全体性と無限 (下) (岩波文庫 青 691-2)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003369128

作品紹介・あらすじ

第二次大戦後のヨーロッパを代表する哲学者の主著。下巻では、他者の「顔」をめぐる著名な議論が展開され、「同」に対する「他」の優位、存在論に対する倫理学の優位が説かれる。暴力と殺戮が蔓延し、人間が日々焼きつくされる時代を生きのびた一人のユダヤ人哲学者が、主体と他者の回復に向けた、因難な希望をたぐりよせる。

感想・レビュー・書評

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  • 他なるもの、愛される者の全面的で超越的な外部性をあらかじめ前提としている。愛は他者を目指し他者の弱さを目指している。弱さが表しているのは属性が現れるのに先立って弱さとは他性それ自体を特徴づける。
    愛するとは他者のために危惧を抱くことであり、他者の弱さに手を差し伸べること。愛される女性は柔らかさがある、つまり極度の壊れやすいさと傷つきやすさ。柔らかさが現れるのは存在することと存在しないこととの境界であって、それは存在が輝きのうちで消えていく甘い日照りのように現れる。それは個体であることを喪失し、自らの存在の重みを下ろして軽やかになり、すでに消失とめまいのようなものになる。世界は彼女にとってあまりにキメが荒く、他者を傷つけてしまう。

    にもかかわらず、極度の壊れやすいさは無遠慮で率直な存在、度を超えた超物質性と境界を接している。




    女性であることは対話者、協力者であるとともに最強に知的な主人である。

  • 18/06/03。

  • 難解にして超越的。身近過ぎるがゆえに遠大。

    形は無くとも在るある問題。それを議論するという言語的な営為の面白さに興奮した。
    また著者の生い立ち(ユダヤ的な)に根差した言表が要所要所で垣間見えるのもポイントであった。

    上巻の読後感で、岩山をよじ登るような感覚があったと書いた。しかしながら、下巻では、登っていたつもりが地中深くを掘り進んでいたようにも思えた。天空の遥か上は宇宙空間という闇であり、地中もまた光の注がない闇なのである。前後不覚に陥る。
    顔という概念、自由、死、無限、超越、同と他、倫理、享受、存在、戦争、全体性、多産性、暮らし……
    人が生きていること、その奇跡的な常態についての解説書。暮らしというゲームの攻略本だとも思えてくる。形而上学的な手の届かない、抽象論かと思いきや、物凄く身近な話題だったりもする。私たちのすぐ傍にある道徳や倫理について細部まで論説するとこういう本になるのではないか。ただ、このゲームには一義的な攻略法は存在せず、そういうものを定式化したその瞬間から形骸化していくことだろう。

    時に著者の文学性を垣間見ることができる。“秘密はあらわれることなく、あらわれる”、とか、“無以下のもの”とか。このあたりはそれをそのまま味わうことにしていた。
    哲学、哲学書と言ってもたった一人の人間の思いなしなのであって、料理方法の違う文学として捉えたりもしたい。
    再読を誓おう。
    http://cheapeer.wordpress.com/2013/12/08/131208/

  • 顔という形で、語りということの基底として、他者が先行し、かつ超越している。
    性として問題化されていた関係を、実存にとってより根源的なものとして位置づけ直す「エロス」、「多産性」。有限な時間に対して無限な時間、国家に対して家族が提起される。ちょっとここらへんよく分からなかったのできちんと復習したい。

  • 上巻では「女性的なもの」に言及されていたが、下巻で問題化されるのは「父性」の問題である。
    レヴィナスの「女性的なもの」「父性」は批判が集中する点であるし、批判するべき概念だとも思う。
    しかし同時に、「女性的なもの」が「女性」それ自体とは明確に区別されていることもまた想起せねばならない。
    下巻では「証言」、「弁明」、「裁き」、「愛」、「エロス」などの重要な問題についての論が展開されている。
    「エロス的な裸形は、語りえないものを語る」という一文から、裸形をさらすという語りの方法、語りの「現出」のさせ方を考えさせられた。

  • まだ、下巻まで到達していないので何ともいえない。
    ただ個人的な好みをいえば、熊野氏の文章には「もう、ハッキリしてよ」と、ツッコミを入れたくなることがたまにある。これは翻訳なので、そういう恐れはないだろうが。

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