悲劇の誕生 (岩波文庫)

著者 :
制作 : Friedrich Nietzsche  秋山 英夫 
  • 岩波書店
3.37
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本棚登録 : 510
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003363911

作品紹介・あらすじ

ニーチェ(1844‐1900)の処女作。ギリシャ文明の明朗さや力強さの底に「強さのペシミズム」を見たニーチェは、ギリシャ悲劇の成立とその盛衰を、アポロ的とディオニュソス的という対立概念によって説いた。そしてワーグナーの楽劇を、現代ドイツ精神の復興、「悲劇の再生」として謳歌する。この書でニーチェは、早くも論理の世界を超えた詩人の顔をのぞかせる。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。ニーチェは「善悪の彼岸」と「この人をみよ」くらいは読んだはずなのだけど、本棚にはこれしか残っていなかった。なんかあちこちにラインが引いてあるのだけど、若かりし自分が何を思ってそこにラインを引いたのか20数年後の自分には理解できないという(苦笑)ニーチェ自身も20代の頃に書いた本で、のちに付け加えた序文では自己評価イマイチとなっているので、これは若いうちに読んだほうが共感できる本なのかもしれない。

    ざっくり概要としては、ギリシア悲劇の「誕生」とその「衰退」さらに現代(ニーチェの時代のドイツ)における「再生」について、有名な「アポロ的」と「ディオニュソス的」という二面から解明する、という感じかな。

    ○アポロ的:造形芸術、叙事詩、現象の模倣、静、個人的、内向的
    ○ディオニュソス的:音楽、叙情詩、意思の模倣、動、集団共有、開放的

    部分的にこちらの解釈も混じってますが、アポロとディオニュソスの対比はとても面白いし解りやすい。ただ結論だけ言っちゃうと、ニーチェはあらゆる芸術の中で「音楽」が一番素晴らしいと思っており、古代ギリシャの演劇におけるコロス(合唱隊)の一種であるディテュランボスが悲劇の発生源であり、現代における「再生」っていうのはまあオペラのことなんですよね。で、最終的に、ワーグナー万歳、ドイツ精神万歳みたいな結論になっちゃうので、なんというか、ワーグナーのオペラ聞いてテンションあがっちゃってワーグナーとドイツ精神称えるためにこれ書いたの?と思うとちょっと微妙な気持ちに。まあ芸術論なんだけど、ちょっと極端というか、突っ走りすぎというか。一回落ち着こうか、みたいな。

    個人的にはディオニュソス的熱狂、集団で音楽や動きを共有することでなんかテンションあがっちゃう!の一番わかりやすい例は日本の「盆踊り」ではないかと思います(笑)

    あと論点ずれちゃうけど、序文でニーチェの言う「ひょっとしたら、悲劇は快感から生まれたのではないか?」という部分を拡大すると、個人的には、悲劇の誕生ということを発生源ではなく人間の心理の側からも読み解いてほしかったというか、なぜ人間は悲劇を愛するのか?悲劇を欲するのか?ということへの興味があります。日本人はとくに「可哀想」で「泣ける」話が好きだけど、めでたしめでたし、じゃない終わりを好む心理って、なんなんだろうなあ。

  • 読み通すには根気がいる。独断的持論が展開され、論旨の繰り返しには辟易させられる。ギリシャ芸術をアポロ的なものとディオニュソス的なものとの対立軸で両者が絡み合いながら発展する過程で悲劇の誕生を論じている。直観的理解を阻むかのように難解な表現が煙に巻く。著者の高揚感と反するように冷めた眼で読み進めることになる。

  • デュオニュソスとアポロ、ソクラテスがキーワード。
    詩的な叙述。芸術と悲劇を巡って、生きる根源、文化の根源に迫った作品。字が小さかったが、グイグイと引き込まれた。木田元氏が、「反哲学」=ニーチェと喝破した、片鱗が見えた。特に前半。仏教についての肯定的な言及もあった。キリスト教への排撃は激しい。

