幸福論(ラッセル) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003364932

作品紹介・あらすじ

自分の関心を内へ内へとむけるのではなく、外界へとふりむけてあらゆることに好奇心をいだくこと。偉大なるコモンセンスの人ラッセルは、これこそが幸福獲得の条件であり、それは自己説得によって可能なのだと説く。たくましく、しなやかに人生を生きるための知恵がこの幸福の処方箋にはたっぷりと書き込まれている。

感想・レビュー・書評

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  • 世界三大幸福論の一つ。

    イギリス人哲学者のラッセルが記したもの。
    哲学以外にも数学を愛した人らしく、幸せになるために何を避け、何をすべきかを論理的に説いている。

    理系である私としては肚落ちしやすく、良かった。
    不思議なことに仏教の内容にとても似ている。

    初めに書かれているのが

    「現在不幸な多くの人々も、周到な努力によれば幸福になりうるという信念に基づいて本書を書いた」

    その言葉が示すように、本書は大きく分けて2部構成になっている。

    前半は【不幸の原因】

    1. 「何が人々を不幸にするのか』

     ・自分にばかり目を向ける人として「罪びと」「ナルシシスト」「誇大妄想狂」がある

     ・外部に目を向けることによる苦しみは、自己嫌悪から湧き出る苦しみと違って、生の本質的な部分まで打ち砕くことはない。

     ・虚栄心は必然的に無気力と退屈を生み出す。これの原因は自信の無さである。


    2. 「バイロン風の人々(虚無主義)」

     ・一切は虚とする感覚は、自然の欲求があまりにもたやすく満たされるところから生まれる



    3. 「競争」

     ・人々が生存競争という言葉で意味しているのは、実は成功のための競争でしかない。明日の朝食にありつけないのでなく、隣近所の人を追い越すことができないのでは?程度のことである。

    4. 「退屈と興奮」

     ・退屈には2種類ある。実を結ばせる退屈(麻薬がない)と人を無気力にする(刺激のラットレース)退屈である。

     ・幸福になるには一定の退屈に耐えることが必要である

     ・娯楽と浪費の生活を送る少年の心に建設的な目的が芽生えるのは容易ではない。なぜなら考えが常に次の快楽に向いてしまい。遠いかなたにある達成に向かわない。

     ・実りある退屈から逃れることで、もっと悪い種類の退屈の餌食になるわだ。幸せな生活は静かなものでなければならない。 

    5. 疲れ
     ・私たちのすることは、私たちが当然考えているほど重要な事ではない。

     ・あらゆる形の恐怖は疲れを生じさせる。恐怖を他で紛らわせようとするが、
      直視しないことでますます募っていく。正しい道は恐怖が馴染みのものになるまで考え抜くことだ。

    6. ねたみ
     ・ねたみは、子供の頃の不幸によって著しく助長される。
      世間に出ると、自分が犠牲者である不公平が起これば早速見つけるし、
      起こらなければ不公平を想像する。

    7. 罪の意識
    (キリスト教的思想が主のため割愛)

    8. 被害妄想
     ・あなたの動機はかならずしもあなたが思っているほど利他的でない
     ・あなた自身の美点を過大評価してはいけない
     ・あなた自身が寄せているほどの大きな興味を他人が寄せてると期待してはいけない
     ・大抵の人があなたを迫害してやろうと特に思うほどあなたのことを考えているなどと想像してはいけない

     ・食べることに当てはまることは他のあらゆることに当てはまる。何か利己主義的な動機なしには、熱意を持つことは難しい。

     ・あなたの専門がなんにせよ、他の人があなたの才能を自身ほど高く評価してないことがわかっても、間違っているのは彼らの方だと確信しきってはいけない。


    9. 世評に対するの怯え
     ・若い人たちはとかく彼らの知っている環境のみが世の中全体を代表しているかのように考えやすい。

     ・旧弊な人たちが慣習からの逸脱に激怒するのは、逸脱が自分たちへの批判のように受け取るからである。人懐っこい愉快な人からは批判であるとは捉えられにくい。

     ・自分の環境がどうもしっくりこないという人は、職業選択にあたり、収入よりも気心の合った仲間を得られるように努めなくてはならない。


    後半は【幸福をもたらすもの】

    10. 幸福はそれでも可能か
    ・道楽や趣味は多くの場合、現実からの逃避になっている。根本的な幸福は、他の何にもまして人や物に対する友好的な関心に依存している。

    ・あまりに多くを求めることは、得られるものも得られなくなる一番確かな方法である。

    ・幸福の秘訣はこうだ。あなたの興味をできるだけ広くせよ。そしてあなたの興味をひく人物に対する反応を敵意あるものでなく、出来る限り友好的にせよ。

    11. 熱意
    ・おいしい食事を前にして退屈を感じる人(虚無感)、義務から食べる人(罪びと)、美食家(気むずかし屋)、大食漢(官能主義者)がいる。そして喜んで食べ終われば満足る。そして最後以外の人物は最後の人物を軽蔑し、自分の方が優れていると思い込む。

