幸福論 (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.84
  • (142)
  • (125)
  • (130)
  • (26)
  • (9)
本棚登録 : 2516
感想 : 175
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003365625

作品紹介・あらすじ

ルーアンの新聞に「日曜語録」として連載されたのを皮切りに、総計5000に上るアランの「プロポ」(哲学断章)。「哲学を文学に、文学を哲学に」変えようとするこの独特の文章は「フランス散文の傑作」と評される。幸福に関する93のプロポを収めた本書は、日本でも早くから親しまれてきたもの。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 地方暮らしは楽しいこともいろいろあるとはいえ、コロナ禍もあいまって、大型書店になかなかいけなくなってしまったのは、最近の悩みのひとつ。
    そんな中で、久しぶりにちょっと大きめの書店に行くチャンスがあると、いや〜もう、テンションが爆上がり。
    買いすぎないように気をつけるけど……まあ、買っちゃいますよね。
    だって次、いつ来られるかわからないもんね。
    というわけで(?)ちょうど文庫フェアが開催されていたこともあって、いそいそと手にとってレジに向かったのが、この『アラン幸福論』。
    前から読みたかったんです。

    書名に「アラン」とだけあって、苗字も書かれてなくて、誰だろう?と思ったけれど、本名はエミール・シャルティエと言って、19世紀半ばから20世紀半ばまでを生きたフランスの哲学者、だそうです。
    本書は、彼が新聞に連載した膨大な短文(プロポ、というらしい)の中から、幸福に関するもの93編を選び、構成しなおしたもの。
    1編が1400字弱くらいなのですが、これを毎日連載して総計5000にものぼったって……エネルギーがすごすぎる!

    さてこの本、アランは哲学の高校教師でもあったからか、すごく親しみやすくて楽しく読めました。
    ここのところ、哲学や思想の古典を読みたいと思ってこつこつ挑戦しているけれど、だいたい、先の見えない山の頂上を目指して、一歩一歩進んでいく、というような読み心地なのですが、アランはもっとこちらに寄り添ってくれる感じ。
    「腎臓結石を病んでいて、かなりふさぎこんでいる友人」とか、「樵(きこり)を生業としていた手相を読むことができた砲兵」とか、登場するエピソードも身近です。

    久しぶりにほっとするなあ、と思いながら読みすすめるなかで、心に響いたのが、次の一文。

    「ほんとうを言えば、上機嫌など存在しないのだ。気分というのは、正確に言えば、いつも悪いものなのだ。だから、幸福とはすべて、意志と自己克服とによるものである。」

    たとえば、今日の夕食の献立が決まらない、といったすごい些細なことでもクヨクヨ考えがちな自分としては、読んですごく気持ちが楽になったし、同時にしばらく前に読んだ『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』を思い出しました。
    ありがとうアラン、ほんとうのことを書いてくれて。
    「幸せになりたい」と思うほど、「幸せとはなんだろう?」「幸せになるために必要なことって?」という問いに立ち返るけれど、最近はそのグルグル回りがなんだか楽しいなあ、と感じています。
    唯一、従軍に肯定的な点は賛成できなかったけれど、温かくて力強い一冊でした。

  • 哲学者アランの幸福論。「プロポ」と呼ばれる93編のコラムのような形式。何度も読むことで味わいの出る文体である。一貫して、現実的であり楽観主義な思想が、勇気を与えてくれる。私も一メートル先に、幸せを見いだしてみようと思う。【印象的な言葉】①有名な山の頂上まで電車で行った人は、登山家と同じ太陽をおがむことはできない。②ぼくの好きな旅というのは、一度に一メートルか二メートルしか行かないような旅である。③君が現に生きているのだから、今生きているように生きて行くことは可能なのだ。

  • 読書って、どうしても生活との天秤だ。生活が充実していないのに読書ばかりを続けたから、ある時期からだんだん澱みはじめていた。それならさっさと書を捨てよ、と言われそうだが、お別れの一冊のようなものを探していた。

