快楽について (岩波文庫)

制作 : 近藤 恒一 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 40
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003369715

作品紹介・あらすじ

ロレンツオ・ヴァッラ(1405/07‐1457)はエラスムスやルター等からも高く評価されたルネサンス期の人文主義者。ストア主義者、エピクロス主義者、フランチェスコ会修道士による対話篇の形で快楽の吟味と再評価がなされる。肉体の美しさを讃美し、快楽を肯定。さらに信仰・希望・愛によって至高の快楽である視福に至ると説く。

感想・レビュー・書評

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  •  自然はどれほど多くの善いものをわれわれ人間に提供してくれたことでしょう。それらを善用することを知るのは、われわれの仕事です。ある人たちは戦争準備にとりかかるでしょうか?きみは平和をすてないでください。それがより有益であるかぎりは。(p.73)

     われわれ人間は、一般にこの二つのものによって、ほかのあらゆる動物にまさっています。すなわち、自分の思うことを感じることを言いあらわすことができ、またブドウ酒を飲むことができるからです。ブドウ酒はこれを摂りいれ、思想・感情はこれを吐きだします。しかし話すことは、時宜をえたときでもつねに楽しいとはかぎりませんが、飲むほうは、ブドウ酒か口の中が傷んでいないかぎり、いつも楽しいものです。(p.104)

     あらゆる名誉欲は、虚栄心やうぬぼれや野心から生まれてきます。名誉欲とは、他者に優越することを欲すること、あるいは他者を見下すことを欲することでなくて何でしょうか。それはいわば不和や憎悪や嫉妬の温床にほかなりません。ところが人間相互の共同や平等こそ善意や平和を生み出すのです。(p.184)

     難題を新しい難題で解決しようとしても 何の役にも立たない。(p.211)
     ここから明らかですが、高潔は無益なコトバにすぎず、何の役にも立たないし、何の立証にもなりません。そんなもののためには何をしても無駄です!

     どれが大きな善で、どれがより小さな善であるかを判別するのは、むずかしいことです。ことに時や場所により、人によって、またその他の条件によって、善は変化するからです。 第一に、善とは悪の欠如で、危険や心配や苦労がないことです。第二に、善とは、愛されることで、これがあらゆる快楽の源泉です。愛されるとはどういうことか、だれにもわかっています。友愛について多くの書物がかかれていますし、反対事例によってもやはり知られます。まことに憎悪のなかで生きるのは死も同然です。ですから、ぼくらはこの規範に照らして善人か悪人かを考え、判別します。つまり、これら善悪のあいだで選択できる人か、できない人かという理由によって、善人か悪人かを判別します。(p.214)

     避けるべき何かをおそれて逃げる人は、勇敢な人と思われますか。むろん臆病者ではありません。おなじく、何か正当な快楽を享受する人は、そのゆえに節制的な人と呼ばれるでしょうか。けっして。ひとは危険を避けるから勇敢な人と呼ばれるのではなく。危険から逃げないからそう呼ばれるのです。快楽を享受するから節制的な人と呼ばれるのではなく、快楽の享受において自制するから節制的なのです。(p.321)

     人間の行為をより悪い意味にしか判断できないときは、すぐに判定を下さないように注意するのは当然のことです。でないと、ごく容易に、誤った意見のとりこになりえます。これはぼくらも嫉妬ぶかい人について日ごろ言っていることです。この悪徳は、とくにある人たちにはあまり好まれないことを!(p.343)

     高潔の徳ではなく快楽こそ、それ自体のために求められるべきです。この世の生において楽しみたい人たちによっても、あの世の生において楽しみたい人たちによっても、ひとしく!(p.371)

  • 第1巻では、ストア派のカトーネが簡単に議論を示し、エピクロス派のヴェージョは、すでにこの巻でこれを批判している。 ヴェージョは第2巻でさらに、高潔な人々の動機が実は快楽にあると論じている。 第3巻ではラウデンセがキリスト教の立場から、カトーネの議論を批判し、徳が最高の善というわけではないと論じている。他方、彼によれば、徳を現世の有用性のために求めようとした点でエピクロス派も誤っている。徳は、来世での快楽のために追求すべきである。 この議論の流れからもわかるように、ヴァッラ自身は第3巻の立場にある。

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