  • ひさびさニーチェ。ニーチェの中ではかなり読みやすいほう。ギリシア悲劇を題材にしているのでとっつきやすいし。「善悪の彼岸」がいちばん面白いと思うけど、これも悪くはない。

  • これはニーチェの黒歴史だと思う。
    中二時代の話だよね(ニーチェが一生中二とか言わない)

  • 訳者(秋山英夫)による解説がおもしろい。術語があいまいで捕捉しがたいという。有名なアポロ的とディオニュソス的という対立概念にもそれはあてはまるとのこと。また、メレンドルフによる批判も紹介している。音楽が基本で歌詞が従であるというニーチェの考えは、受け容れがたいと、メレンドルフは述べているとのこと。

  • あとになってワーグナーと決別したニーチェは処女作である本書を悔やむことになる。後代の歴史を知っているわたしたちにしてみればドイツ民族称揚がいかにもナチス好みだったろうところの方に注意が向くけれど。
    21世紀に改めて本書を取り上げる視点は、ニーチェが真っ向から攻撃したソクラテス主義~科学主義、ニーチェが回避した経済主義、この二つからひとは自由たり得るかという問いかけだ。ニーチェ以後とはこの難題の尖鋭・肥大の歴史であるにすぎないかもしれない。
    そしてフーコーにも受け継がれた芸術(美)的人生という問題になるのだが、今のわたしたちにとってのアートのギャップこそ時代的深刻さとして考えこまずにはいられない。
    アポロ的造形芸術、デュオニソス的悲劇、その源泉としての音楽。科学と経済に厳然と対峙し凌駕する音楽。つまりそれは神話である。
    そのような音楽への旅。現代のニーチェ探訪は改めてそこからだ。わたしたちにはわたしたちの神々がいるはずなのである。

  • 悲劇はどこから発生せざるをえなかったのか?ひょっとしたら、悲劇は快感から生まれたのではないか?力から、みちあふれるような健康から、ありあまる充実から発生したのではなかったか?

    という常識とは真逆の問いを鮮やかに解いてくれてます。

    確かに、青春のゆたかさがあればこそ、悲劇的なものへの意志をもち、ペシミストになれるという理屈もあるかも知れない。

    芸術に対する皮相な理解をくつがえし、芸術の本質に迫っていてとても参考になりました。私がライブや演劇を見て涙を流す理由がわかりました。ニーチェさんの言われる芸術的なものは触れる者の魂を癒し、生きる力を賦活する。

    また、ソクラテスを悪玉に仕立て上げての近代文明の批判も鋭くて恐れいりました。明治になって西洋文明を取り入れて、日本人は苦悩したんだけど、当のヨーロッパも既にして病んでたんだと書いてあって、なるほどと思いました。現代のヨーロッパ文明の行き詰まりも予言していて、ホント天才って凄いなぁ。

    知らない言葉がいっぱい出てくるけど、あまり気にせずガンガン読めば色々ためになる良い本だと思います。

    水野先生からの課題図書

  • 演劇関係の本で良く引用されているので読みたいと思っていたが、迂闊にも岩波文庫現役で出ているとは知らなんだ。ニーチェのめぼしい著作は既にあるので、これも読みたい。で、買っちゃいました。余裕で新刊で出てるんだ。

  • アポロとディオニュソス。陶酔、脱我、放擲、脱自。それでもあるのか根源的一者が。その連続性が郷愁を生む。

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著者プロフィール

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche)
1844年10月15日 - 1900年8月25日
ドイツの哲学者、古典文献学者。近代がはらむ問題を一新に受け止め、古代以来の哲学との対決に挑み、実存主義の先駆者、生の哲学の哲学者として知られる。その思想は20世紀に続く様々な思想に衝撃と影響を与えた。
代表作に『悲劇の誕生』『道徳の系譜』『ツァラトゥストラはこう言った』『善悪の彼岸』など。

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