    ・他の条件が同じなら、どれか一つに興味を覚える人は興味を覚えない人よりも、よりよく世界に適合しているのだ

    ・ある種の事柄が枠を形成し、それへの情熱が不幸のタネにしたくなければ、その枠の中に収まらないといけない。


    12. 愛情
    ・子供の外的な興味の背後には、災難に遭えば両親の愛情によって守ってもらえるという感情がある。

    ・不安感に起因する愛は、もう一方の愛より、各段に主観的で自己中心的である。そういう人は本質でなくどれだけ尽くしてくれるかで判断するからである
    (幸福な愛は舟の上でのんびりするのに例え、不幸な愛は難破船から命からがら陸地に辿り着くのに例えられる)

    13. 家族
    ・友達は長所ゆえに好いてくれる、恋人は魅力ゆえに好いてくれる。しかし両親が最も頼りになるのは不幸の時である。

    ・あらゆる人間関係において、一方の幸福を確保するのは易しいが、双方のためとなると格段に難しい。

    ・親であることの喜びを満喫することは、子供に対する尊敬の態度を深く感じられる両親にして初めて可能である。


    14. 仕事
    ・仕事は何よりもまず、退屈の予防策として望ましいものだ。また仕事をしていれば休日になった時にそれがずっと楽しいものになる。

    ・重要な建設的な仕事ほど、憎しみの習慣を直してくれそうなものはまず、他にない。

    ・首尾一貫した目的だけでは人生を幸福にするのに十分ではない。しかしそれは幸福な人生の必須条件である。
    自分の人生を一つの全体として見ようとする。

    15. 私心のない興味
    ・人間疲れれば疲れるほど、外部への興味が失われる。そして外部への興味がなくなるほど息抜きが出来なくなり、まずます疲れる。これは一つに実際的な重要性のないものは何事にせよ興味を持てないからだ。

    ・世界の提供するこの壮大なスペクトラムに興味の持てない人は、人生の差し出す特典を失っている事になる。

    ・気晴らしは思考を麻痺させる(麻薬など)ことでなく、思考を新しいチャンネルに切り替える事である。
    不幸に見舞われた時によく耐えるには、幸福な時にある程度広い興味を養っておくことが賢明である。


    16. 努力とあきらめ
    ・自己欺瞞に支えられているときにしか仕事のできない人は、自分の職業を続ける前に、まず真実に耐えられる術を持っておく方がいい。

    17. 幸福な人
    ・人間は、自分の情熱と興味が内へではなく外へ向いている限り、幸福を掴めるはずである。

    ・本当にあなたの興味をかきたてるもののみが、あなたの役に立つのである。あなたが自己没頭するのをやめたならば、本物の客観的な興味が芽生えてくる、とまず確信してよい。


    の章立てでできている。
    さすが世界で読み継がれてきた古典。
    素晴らしい内容でした。

  • 『自分自身と自分の欠点に無関心になることを学んだ。だんだん注意を外界の事物に集中するようになった』
    『どっぷり自己に没頭している不幸な人びとにとっては、外的な訓練こそ幸福に至る唯一の道なのだ』
    不幸の原因は自己没頭であり、その種類は①罪びと、②ナルシスト、③誇大妄想狂の3種類に分かれると説く。また、実際に人日が実際に陥っている状況として、8つの原因を挙げる。
    その一方で幸福な人は、客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている人と主張している。幸福へ至る要素は6つあり、それらを大切にすることで幸福が『獲得』できると言う。
    論理学者が書いた幸福論ということもあり、掴みづらい抽象論の話もなく、実践的な内容である。
    自分が一番好きな文言は第14章の『仕事』より、以下の文言。
    『人間は、自分の人生を一つの全体としてみようとする傾向に関して、互いにいちじるしい違いが見られる。(中略)人生を一つの全体としてながめる習慣は、知恵と真の道徳のどちらにとっても必要不可欠な部分であり、教育において促進されるべき事柄の一つである。首尾一貫した目的だけでは、人生を幸福するのに十分ではない。しかし、それは、幸福な人生のほぼ必須の条件である。』

  • かーなーり、内容の濃い本です。一度、読んだぐらいで内容をきちんと理解し咀嚼し自分の血肉にできる、などと思わない方がいい。

    かといって「理解に苦しむ」訳ではないのが面白い。前半は人が不幸になる原因について追及し、後半は一転して人が幸福になるためにはどのような心がけが必要かについて述べていて、本の作りとしては非常にシンプル。
    不幸の原因に関する部分ではやや難解な場所も散見されますが、後半の幸福になるためのポイントについては非常に分かりやすく、また賛同できる内容となってます。

    原著が出たのがそこそこ昔である割に、翻訳もこなれていて記述も(この手の本にしては)読みやすいです。何度も読み返すことで味が出てくる本であり、本棚に住まわせていて損はない本ということです。