    アランの幸福論は、とてもピッタリの一冊だった。
    思考や想像力の沼に捕らわれた僕を、カラリと明るい風で吹き払ってくれる。

    どんな賢人の知恵も、本で読む限りは思考と想像力をもって挑まなければならない。けれど、その思考や想像力こそが、人の苦悩を水増しし、四苦八苦の泥沼に引き込んでしまう張本人でもある。仏教、特に禅などは、この泥沼を吹き払ってしまうことで苦しみの多い世界でも悠々闊歩する力を得ようとするが、それさえもやっぱり読書を通して触れようとすれば、逆効果になったりする。アランの言葉は、とても日常的で平凡な顔をしているが、しかしそれこそがこのテーマの真髄ではないか。

    不安や恐怖、悲しみや憂鬱を真剣に思い煩うより、まずは肩をすくめてほほ笑みたまえ、といったところか。

    根つめて通読する必要のない、90もの断章になっているので、日々少しずつ読もうと思う。

  • 幸福になる方法、というより、不幸にならない思考を学びました。

    人生の敵は「自分自身」であること。
    第三者を恨み憎む時間が如何に無駄か。
    苦痛や労苦のなかに幸福があること。
    自分が行動しなければ幸福は得られない。

    など、1900年代初頭に書かれたとは思えないほど現代で読んでも新鮮です。

    前向きに生きるためのメッセージがたくさん詰まってます^^

  • 世界3大幸福論と言われるもののひとつ。

    フランス人哲学者であるアランが著したもので、詩的な感じがする本。

    元々、新聞に「プロポ」という形で連載していたものなので、哲学書というよりはエッセイの赴きが強い感じ。

    内容は良いのだが、訳の限界なのかもしれないが、なんとも読みづらくわかりにくいところがあったので☆4つ。

    短編エッセイの塊なので、要約は出来ない。


    いいなと思ったこと

    ・情念を持たない人間などいない。ただ賢人はその魂の中で、幸福な思惟が膨大な拡がりを持っているので、情念はみな全く隅に追いやられていく。

    ・悲しみなんて病気に過ぎないのだから、病気を我慢したらいいのだ。

    ・最初の舵の動かし方ひとつで一航海のすべてが決まると言ったら、船乗りはきっと笑うだろう。

    ・自分の外に弁解の口実を求める人たちは、けっして満足しない。

    ・仕事の途方もなさと人間の弱さを考えたなら、人は何もできない。まず行動し、自分のやる事だけを考えるべきだ。

    ・本当の礼儀正しさとは、何を成すべきか感覚的に知ることだ。敬意を払う事、慎み深い態度、正しい行為などはまさに自分のなすべきものだと知る

    ・富の不平等な分配には、何にもまして、たらふく食っている人間には退屈を与えるという不平等がある。そういう人は自分で不安や怒りを作り出して夢中になる。

    ・人は行動のない楽しみを選ぶよりは、自分で行動できる労苦を選ぶ。自分で選んだ、自分で欲した労苦なら良きものとできる。耐えるだけなら好きな人間などいない。

    ・人からもらう幸福は逃げていく。自分で作る幸福は決して騙されない。なぜならそれは学ぶことだからだ。「楽しみは能力のしるしである」

    ・風景の持つ本当の豊かさは、その細部のなかにある。

    ・出来事というのは、我々の期待通りには絶対行かないものだ。すべての事が変わり、すべてのものが過ぎ去る。

    ・しあわせになる秘訣は自分の気分に無関心になることだ。「この怒りだって、おさまりたければおさまるさ」

    ・幸福ははるかなところにある限り、将来にある限り、素晴らしいものに見えるが、幸福を掴んだとき、それはなんらいいものではない。

    とはいえ、実はこれはちょっとちがう。
    ほんとうの幸福はパッと見、欲しいものに見えないからだ。最初の様々な困難を乗り越えたものでなければ楽しむことはできない、

