言っているのではない。他者が存在できるのも、ひとへにこの自己の存在ゆえだと言っているのだ。観念的というのは、何かが「在る」ということなしには、わかることができないと言っているのだ。
    マグリットは彼の考えを二項対立なものに敏感で…としてそういった絵を描いている。ヘーゲルの休日とか、弁証法うんぬんとか。彼は別に二項対立が好きなのではない。表と裏もどちらもひとつのもの。裏が表で表が裏。なんだひとつのものの一側面を切り出しただけじゃないか。真に現実とは、理念とは、裏も表もどちらも含むものではないと、それは現実ではない。そういうのは悟性の働きにすぎない。二項対立の部分だけ取り上げるのは弁証法とは言わない。

    あとがきによると、彼の考えは誤っているという。それは、現実には「ある」一般が存在しないからだという。また、思惟の主体が世界の創造者だというところもいけないらしい。それが神的だとか。
    まず、現実に「ある」一般がないということ。すでに現実というものが「ある」ではないか。なんだその現実一般っていうのは。
    次に思惟の主体が世界の創造者だとしたところ。「在る」ということなしに考えられるようになってから出直しなさい。「ない」ことには考えられないから。在るということから世界が生まれるのだ。なぜそれに驚けない。
    正しく彼を批判するなら、彼が「在る」というところを認めているというその点だ。なぜ、在ってしまったのだろうか。どうして考えているのは他でもないこの「自己」なのか。ハイデガーの切り口だ。
    存在という当たり前のことを考えているのに、難解だというのは何を言っているのだろうか。

    彼の功績はなんといっても、哲学を論理という形として現存在させたところにある。だが、論理は哲学そのものではない。それでも、哲学は論理というひとつの形を求めたのだ。これがいつも不思議でならない。思惟は居ながらにして宇宙へと誘ってくれる。

    存在が意志する、そのことが善。正しさと真理は違う。正しさは単なる一致の状態。何と一致しているかは言及しない。一方、真理とは、概念という自己との一致である。自己とはこのちっぽけな奴のことではない。存在が求めるということは、それ自体が概念と一致している。善は存在に裏付けされている限り、実現されつつあると同時に実現されている。理想というものが、それを求める現実によって実現されているように。

  • 目次
     第二部 本質論
      A 現存在の根拠としての本質
       a 純粋な反省規定
       b 現存在
       c 物
      B 現象
       a 現象の世界
       b 内容と形式
       c 相関
      C 現実性
       a 実体性の相関
       b 因果性の相関
       c 交互作用
     第三部 概念論
      A 主観的概念
       a 概念そのもの
       b 判断
       c 推理
      B 客観
       a 機械的関係
       b 化学的関係
       c 目的的関係
      C 理念
       a 生命
       b 認識
       c 絶対的理念

  • ¥105

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著者プロフィール

(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)
1770年、南ドイツのシュトゥットガルトで生まれ、テュービンゲンの神学校で哲学と神学を学んだのち、イエナ大学講師、ハイデルベルク大学教授、ベルリン大学教授となる。発表した本は6点、翻訳『カル親書』(1798年)、小著『差異論文』(1801年)、主著『精神現象学』(1807年)、大著『論理学』(1812–16年)、教科書『エンチクロペディー』(1817年、1827年、1830年)、教科書『法哲学綱要』(1821年)である。1831年にコレラで急死。その後、全18巻のベルリン版『ヘーゲル全集』(1832–45年)が出版される。前半は著作集で、後半は歴史・芸術・宗教・哲学の講義録である。大学での講義を通して「学問の体系」を構築し、ドイツ観念論の頂点に立って西洋の哲学を完成した。

「2017年 『美学講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

G.W.F.ヘーゲルの作品

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