  • 幸福論を書いた著作は山のように世の中にあると思う。ダレが書いた幸福論が好きか・・は読む人次第。「幸福論」という題材を手に取る人たちは、それなりになにかしら心に病みとまではいかずとも、心の中になにかを抱え込んでいる人がおおい。
     私が。ラッセルの幸福論を手にした理由は、単純にラッセルの文体が好きだと言うこと、そして彼の著作にも、幸福論というものがあると知ったからだ。あまりにも単純すぎか(笑)読んでみると、やはりアランの幸福論よりわかりやすい。この辺りはさすがだなあと思う。半分は、ラッセル贔屓もあるかもしれないが。
     幸せになりたいから、今幸せでないから・・という理由で読んでいるわけではないので、この一冊に光をみつけようとも思っていない。ただ、読んでいくと、琴線にひっかかるものは山のようにある。たとえ、自分が今、幸せを感じていなくともこのような本を読むだけで、心豊かになれるような気になる。
     仕事でイライラしているとき、おもったように人が動かない時、親兄弟と意見が合わなかったとき、友達からの裏切りがあったとき・・人生の中では誰しもが抱える問題も、ケセラセラの感覚で軽くスルーすることも悪くはないのだということを教えてくれる。
     デスク脇に必ず置いて、なにげない時間に開いて読むことにしている。

  • しなやかに生きる事、それがラッセルの言う幸福な人生の条件。刺激的な幸せはより多くを求めるようになり、やがて不幸に行きつく。まるで麻薬のように。だから、不幸を感じない事、消極的だけど、そんな平穏な状態にこそ幸せを見つけるべきなんだ。そして、一番大事なことは、日本に住んでいる人の大部分はその気にさえなれば、自分の人生が幸せなものだと築くことができるはずだ、僕はこの本を読んでそう思った。

    最後に、僕の好きなこの本の一節を引用したい、

    『―最もすぐれた小説は、おしなべて退屈なくだりを含んでいる。最初のページから最後のページまで才気がひらめいているような小説は、まずまちがいなく、偉大な本ではない。偉人の生涯にしても、二、三の偉大な瞬間を除けば、興奮にみちたものではなかった。』

  • 幸福な人は、食と住、健康、愛情、仕事、仲間からの尊敬を持っている。客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている(この時、本当にあなたの興味を掻き立てるもののみがあなたの役に立つ)。自分の人格が内部で分裂しておらず、世間とも対立していない。不幸な人は、自己中心的であり、自分の殻に閉じこもっている。不幸な人によくある情念は、恐怖、ねたみ、罪の意識、自己への哀れみ、自画自賛である。

  • 【自分的まとめ】
    なんとなく幸せじゃないとか言って、自分の殻に閉じこもってる場合じゃないよ。
    窓を開けて世界を見れば、そこら中に面白いことが転がってるよ。
    幸せだから楽しく生きられるんじゃなくて、楽しく生きようとするから幸せでいられるんだよ。

  • 非常に面白い。非常に具体的。
    本書では不幸になる原因と幸福になる原因が”具体的”に書かれていて、本を閉じたその時から幸せになれる可能性を秘めていると思う。
    本書の目的は、衣食住に不自由なく暮らし、我が子を失った等外的不幸の原因の無い人々が経験する〝日常的な〟不幸に対して、一つの治療法を提案することである。
    一番のポイントだと感じたことは、周りに興味を向けること。
    例として挙げられていたのはシャーロック・ホームズ。
    シャーロックホームズは、道に落ちていた帽子を拾って言った、「その持ち主は酒で身をもちくずし、妻はもう昔ほど彼を愛していない」何気ないものからこれほど豊かな興味を与えられる人にとって、人生は退屈であるはずがないのだ。

  • 年末なので,ふだんあまり読まない本を読んで一年の締めくくり.

    バートランド・ラッセルの幸福論.前半は幸福を妨げるものの分析,後半は幸福をもたらすものの考察.論理は明快,すべてにおいて実用的である.もう少しやさしい言葉に直して,論理を薄っぺらくすれば,現代に通じる人生指南の実用書が10冊くらいできそう.

    実用的と言いながら,個々人が幸福を達成するのはなかなか難しいなというのが実感.幸福の基盤になるはずの静かな生活はなかなか遠い.

    余談だが,私の大学受験の頃は英語の読解の問題集にモームとラッセルがよくとりあげられていたので,その明晰な英語(といっても,意味が取りやすいわけではない)が懐かしかった.

  • 極めて名著。1930年に出版されたが、現代でも全く違和感なく読める。
    おそらく、人間の不変、根本的な部分を扱っているからだろう。
    幸福とは、確固とした形があるものではなく、むしろ、不幸になる要素や不自然な要素を取り除いていくことが肝要であると感じた。

    個人的には、現代の様々な自己啓発本の元になっているものと感じる。
    定期的に、一章ずつでも、読み返したい。

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