重力と恩寵 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003369043

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    『たとえこの身が汚泥となりはてようと,なにひとつ穢さずにいたい──絶え間なく人間を襲う不幸=重力と,重力によって自らの魂を低めざるをえない人間.善・美・意味から引きはがされた真空状態で,恩寵のみが穢れを免れる道を示す.戦火の中でも,究極の純粋さを志向したヴェイユの深い内省の書.その生の声を伝える雑記帳(カイエ)からの新校訂版.』(「岩波書店」サイトより)


    目次
    重力と恩寵/真空と代償作用/真空を受けいれる執着を断つ/埋めつくす想像力/時間を放棄する/対象なしに欲する/自我(モワ)/脱-創造(デクレアシオン)/消えさること/必然と従順/幻想/偶像崇拝/愛/悪/不幸/暴力/十字架/天秤と梃子(てこ)/不可能なもの/矛盾/必然と善とを分かつ懸隔/偶然/愛すべきものは不在である/浄めるものとしての無神論/注意と意志/馴致/知性と恩寵/読み/ギュゲスの指輪/宇宙の意味/仲介(メタクシュ)/美/代数学/「社会の烙印を……」/巨獣/イスラエル/社会の調和/労働の神秘


    冒頭
    『 一 重力と恩寵
    1 魂の本性的な動きのいっさいは、物質的な重力の法則に類する法則に支配されている。恩寵のみが例外をなす。
    2 つねに覚悟をしておかねばならない。超自然の介入がないかぎり、あらゆる事象は重力にしたがって生起する、と。
    3 おなじ苦しみであっても、高邁な動機よりも低劣な動機によるほうが堪えやすい。――冬に、深夜一時から朝八時まで、配給の卵一個を手に入れるためになら、不動の姿勢で苦もなく立って待ちつづける人びとも、人命あるいは国を救うためには、そこまで忍耐づよくなるのに困難をおぼえただろう。』


    原書名:『La Pesanteur et la Grâce』(英語版『Gravity and Grace』)
    著者:シモーヌ・ヴェイユ (Simone Weil)
    訳者:冨原 眞弓
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎464ページ

    メモ:
    松岡正剛の千夜千冊 258夜


    ー抜粋ー

    11 必然と従順 から

    『神によって否応なく強制されるのでなければ、たとえ善にむかってにせよ、ただの一歩もふみださぬこと。行動においても、言葉においても、思考においても。だが神に強制されるならば、どこへでも、極限にまでも(十字架…)おもむく覚悟がなければならない。究極にまでおもむく覚悟でいるとは、どこへ連れさられるかも知らぬまま、神による強制を乞い求めることだ。』

    『たとえわたしの永遠の救いが物体のかたちで机のうえに載っていて、手を伸ばせば摑める状況にあっても、命令をうけることなく手を伸ばすことはするまい。』

    『キリストのために隣人を助けるのではない。キリストによって助けるのだ。わたしの自我が消え、わたしの魂と身体を仲介として、キリストが隣人を助けるのであってほしい。主人に派遣されて不幸なひとに援助をとどける奴隷でありたい。援助は主人からやって来るが、不幸なひとに手をさしのべるのは奴隷である。』

    『神のために隣人のもとに行くのではない。射手によって矢が標的へと放たれるように、神によって隣人のほうへと押しやられるのだ。隣人と神とを接触させる道具たるべし。』

    『神の意志。どうやって知るのか。自身のうちに沈黙を生みだし、あらゆる願望、あらゆる臆見を黙らせ、魂のすべてをあげて、言葉もなく、「御旨のおこなわれんことを」と愛をこめて考えるとき、これはなさねばならぬと不確かさの翳りすらなく感じられることがらは、(たとえ部分的に勘違いであっても)神の意志である。神に糧を求めて、石を与えられることはないのだから。』


  • マア1割くらいしか理解できてないかもしれないけど…

    ・卑俗な動機は簡単にエネルギーになる
    ・自分の中の獣を馴致すること(不可能なものに達するには可能なことを積み重ね遣り遂げる必要がある)
    ・常に思考をやめない。思考の居場所のないところには正義も思慮もないから。(見えないものはない、というかんがえをやめる)

    結構自分自身、己がつよいみたいなところがあって、いろんな自分の周りのことに執着したり、日々のことに意味あんの?とかおもったりしてサボったり、ということがあるけど、そういうのって傲慢〜〜〜ってことなのかもしれない。どうしても、私は世界のほんの一部(ぜんぶ)にすぎず、ダルマ/必然に隷従して生きるべきなのかもしれん…(行為の結実いかんに関わらず)


    「こんな問題を、こんなふうにして、こんなところまで徹底的に突き詰めて考える人がいるのだ」

  • あまりにストイックな生き方、考え方。
    頑張って読んだけど、わかってないな私(-。-;

    図書館から借りて読んだけど、自分で買って付箋や傍線しながら読まないとダメだな。

  • 『死者の現前は想像上に過ぎなくとも、不在はまごうかたなき実在だ。』

    絶食自殺、というセンセーショナルな死を遂げた聡明な彼女は決して絶望していた訳ではなく、苦しみの感覚から精神の実在を得ようとしていたように思う。(「私は自身の苦しみを愛さねばならない。有益だからではなく、そこに在るから。」)

    精神のロジック、理が書かれた辞書のように感じた。精神の辞書。


    精神の辞書として、傍にいつも置いていたい。

  • 原書名:LA PESANTEUR ET LA GRÂCE

    著者:シモーヌ・ヴェイユ(Weil, Simone, 1909-1943、フランス・パリ、哲学)
    訳者:冨原眞弓(1954-、フランス哲学)

  • 【由来】
    ・ヴェイユは何で読みたいと思ってたんだっけ?花村太郎?タイトルからするとガンダムとの連想をしてしまう。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • ちくま学芸文庫版を持っているので再読。
    版元が移ったのかと思ったら翻訳者が違っていたので、ちくま学芸文庫版が品切れになっているとか、そういうわけではないようだ。
    本書は邦訳されたヴェイユの著書の中では一番有名なのか、複数の版元から訳書が刊行されている。私は文庫版の2冊しか買っていないが、こうなると他の訳書がどうなっているのか気になるなぁ……。

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著者プロフィール

(Simone Weil)
1909年、パリに生まれ、43年、英・アシュフォードで没する。ユダヤ系フランス人の哲学者・神秘家。アランに学び、高等師範学校卒業後、高等学校(リセ)の哲学教師として働く一方、労働運動に深く関与しその省察を著す。二度転任。34─35年、「個人的な研究休暇」と称した一女工として工場で働く「工場生活の経験」をする。三度目の転任。36年、スペイン市民戦争に参加し炊事場で火傷を負う。40─42年、マルセイユ滞在中に夥しい草稿を著す。42年、家族とともにニューヨークに渡るものの単独でロンドンに潜航。43年、「自由フランス」のための文書『根をもつこと』を執筆中に自室で倒れ、肺結核を併発。サナトリウムに入院するも十分な栄養をとらずに死去。47年、ギュスターヴ・ティボンによって11冊のノートから編纂された『重力と恩寵』がベストセラーになる。ヴェイユの魂に心酔したアルベール・カミュの編集により、49年からガリマール社の希望叢書として次々に著作が出版される。

「2011年 『前キリスト教的直観 甦るギリシア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

シモーヌ・ヴェイユの作品

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