全体性と無限 (下) (岩波文庫 青 691-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003369128

感想・レビュー・書評

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  • 難解にして超越的。身近過ぎるがゆえに遠大。

    形は無くとも在るある問題。それを議論するという言語的な営為の面白さに興奮した。
    また著者の生い立ち(ユダヤ的な)に根差した言表が要所要所で垣間見えるのもポイントであった。

    上巻の読後感で、岩山をよじ登るような感覚があったと書いた。しかしながら、下巻では、登っていたつもりが地中深くを掘り進んでいたようにも思えた。天空の遥か上は宇宙空間という闇であり、地中もまた光の注がない闇なのである。前後不覚に陥る。
    顔という概念、自由、死、無限、超越、同と他、倫理、享受、存在、戦争、全体性、多産性、暮らし……
    人が生きていること、その奇跡的な常態についての解説書。暮らしというゲームの攻略本だとも思えてくる。形而上学的な手の届かない、抽象論かと思いきや、物凄く身近な話題だったりもする。私たちのすぐ傍にある道徳や倫理について細部まで論説するとこういう本になるのではないか。ただ、このゲームには一義的な攻略法は存在せず、そういうものを定式化したその瞬間から形骸化していくことだろう。

    時に著者の文学性を垣間見ることができる。“秘密はあらわれることなく、あらわれる”、とか、“無以下のもの”とか。このあたりはそれをそのまま味わうことにしていた。
    哲学、哲学書と言ってもたった一人の人間の思いなしなのであって、料理方法の違う文学として捉えたりもしたい。
    再読を誓おう。
    http://cheapeer.wordpress.com/2013/12/08/131208/

  • 上巻では「女性的なもの」に言及されていたが、下巻で問題化されるのは「父性」の問題である。
    レヴィナスの「女性的なもの」「父性」は批判が集中する点であるし、批判するべき概念だとも思う。
    しかし同時に、「女性的なもの」が「女性」それ自体とは明確に区別されていることもまた想起せねばならない。
    下巻では「証言」、「弁明」、「裁き」、「愛」、「エロス」などの重要な問題についての論が展開されている。
    「エロス的な裸形は、語りえないものを語る」という一文から、裸形をさらすという語りの方法、語りの「現出」のさせ方を考えさせられた。

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