新約聖書外典 ナグ・ハマディ文書抄 (岩波文庫 青825-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003382516

作品紹介・あらすじ

一九四五年一二月、エジプト南部ナイル河畔の町で発見された古代キリスト教文書群「ナグ・ハマディ文書」。グノーシスと呼ばれた人々の人間観、宇宙観、宗教思想を伝える諸文書は異端の書として排除され、長く失われていた。死海文書と並び二〇世紀最大の発見と称され、千数百年の時を超えて復元された聖文書を精選する。

感想・レビュー・書評

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  • 「ユダの福音書」の持つ意味 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2011.6.27)
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4494/

    22. グノーシス主義とは何ですか? - オプス・デイ
    https://opusdei.org/ja-jp/article/iesu-shitsumon-22/

    新約聖書外典 ナグ・ハマディ文書抄 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b597615.html

  • 「ナグ・ハマディ文書」とは、1945年にエジプトのナグ・ハマディ村で発見された初期キリスト教文書(写本)群のこと。そのうちの多くはグノーシス主義が色濃く、おそらく異端文書として埋められていたものが発掘されたらしい。本書はその文書の中から「イエスの知恵」「ペトロの黙示録」「ヨハネのアポクリュフォン」「トマスによる福音書」「エジプト人の福音書」「ユダの福音書」の6冊を収録。

    いわゆる新約聖書の中でも正典と認められていない外典、とくにグノーシス派の影響が強い文書群なので、とにかく聞きなれない用語が続出。ソフィアだのロゴスだのカオスだのはわかるけど、アイオーンとかプレーローマとかヤルダバオートとかになると、なんのこっちゃ。しかも擬人化されたりするので、地名なのか人格名なのか概念なのかさえ大混乱。とりあえずヤルダバオートのことは「ヤバオ」と勝手に省略(ヤハ男みたいなもん)。

    古さに加えて、当時ギリシャ語からコプト語(エジプト語)に翻訳されたものなので、今でいうGoogle翻訳的なトンチキ表現(失敬)も頻出、そもそも原文の意味がとれない部分も多々あり、全体的にかなり難解。

    とはいえ巻末に用語集もついているし、読み進めていくうちになんとなくグノーシス的な世界観や思想はうっすら理解できるようにはなってくる。個人的にはまっとうなキリスト教の教えよりも、グノーシスのほうが面白い。

  • 1945年にエジプトにて発見されたパピルス写本群「ナグ・ハマディ文書」の抄訳。古代地中海世界の神秘思想である(キリスト教)グノーシス主義にまつわる文章群五篇(および同種の写本群「チャコス文書」より一篇)を、詳細な注釈・解説とともに収録する。
    本書は、同出版社より単行本として刊行されていたナグ・ハマディ文書の邦訳(『ナグ・ハマディ文書Ⅰ―Ⅳ』『ナグ・ハマディ文書 チャコス文書 グノーシスの変容』)の文庫版である。このナグ・ハマディ文書とは1945年12月エジプトのナグ・ハマディ村近郊の墓地より発見されたパピルス写本群であり、キリスト教発生と同時代に地中海世界に広まった神秘思想・グノーシス主義にまつわる文献を多数収録する貴重な資料である。文庫化に際しては上記邦訳書から6篇を選抜しており、また異版を並列で掲載していたものについては最も保存状態の良い版を基準として収録している(その他、訳注や巻末の用語解説では縮小や一部内容の削除がある)。
    本書で取り扱う文章は、ナグ・ハマディ文書(およびチャコス文書)に収められたグノーシス文書のうち「キリスト教グノーシス主義(キリスト教の影響を受けたグノーシス思想)の文書」「新約聖書外典」の代表的な六篇である。即ち、先行するグノーシス主義文書(『エウグノストス』)をキリスト教的に語りなおした『イエスの知恵』、敵対者への批判とイエスの仮現論を強く打ち出す『ペトロの黙示録』、グノーシス主義の神話を体系的に語った『ヨハネのアポクリュフォン』・『エジプト人の福音書』、そして発見当時キリスト教史を揺るがすものとしてセンセーションを巻き起こした『トマスによる福音書』・『ユダの福音書』である。いずれもグノーシス主義を奉ずる者自らがその思想を説いた著作であり、彼らの世界観や人間観を表している。言葉では言い表せぬ至高存在からの宇宙展開、無知蒙昧たる造物神に支配された悪の物質世界、その虜囚となった人間の霊性の解放――。
    それまで先に挙げた単行本ぐらいしかなかったグノーシス主義の原典を文庫で読むことができることの意義はかなり大きい。先にグノーシス主義にまつわる概説書(例としては大貫隆著の『グノーシスの神話』など)を読んでおくと内容がすんなり入ってくるので、それと併せて読んでみるのがおすすめである。

  • ・消滅するものから生じている限り、それらのものはことごとく消滅するであろう。それらは消滅するものから生じているからである。だが、消滅しないものから生じているものは、消滅しないのが常であり、消滅しないものとなるのが常である。

    ・すべてを知っていて、自己に欠けている者は、全てのところに欠けている

    ・私のもとに来なさい。私の軛は負いやすく、私の支配は優しいからである。そして、あなたがたはあなたがた自身に安息を見いだすであろう

    ・それは、いかなる天使の目も見たことがなく、いかなる心の思惟も理解したことがなく、いかなる名によっても呼ばれたことがない

    ・見よ、あなたにすべてが語られた。目を上げなさい。そして、雲とその中にある光を、またそれを取り巻く光を見るように。そして、導く星があなたの星なのだ

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著者プロフィール

あらい・ささぐ氏は、1930年生まれ。東京大学教養学部、同大学院西洋古典学専攻を経てドイツ・エアランゲン大学で神学博士を取得。原始キリスト教史・グノーシス研究に開拓的な業績がある。現在、東京大学および恵泉女学園大学名誉教授、日本学士院会員。著書『荒井献著作集』(全10巻+別巻、岩波書店)、『使徒行伝』上中下(新教出版社、現代新約注解全書)ほか多数。

「2018年 『キリスト教の再定義のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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