  • 人は暇があると憂鬱、悲観に走る。
    不安はただの情念で、腹痛と変わらず、大した事ない。
    気分に任せて生きると悲しみに囚われる。
    不幸は毒であり、害でしかない。
    幸福とは意志と自己克服によるもの。
    幸福になることは他人に対する義務である。
    よって、不幸に浸からず幸福を求めなければならない。

    恐らく、このようなことが書いてある。
    他にも名言が並んでいて、感心したり、思わず吹き出したり飽きない本であった。

    但し、感覚では掴めたけど、頭が追いついつかず、ふわふわしたまま読み進めて行ってしまった感が否めない。
    カミュの異邦人の時と同様の症状。まだ理解しきれていない。満足感だけがぼんやりと残る。

    通読するのは楽しかったが、ふと開けたページの章を1日1章読むという楽しみ方も面白そう。
    他の翻訳家ver.も挑戦したい。

    何度も読み返して落とし込みたくなる名著だった。

  •  幸せになるには、どうしたらいいのだろうか。人間の歴史はこれが全ての行動原理だったのではないか。
    その「幸せ」が時代ごとに更新されていったのだろう。しかし、1900年代頭に描かれたこの本は、そんな幸福について書かれたものだが今でも通用する立派な本である。
    なぜなら、この本は、そんな幸せを追い求める人間の思考体系に触れた本であるから。
    ネガティブ思考であればもちろんどんな事も面白いはずがない。どんなふうに思考を変えていけばよいのだろうか…。

  • 幸福は求めるものではなく、なると決めてなるもの


    93の幸福に関する哲学的な考察(プロポ)が並んでいて、気分が落ち込んだ時や何かアイディアないかなぁという時に手に取りたい。また読む時の感情によって見えてくるものも違うんだろう。

  • ・健康であるには、自分は病気だと思い込むのをやめて、まずは健康であるふりをすればいいのです。
    ・この世の中で生きていくためには、余計なものを切り落とすことがとても大切です。
    ・人といい関係を築くには、相手の顔が見えること、どちらか一方だけが得する関係ではないこと、相手と直接やり取りできることが大切だ。
    ・行動は正義も消し去ってしまいます。
    ・人間の敵は自分自身だけです。判断を誤ったり、不必要に何かを恐れたり、絶望したり、悲観的なことを自分に言ったりすることで、あなた自身があなたの最大の敵になります。

  • 雨がちょっとふってきたとき「また雨か、なんということだ、ちくしょう」と言ったところで何の役にも立つまい、雨を楽しもうぜ、みたいな楽しくやろうぜ例がたくさん。私には心に響くとまではいかなかったけれど、拾い読みしてポジティブな気持ちになれる。
    楽観主義オプティミスム万歳!

全175件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1868-1951。本名Emile Auguste Chartier。ノルマンディーに生れ、ミシュレのリセ時代に哲学者J・ラニョーの講義を通して、スピノザ、プラトン、デカルト、カント、ヘーゲル等を学ぶ。エコール・ノルマル卒業後、ルーアン、アンリ4世校などのリセで65歳まで教育に携る。ルーアン時代に「ラ・デペーシュ・ド・ルーアン」紙に「日曜日のプロポ」を書きはじめたのが、彼のプロポ(語録)形式の初めである。アランの人と著書については、アンドレ・モーロワの『アラン』(佐貫健訳、みすず書房、1964)に詳しい。邦訳されたものとして、『定義集』(森有正訳、1988)、『デカルト』(桑原武夫・野田又夫訳、1971)『プロポ』1・2(山崎庸一郎訳、2000、2003)『アラン 芸術について』(山崎庸一郎編訳、2004)『小さな哲学史』(橋本由美子訳、2008、いずれもみすず書房)などがある。

「2019年 『定義集 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アランの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ドストエフスキー
ヘミングウェイ
ヘルマン ヘッセ
ドストエフスキー
スタンダール
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×